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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
100話 変わり果てた町の姿
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「……成る程。やはり魔族は予想以上に」
浸透してきている。
「はっ……基本は情報をかき乱し、人間関係を歪め……今月も、保護できただけで数十の子供を、孤児にさせてしまいました……私が不甲斐ないばかりに」
それはもう、頭を抱えたくなるほどに人間社会へ浸透し――物量で押しつぶせるくせにそれをせず、さらに効率の良さを求めてきている。
改めて脅威を感じるし、恐怖も感じる。
――そうだ。
この世界は、主人公が目を覚ますまではじり貧――全力であがいても押され続けるんだ。
だけど、この人みたいに奮闘してくれている人も居るんだ。
「いえ、モルテール様は全力を尽くしてくださっています。ただ魔王の手先が――かくも非道なだけです」
屋敷内――さすがにもうあの地下には行っていないし2度と行かないし何があっても何を言われても絶対に行かない――の、応接室。
「その子たちの受け入れ先は?」
「全て、整えてございます」
「結構。親を喪った悲しみを覆い尽くすほどの幸福を与えるよう、受け入れ先へ……」
屋敷の中、その中でいちばん豪華な部屋――まぁ子爵の実家でもなく町中の物件だし、地下はあれだけど、それでも調度品ひとつひとつからして、どんなに間違ってもエミリーちゃんだけは入れちゃいけない場所。
……そこで謎の豪華なイス(どう見ても玉座)に座らされ、僕の足元にかしずいている子爵。
うん……どう見ても王国に反乱を企てている悪役だよね。
だってジュリオン様だもん、運命はこういう細かい演出まで凝っているんだ。
「人は国の柱であり、国そのもの。……私の力及ばずに出てしまった被害も、せめて残った人々を立ち直らせることで――」
「さすがセレスティーヌ様でございます!」
「………………………………」
……まぁ、うん。
仕事は、できるから。
正直近寄りたくないけども。
この人、僕が自害しろとか言ったら本当にしそうで怖いんだ……それに、
「フーッ……!」
「処しますか?」
――この2人もこのざまだ、口が裂けても恨み節すら言えない。
「うざったいなぁ」とかぽろっとでも口にしたら、翌朝に子供がしちゃいけないタイプの清々しい笑顔で「殺ってきました!」とか言いそうだし……。
リラちゃんは斥候スキルを育てすぎて暗殺者向き。
テオくんはもう全部書類仕事押しつけたいくらい頭良いから参謀向き。
ふたりが共謀したらどんな暗殺でもさくっとやってきそうで、本当に怖いんだ。
……この2人の、あれからいくら幻滅させようとしても不可能だった崇拝を制御しつつ、僕は死の運命を回避する7年間を過ごさなきゃいけないんだ。
あ、違うかぁ……ルート次第では3年生、つまりはあと10年後まで気を抜けないんだぁ……そっかぁ……。
「ぶっひぃぃぃぃぃ!! お美しさに感動しておりますぅぅ!」
つーっ。
涙がひとつ、頬をつたう。
「ユリア様……おいたわしい……」
「姉御ぉ……貴族って本当に大変なんだなぁ……」
――うん。
貴族って、立場があるって、部下を持つって――大変なんだなぁ……。
こんなことをしていても、せいぜいが被害を軽減させるだけ――つまりは人の命を助けられてないってことなんだもんなぁ……ついでで僕の命の尊厳も……。
◇
「! ユリア様! ユリア様だぞー!」
「「わぁぁぁぁ!!」」
わらわらわらわらわらわらわらわら。
四方八方から――豚さんのお世話をした後に大通りに出た僕の周りから、僕と同世代の子供を中心に駆けよってくる。
「……みなさん、元気にしていましたか?」
僕の生存のためとはいえ、僕が干渉した結果なんだ。
「ユリア」として、適度に相手をしておかないとね。
「はい!」
「新しいお母さんに……ぐす、こんなにかわいい服を……!」
