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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
101話 まだ変わり果てていないジャンさん
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「私たちが孤児じゃなくなったのもあるけど、町の人がみんな、ごはんがあって優しくなってて……」
「けいざいたいさく?っていうの、ユリア様が考えたって聞きます! ……まだ僕より1歳上なだけなのに……」
「ユリア様はおきぞくさまよ! とんでもなく頭が良いの!」
「あはは……家の者が私のしたことにしてくれているだけですよ」
子供たちのきらきらきらきらとした目がまぶしい。
だから後ろめたいところのある大人な僕は、そっと目を逸らす。
「……やっぱり、他の大人とかえらい人とも違う……!」
「変にいばったりしないんだ……だって、灰被りの……」
町の孤児たち――大人も含め、希望する人は全員「孤児」扱いにして。
すでに大人になっちゃってる人とかもそれなりに養子になったりしたけども、どうしても親になりたい人の数よりは多かった。
だから彼らへは、教会へうちから当面の養育費を渡すことで擬似的な家族になってもらった。
人は衣食住がある程度満たされ、そして家族と友人が居れば、ヤケにはなりにくい。
人が無謀になるのは、失うものがないからだから。
だから彼らへも市民権をあげて「家族」として登録することで当時の治安向上と生産人口の増加、将来の安定と量の収益増加へ寄与してもらおうと画策したんだ。
そして――野良犬や野良猫、害のない動物などを捕まえて周り、家族ごとに配って回る。
そうだ、人は守るものがあれば穏やかになる。
ましてや――お犬様やお猫様が待っているとなれば、革命とか起こしてミスったらその子たちが路頭に迷う選択肢は取らない。
……打算でしかない政策。
もちろんこの町の――領民の人たちの幸せも考えてはいるけども、あくまで僕の我が身かわいさあまりのこと。
だから、子供たちの純粋な視線が心を突き刺してくる――あ、デイジーみたいなのは蹴り飛ばしてもへっちゃらだけどさ。
それに――うん。
スラムに居たときは目に光のなかった子供たちが、今やきらきらと輝かせ――過ぎているくらい元気なので、ちょうど良いんだ。
あとは時間経過で僕のことも忘れてくれるはずだから。
そうそう、人は生きるのに忙しければ恩義とか忘れるから。
ほら、幼稚園とか小学校のときのことって、大人になるころにはほとんど忘れてるもんだから、だから僕のことも「そういやそんなことあったし、革命だけは勘弁してやるか」程度で済んでくれるはず。
……忘れてくれるよね?
ね?
◇
「ユリア様考案の大胆な政策――採算の合わない町の維持管理を領主様直々にギルドへの依頼という形でいただき、排水口掃除から道路や街道の補修事業、治安維持業務などをし始め、早3年。おかげで農村から来たばかりの者でもその日の食事を稼げるようになり、町が活気づいております。また、ユリア様のお考えになった経済の循環というものにより貨幣の動きが活発になり、皆、衣食住を格段に満たすようになっております。……感謝の言葉もございません」
「私は、あくまで提案しただけです。それを実行してくださっていますのは、ジャン様……あなたたちギルドの方々です」
「……あくまで謙遜なさる。やはりユリア様は……」
3年が経って、ちょっとゲームの画面で見慣れた雰囲気が出てきたギルドマスターさん。
僕は、彼が好きだ。
だって、
「ユリアざま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ー……」
僕にへばりついてこようとする――お胸で僕の顔を挟んでまで抱きついてくるこの人を、いつも無表情でひっぺがしてくれる貴重な人なんだから。
ほんと、僕相手でも顔色一つ変えない仏頂面が逆に好感度上がるよね。
「デイジー、ユリア様はお忙しい。ただでさえ不敬なのに許されるからと抱きついたりしてご迷惑を掛けないように言っているだろう。戻りなさい。戻らなければユリア様の担当から外しますよ」
「や゛だ゛ぁぁぁぁぁー…… ユリア様吸いするのぉー……」
「吸い」って何だろうね。
