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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
106話 僕の婚約者
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「……とにかく、引き続きの調査と工作をお願いします。僕の女装はどうでも良いですが」
「どうでも良くない!」
「良くないよママ上!」
「よくありませんぞ!」
「どうでも良いですが、お願いしますね」
ばっさりと切り捨てながら、せめてにとおいしい料理を口に運ぶ。
ああ。
「機密情報が含まれている報告会」とか言い訳して、ここにエミリーちゃんとかアメリアちゃんとかリラちゃんとかを入れず、あくまでも領主に時期領主、執事だけしか居ない食事で良かった。
……あの子たちとかが居ると、もう収拾つかないでしょこれ……元凶なのは認めるけども、そんな元凶のクセしてあまりにも僕の影響力がありすぎてなさすぎるんだもん……。
せめて母さんが、もう少しだけまともな人だったなら。
「うむ。ユリアたんも『ジュリオン代行』として領内の諸々を頼んだぞ」
「たん」はやめてほしいなぁって思います父さん。
「内政については俺たちがなんとかできるが、ユリアたんのママ譲りの美貌とぞくぞくするような迫力となぜか泣きたくなる慈愛に……うぅ……」
泣かないでほしいなぁと思います兄さん。
「……全力は尽くします。ああ、そういえば」
この3年でもう慣れっこなもんだから最低限暴走しないように牽制をしていた僕は、ふと思い出す。
「確か、もうじき僕の婚約者との――――――」
――がたっ。
「ユリアたんは誰にも嫁になどやらん!」
「ママは一生俺のママだ! 俺だけの――いや、ジュリオンと俺の、ママなんだ……!」
「いえ、そういう訳にも行かないでしょう……たとえ幼いころ、僕が婚約者の彼女へ――申し訳ないことに当時は幼すぎて何を言ってしまったのか覚えていませんが、とにかく無礼を働いて嫌われているんです。ですが、まだ婚約は解消されてはいない」
婚約者。
メインヒロインの1人。
「悪の権化であるジュリオン様から主人公が寝取る」という爽快感のために設定されていただろう彼女については、なぜかジュリオン様の人気が大沸騰した結果――多くのお姉様方から総スカンだったりする。
まぁプライドが高くってつんつんしたお嬢様キャラで、ルートに入ってもなかなかデレないからね……今どきツンデレは流行りにくいからしょうがない。
しかもそのお相手がジュリオン様で、主人公くんにデレる前も後もジュリオン様の悪口ばっか言うもんだから、もうね。
けども、彼女と僕は、家同士の許嫁――同い年、かつ貴族同士のめんどくさすぎるいろいろを考慮して生まれた時点で決まっていた関係。
ゲームっていう事情を考慮しなければ、ここは普通に中世の世界。
ゲームっていう事情を考慮すれば、ここは侵略を受けている世界。
ゆえに、貴族同士の血のつながりと濃さ、各領主たちの力のバランスは何においても重要視されるもの。
そこに人格は関係なく、ただ王の命令に従うかどうか、そしてちゃんと子供を――魔力の素養っていう人間MAP兵器を安定して量産できるかっていうことにだけしか関心が置かれない。
つまりはジュリオン様も、主人公くんさえおらず魔族のささやきもなく、ただ普通に卒業するだけだったとしたら――たくさんの女子を泣かせはするだろうけども、普通に辺境伯の次男として、この社会が必要とする存在になる。
ジュリオン様は賢くてバカだけどそういうのには敏感なはずだから、きっとそつなくこなすだろう。
その過程で気に入らない相手はいじめ倒すし気に入った相手は好き放題するしでも、この世界の貴族としての責務を果たすならば「やんちゃ」で済んでしまう。