「僕は優しい神父さんたちにお勉強教えてもらってます!」
「私、この前冒険者になったんです! 魔力が、わずかにあるって……!」
――僕がうっかり半壊させちゃったって、後ではっきり分かったスラム街。
そこはもう、奇跡的に死者は居なかったものの、半数の家は雨風をしのげなくなっていた。
だから、せっかくだしってことで――なぜか父さんの代理でいろいろ権限を持ってるベルトランとか、ギルドマスターのジャンさんとかがすっごく協力的だったもんだから、父さんが帰ってくる前にって大鉈を振ったのが、あの直後。
まずは孤児、浮浪者たちの半数を、一時的に屋敷の敷地内にあった建物へ収容――病気の治療と食事療法を、リラちゃんたちと一緒に施して健康になるまで面倒を見て。
そのあいだに町を調査してもらい――治癒魔法は存在しても中世だからやっぱり死亡率は高いこの世界だ、探せば子供を失ったり子供ができない夫婦はかなり存在した。
あとは希望する子供たちと夫婦たちの公営マッチングサービスを展開し、即戦力になれる十数歳から、育てがいのある幼い子供までを養子にさせる。
義理とはいえ親子になった彼らは新しい家族ができて嬉しい、僕も町のスラム街を合法的かつ温情的に解体できるし将来の革命因子が事前排除できて嬉しいとWin-Winの大戦果。
「ユリア様が来てくれなかったら、俺たち、もうとっくに……」
「そうでなくても、あの冷たくて暗くて寂しい路地裏に……」
「ユリア様……!」
「生きている限り、あなたに感謝しながら……!」
この子たちは、かつてはそこで痩せ細っていて。
その半分も、冬を越せなかっただろうって聞く。
そう思うと――うん。
豚さんに舐められる甲斐は――、いや、僕がこの世界に生まれた甲斐はあったのかなって思う。
まぁやることは初手で間違えに間違えたけども、僕以外の幸福を考えるとさ。
◆◆◆
ユリアちゃんもといジュリオンくんも100話を迎えました。
今のところの予定では、あと300話程度で終わる見込みです。
これからますます美しくなってしまって苦悩する彼を愛でてあげてください。
最後はハッピーエンドです――彼にとってのそれかどうかはともかく。
浸透してきている。
「はっ……基本は情報をかき乱し、人間関係を歪め……今月も、保護できただけで数十の子供を、孤児にさせてしまいました……私が不甲斐ないばかりに」
それはもう、頭を抱えたくなるほどに人間社会へ浸透し――物量で押しつぶせるくせにそれをせず、さらに効率の良さを求めてきている。
改めて脅威を感じるし、恐怖も感じる。
――そうだ。
この世界は、主人公が目を覚ますまではじり貧――全力であがいても押され続けるんだ。
だけど、この人みたいに奮闘してくれている人も居るんだ。
「いえ、モルテール様は全力を尽くしてくださっています。ただ魔王の手先が――かくも非道なだけです」
屋敷内――さすがにもうあの地下には行っていないし2度と行かないし何があっても何を言われても絶対に行かない――の、応接室。
「その子たちの受け入れ先は?」
「全て、整えてございます」
「結構。親を喪った悲しみを覆い尽くすほどの幸福を与えるよう、受け入れ先へ……」
屋敷の中、その中でいちばん豪華な部屋――まぁ子爵の実家でもなく町中の物件だし、地下はあれだけど、それでも調度品ひとつひとつからして、どんなに間違ってもエミリーちゃんだけは入れちゃいけない場所。
……そこで謎の豪華なイス(どう見ても玉座)に座らされ、僕の足元にかしずいている子爵。
うん……どう見ても王国に反乱を企てている悪役だよね。
だってジュリオン様だもん、運命はこういう細かい演出まで凝っているんだ。
「人は国の柱であり、国そのもの。……私の力及ばずに出てしまった被害も、せめて残った人々を立ち直らせることで――」
「さすがセレスティーヌ様でございます!」
「………………………………」
……まぁ、うん。
仕事は、できるから。
正直近寄りたくないけども。
この人、僕が自害しろとか言ったら本当にしそうで怖いんだ……それに、