「貴女……何度も言っていますが、それはユリア様だからこそ許してくださるのであって、普通、貴族の方にそのような無礼をしたら一族郎党縛り首でもおかしくないと、まだ理解していないのですか……!?」
「ユリア様も領主様もそんなことし゛な゛い゛ですぅ……」
とんでもなく常識人で僕がいちばん安心できるギルド長。
この人だけが最後の希望なんだ。
ちょっと元気すぎる彼女を、ギルド長としての権限で抑えてくれるから。
というかはっちゃけすぎてるから、彼以外は押さえられないとも言う。
「それに、ユリア様のご提案は……初期段階ではどれも突拍子過ぎ、そのまま実行に移すといつも大変なことになると……デイジーも知っているでしょう。……ユリア様の信用があるからこそ問題が起きても皆、問題にせず、ユリア様のためにとおのおので良いように解決しているだけで」
うん……主にギルド長さんとかがね。
「ユリアざま゛は完全無欠なんですぅー……」
「ユリア様も高貴なお方とはいえ、人です。間違いと思ったら指摘して差し上げるのが――そうでした、まだユリア様は学園にも通われていない10歳でしたね……いえ、大人として……も、知力で劣る自覚はありますが……」
しょんぼりとしているデイジーさんとジャンさん。
しょんぼりとなんかしないでくださいジャンさん、あなたは僕の希望なんです。
しかしデイジーさん、ああ、残念美人デイジーさん。
かわいいに目がなさすぎてご覧の通りで――だから、この世界基準での婚期を逃しかけている、実に可哀想な人だ。
前世基準だとまだまだ全然適齢期じゃないのに、周囲からはもう残念な目で見られているし本人も諦めつつあるらしい、この人が。
サブヒロインでもなかったはずなのに、物語に登場しないからこそ美人さんだったはずなのに、行き遅れになっちゃったデイジーさんが。
ちなみにデイジーは愛称という名の通称で、本名はマルグリッドとかぼそっと教えられちゃったこの人が、僕のせいで行き遅れに?
………………………………。
やっぱ早いうちにデイジーさんがメロメロになりそうな未婚のイケメンさんを捜させておこう。
……元孤児とかもそうだけど、僕、この3年間ひたすらに仲人ってのをしてばっかりだなぁ……これが、上に立つっていう苦労なのかなぁ……。
「けいざいたいさく?っていうの、ユリア様が考えたって聞きます! ……まだ僕より1歳上なだけなのに……」
「ユリア様はおきぞくさまよ! とんでもなく頭が良いの!」
「あはは……家の者が私のしたことにしてくれているだけですよ」
子供たちのきらきらきらきらとした目がまぶしい。
だから後ろめたいところのある大人な僕は、そっと目を逸らす。
「……やっぱり、他の大人とかえらい人とも違う……!」
「変にいばったりしないんだ……だって、灰被りの……」
町の孤児たち――大人も含め、希望する人は全員「孤児」扱いにして。
すでに大人になっちゃってる人とかもそれなりに養子になったりしたけども、どうしても親になりたい人の数よりは多かった。
だから彼らへは、教会へうちから当面の養育費を渡すことで擬似的な家族になってもらった。
人は衣食住がある程度満たされ、そして家族と友人が居れば、ヤケにはなりにくい。
人が無謀になるのは、失うものがないからだから。
だから彼らへも市民権をあげて「家族」として登録することで当時の治安向上と生産人口の増加、将来の安定と量の収益増加へ寄与してもらおうと画策したんだ。
そして――野良犬や野良猫、害のない動物などを捕まえて周り、家族ごとに配って回る。
そうだ、人は守るものがあれば穏やかになる。
ましてや――お犬様やお猫様が待っているとなれば、革命とか起こしてミスったらその子たちが路頭に迷う選択肢は取らない。
……打算でしかない政策。
もちろんこの町の――領民の人たちの幸せも考えてはいるけども、あくまで僕の我が身かわいさあまりのこと。
だから、子供たちの純粋な視線が心を突き刺してくる――あ、デイジーみたいなのは蹴り飛ばしてもへっちゃらだけどさ。
それに――うん。
スラムに居たときは目に光のなかった子供たちが、今やきらきらと輝かせ――過ぎているくらい元気なので、ちょうど良いんだ。
あとは時間経過で僕のことも忘れてくれるはずだから。
そうそう、人は生きるのに忙しければ恩義とか忘れるから。
ほら、幼稚園とか小学校のときのことって、大人になるころにはほとんど忘れてるもんだから、だから僕のことも「そういやそんなことあったし、革命だけは勘弁してやるか」程度で済んでくれるはず。
……忘れてくれるよね?