それが身分社会だ。
――つまり、婚約者の彼女は泣かされ続けながらもジュリオン様の妻として生き続けなければならない。
彼女が幸せかどうかは関係なく、彼女と僕が貴族の責務を果たすかどうかだから。
それを崩すには、よっぽどのこと――すなわち、英雄になった主人公くんが勇者として爵位持ちになって家の格とやらができ、さらには政治の都合が合わさらないと叶わない。
ついでにジュリオン様が敵を引き込むレベルでやらかして追放とか処刑とかにならないと、叶わない。
ま、それをセレスティーヌ母さんが死んだあたりっていう、本当に最悪のタイミング――高慢ちきのわがまま坊やでも、これでもたぶん愛想くらいはできただろうジュリオン様(幼)が、そんなことができない精神状態なタイミングで――彼女とジュリオン様は初の顔合わせがセッティングされ。
そして前世の僕が起きる前の今世のジュリオン様が癇癪起こして罵倒したか何かで、以来、今日まで1度も会うどころか手紙を交換することすらしていないんだけども――それでも数年後に主人公くんに奪われるまでは、貴族社会の都合上で彼女は僕の婚約者だ。
それを彼女から拒否することは叶わないし、ジュリオン様の方からも同じ。
「公の場で仲良く見せ、子を作る以外は好きにすれば良いんだから仮面をかぶれ」って諭されておしまい。
だから、僕は彼女と破局したい。
どうにかして婚約解消とか婚約破棄にこぎつけたい。
けども主人公くんのルート次第では彼女の協力を仰げる方が都合が良いことも多いだろう、だからせめて関係性を「好きでも嫌いでもない婚約者」程度には改善した上で穏便に別の人生に進みたい。
どうせ彼女がジュリオン様たる僕のことを好きになるはずがないんだし、なんとかなだめすかして媚びへつらって持ち上げて許してもらうしかない。
そう思い続け、何度も相手方に手紙を送ったりし続け――ようやくに、会えそうな段取りになっているんだ。
「やだやだ、妻をNTRれるとかやだ!」
「やだやだ、ママをNTRれるとかやだ!」
「………………………………」
……当の本人が覚悟決めてるのに何ほざいてるんだろうね、この身内どもは。
「どうでも良くない!」
「良くないよママ上!」
「よくありませんぞ!」
「どうでも良いですが、お願いしますね」
ばっさりと切り捨てながら、せめてにとおいしい料理を口に運ぶ。
ああ。
「機密情報が含まれている報告会」とか言い訳して、ここにエミリーちゃんとかアメリアちゃんとかリラちゃんとかを入れず、あくまでも領主に時期領主、執事だけしか居ない食事で良かった。
……あの子たちとかが居ると、もう収拾つかないでしょこれ……元凶なのは認めるけども、そんな元凶のクセしてあまりにも僕の影響力がありすぎてなさすぎるんだもん……。
せめて母さんが、もう少しだけまともな人だったなら。
「うむ。ユリアたんも『ジュリオン代行』として領内の諸々を頼んだぞ」
「たん」はやめてほしいなぁって思います父さん。
「内政については俺たちがなんとかできるが、ユリアたんのママ譲りの美貌とぞくぞくするような迫力となぜか泣きたくなる慈愛に……うぅ……」
泣かないでほしいなぁと思います兄さん。
「……全力は尽くします。ああ、そういえば」
この3年でもう慣れっこなもんだから最低限暴走しないように牽制をしていた僕は、ふと思い出す。
「確か、もうじき僕の婚約者との――――――」
――がたっ。
「ユリアたんは誰にも嫁になどやらん!」
「ママは一生俺のママだ! 俺だけの――いや、ジュリオンと俺の、ママなんだ……!」
「いえ、そういう訳にも行かないでしょう……たとえ幼いころ、僕が婚約者の彼女へ――申し訳ないことに当時は幼すぎて何を言ってしまったのか覚えていませんが、とにかく無礼を働いて嫌われているんです。ですが、まだ婚約は解消されてはいない」
婚約者。
メインヒロインの1人。