「フーッ……!」
「処しますか?」
――この2人もこのざまだ、口が裂けても恨み節すら言えない。
「うざったいなぁ」とかぽろっとでも口にしたら、翌朝に子供がしちゃいけないタイプの清々しい笑顔で「殺ってきました!」とか言いそうだし……。
リラちゃんは斥候スキルを育てすぎて暗殺者向き。
テオくんはもう全部書類仕事押しつけたいくらい頭良いから参謀向き。
ふたりが共謀したらどんな暗殺でもさくっとやってきそうで、本当に怖いんだ。
……この2人の、あれからいくら幻滅させようとしても不可能だった崇拝を制御しつつ、僕は死の運命を回避する7年間を過ごさなきゃいけないんだ。
あ、違うかぁ……ルート次第では3年生、つまりはあと10年後まで気を抜けないんだぁ……そっかぁ……。
「ぶっひぃぃぃぃぃ!! お美しさに感動しておりますぅぅ!」
つーっ。
涙がひとつ、頬をつたう。
「ユリア様……おいたわしい……」
「姉御ぉ……貴族って本当に大変なんだなぁ……」
――うん。
貴族って、立場があるって、部下を持つって――大変なんだなぁ……。
こんなことをしていても、せいぜいが被害を軽減させるだけ――つまりは人の命を助けられてないってことなんだもんなぁ……ついでで僕の命の尊厳も……。
◇
「! ユリア様! ユリア様だぞー!」
「「わぁぁぁぁ!!」」
わらわらわらわらわらわらわらわら。
四方八方から――豚さんのお世話をした後に大通りに出た僕の周りから、僕と同世代の子供を中心に駆けよってくる。
「……みなさん、元気にしていましたか?」
僕の生存のためとはいえ、僕が干渉した結果なんだ。
「ユリア」として、適度に相手をしておかないとね。
「はい!」
「新しいお母さんに……ぐす、こんなにかわいい服を……!」
「僕は優しい神父さんたちにお勉強教えてもらってます!」
「私、この前冒険者になったんです! 魔力が、わずかにあるって……!」
――僕がうっかり半壊させちゃったって、後ではっきり分かったスラム街。
そこはもう、奇跡的に死者は居なかったものの、半数の家は雨風をしのげなくなっていた。
だから、せっかくだしってことで――なぜか父さんの代理でいろいろ権限を持ってるベルトランとか、ギルドマスターのジャンさんとかがすっごく協力的だったもんだから、父さんが帰ってくる前にって大鉈を振ったのが、あの直後。
まずは孤児、浮浪者たちの半数を、一時的に屋敷の敷地内にあった建物へ収容――病気の治療と食事療法を、リラちゃんたちと一緒に施して健康になるまで面倒を見て。
そのあいだに町を調査してもらい――治癒魔法は存在しても中世だからやっぱり死亡率は高いこの世界だ、探せば子供を失ったり子供ができない夫婦はかなり存在した。
あとは希望する子供たちと夫婦たちの公営マッチングサービスを展開し、即戦力になれる十数歳から、育てがいのある幼い子供までを養子にさせる。
義理とはいえ親子になった彼らは新しい家族ができて嬉しい、僕も町のスラム街を合法的かつ温情的に解体できるし将来の革命因子が事前排除できて嬉しいとWin-Winの大戦果。
「ユリア様が来てくれなかったら、俺たち、もうとっくに……」
「そうでなくても、あの冷たくて暗くて寂しい路地裏に……」
「ユリア様……!」
「生きている限り、あなたに感謝しながら……!」
この子たちは、かつてはそこで痩せ細っていて。
その半分も、冬を越せなかっただろうって聞く。
そう思うと――うん。
豚さんに舐められる甲斐は――、いや、僕がこの世界に生まれた甲斐はあったのかなって思う。
まぁやることは初手で間違えに間違えたけども、僕以外の幸福を考えるとさ。
◆◆◆
ユリアちゃんもといジュリオンくんも100話を迎えました。
今のところの予定では、あと300話程度で終わる見込みです。
これからますます美しくなってしまって苦悩する彼を愛でてあげてください。
最後はハッピーエンドです――彼にとってのそれかどうかはともかく。
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