ね?
◇
「ユリア様考案の大胆な政策――採算の合わない町の維持管理を領主様直々にギルドへの依頼という形でいただき、排水口掃除から道路や街道の補修事業、治安維持業務などをし始め、早3年。おかげで農村から来たばかりの者でもその日の食事を稼げるようになり、町が活気づいております。また、ユリア様のお考えになった経済の循環というものにより貨幣の動きが活発になり、皆、衣食住を格段に満たすようになっております。……感謝の言葉もございません」
「私は、あくまで提案しただけです。それを実行してくださっていますのは、ジャン様……あなたたちギルドの方々です」
「……あくまで謙遜なさる。やはりユリア様は……」
3年が経って、ちょっとゲームの画面で見慣れた雰囲気が出てきたギルドマスターさん。
僕は、彼が好きだ。
だって、
「ユリアざま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ー……」
僕にへばりついてこようとする――お胸で僕の顔を挟んでまで抱きついてくるこの人を、いつも無表情でひっぺがしてくれる貴重な人なんだから。
ほんと、僕相手でも顔色一つ変えない仏頂面が逆に好感度上がるよね。
「デイジー、ユリア様はお忙しい。ただでさえ不敬なのに許されるからと抱きついたりしてご迷惑を掛けないように言っているだろう。戻りなさい。戻らなければユリア様の担当から外しますよ」
「や゛だ゛ぁぁぁぁぁー…… ユリア様吸いするのぉー……」
「吸い」って何だろうね。
「貴女……何度も言っていますが、それはユリア様だからこそ許してくださるのであって、普通、貴族の方にそのような無礼をしたら一族郎党縛り首でもおかしくないと、まだ理解していないのですか……!?」
「ユリア様も領主様もそんなことし゛な゛い゛ですぅ……」
とんでもなく常識人で僕がいちばん安心できるギルド長。
この人だけが最後の希望なんだ。
ちょっと元気すぎる彼女を、ギルド長としての権限で抑えてくれるから。
というかはっちゃけすぎてるから、彼以外は押さえられないとも言う。
「それに、ユリア様のご提案は……初期段階ではどれも突拍子過ぎ、そのまま実行に移すといつも大変なことになると……デイジーも知っているでしょう。……ユリア様の信用があるからこそ問題が起きても皆、問題にせず、ユリア様のためにとおのおので良いように解決しているだけで」
うん……主にギルド長さんとかがね。
「ユリアざま゛は完全無欠なんですぅー……」
「ユリア様も高貴なお方とはいえ、人です。間違いと思ったら指摘して差し上げるのが――そうでした、まだユリア様は学園にも通われていない10歳でしたね……いえ、大人として……も、知力で劣る自覚はありますが……」
しょんぼりとしているデイジーさんとジャンさん。
しょんぼりとなんかしないでくださいジャンさん、あなたは僕の希望なんです。
しかしデイジーさん、ああ、残念美人デイジーさん。
かわいいに目がなさすぎてご覧の通りで――だから、この世界基準での婚期を逃しかけている、実に可哀想な人だ。
前世基準だとまだまだ全然適齢期じゃないのに、周囲からはもう残念な目で見られているし本人も諦めつつあるらしい、この人が。
サブヒロインでもなかったはずなのに、物語に登場しないからこそ美人さんだったはずなのに、行き遅れになっちゃったデイジーさんが。
ちなみにデイジーは愛称という名の通称で、本名はマルグリッドとかぼそっと教えられちゃったこの人が、僕のせいで行き遅れに?
………………………………。
やっぱ早いうちにデイジーさんがメロメロになりそうな未婚のイケメンさんを捜させておこう。
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