「悪の権化であるジュリオン様から主人公が寝取る」という爽快感のために設定されていただろう彼女については、なぜかジュリオン様の人気が大沸騰した結果――多くのお姉様方から総スカンだったりする。
まぁプライドが高くってつんつんしたお嬢様キャラで、ルートに入ってもなかなかデレないからね……今どきツンデレは流行りにくいからしょうがない。
しかもそのお相手がジュリオン様で、主人公くんにデレる前も後もジュリオン様の悪口ばっか言うもんだから、もうね。
けども、彼女と僕は、家同士の許嫁――同い年、かつ貴族同士のめんどくさすぎるいろいろを考慮して生まれた時点で決まっていた関係。
ゲームっていう事情を考慮しなければ、ここは普通に中世の世界。
ゲームっていう事情を考慮すれば、ここは侵略を受けている世界。
ゆえに、貴族同士の血のつながりと濃さ、各領主たちの力のバランスは何においても重要視されるもの。
そこに人格は関係なく、ただ王の命令に従うかどうか、そしてちゃんと子供を――魔力の素養っていう人間MAP兵器を安定して量産できるかっていうことにだけしか関心が置かれない。
つまりはジュリオン様も、主人公くんさえおらず魔族のささやきもなく、ただ普通に卒業するだけだったとしたら――たくさんの女子を泣かせはするだろうけども、普通に辺境伯の次男として、この社会が必要とする存在になる。
ジュリオン様は賢くてバカだけどそういうのには敏感なはずだから、きっとそつなくこなすだろう。
その過程で気に入らない相手はいじめ倒すし気に入った相手は好き放題するしでも、この世界の貴族としての責務を果たすならば「やんちゃ」で済んでしまう。
それが身分社会だ。
――つまり、婚約者の彼女は泣かされ続けながらもジュリオン様の妻として生き続けなければならない。
彼女が幸せかどうかは関係なく、彼女と僕が貴族の責務を果たすかどうかだから。
それを崩すには、よっぽどのこと――すなわち、英雄になった主人公くんが勇者として爵位持ちになって家の格とやらができ、さらには政治の都合が合わさらないと叶わない。
ついでにジュリオン様が敵を引き込むレベルでやらかして追放とか処刑とかにならないと、叶わない。
ま、それをセレスティーヌ母さんが死んだあたりっていう、本当に最悪のタイミング――高慢ちきのわがまま坊やでも、これでもたぶん愛想くらいはできただろうジュリオン様(幼)が、そんなことができない精神状態なタイミングで――彼女とジュリオン様は初の顔合わせがセッティングされ。
そして前世の僕が起きる前の今世のジュリオン様が癇癪起こして罵倒したか何かで、以来、今日まで1度も会うどころか手紙を交換することすらしていないんだけども――それでも数年後に主人公くんに奪われるまでは、貴族社会の都合上で彼女は僕の婚約者だ。
それを彼女から拒否することは叶わないし、ジュリオン様の方からも同じ。
「公の場で仲良く見せ、子を作る以外は好きにすれば良いんだから仮面をかぶれ」って諭されておしまい。
だから、僕は彼女と破局したい。
どうにかして婚約解消とか婚約破棄にこぎつけたい。
けども主人公くんのルート次第では彼女の協力を仰げる方が都合が良いことも多いだろう、だからせめて関係性を「好きでも嫌いでもない婚約者」程度には改善した上で穏便に別の人生に進みたい。
どうせ彼女がジュリオン様たる僕のことを好きになるはずがないんだし、なんとかなだめすかして媚びへつらって持ち上げて許してもらうしかない。
そう思い続け、何度も相手方に手紙を送ったりし続け――ようやくに、会えそうな段取りになっているんだ。
「やだやだ、妻をNTRれるとかやだ!」
「やだやだ、ママをNTRれるとかやだ!」
「………………………………」
……当の本人が覚悟決めてるのに何ほざいてるんだろうね、この身内どもは。
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