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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
117話 サキュバスは様子見をしている
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「――ジャッジメント!」
今度は――比較的落ち着いてからの攻撃。
3年前とは隔絶した脅威に魔力の遠慮なしにぶっ放したそれは、最下層の中を一瞬染め、全ての光と音を吸収する。
……よし。
攻撃もできるし、不意打ちのさっきとは違ってきちんと練ることができた。
でも、問題は……。
「「ガァァァ――!?」」
「……はぁん、これよぉ……♥ 体が砕けるほど、痺れちゃうの……♥」
――半壊したトロール集団の「前」で、艶めかしい動きと声を吐き出す幹部。
わざわざ攻撃を回避してから一瞬で戻ってきているその無駄に、明らかな余裕が見える。
……彼女には通じなくとも、彼女が従えるモンスターたちには問題なく効果がある。
それだけでもまだ安心できるはず。
――エロディーは、遊んでいるだけだ。
3年前に自分を不意打ちで倒した相手の僕を見つけ、どうしてやろうと妄想を膨らませているからおとなしいだけ。
奥のオーク、トロール、取り巻きのゴブリンたちは本来なら脅威じゃないけども、魔王軍幹部という強敵に貼りつけられる以上には充分な脅威。
よく見れば特別にでかいトロールも居るし、きっとあいつが本来のダンジョンボス。
それさえ倒せばクリア――のはずだけども。
「けどぉ……うっふぅん……? やっぱり、これぇ……」
もぞもぞとしながらも、何か考えているのか下を向いて何かしらを思案している様子。
――3年前に吹っ飛ばされたのに、僕のことを脅威と見なしていない?
いや、僕から目を離しているようでいて、彼女の意識は常に僕へ向いている――やっぱり警戒している僕をおもしろおかしく弄んでいるだけだろう。
「うぅーん……おかしいわねぇ……?」
くねくねとしているだけのサキュバス――魔王の復活していないこの時代では、事実上のラスボス。
そんなものに遭遇してしまったのに、僕たちはまだ誰も致命傷を負わされていない。
エロディーは、さっきから基本的に攻撃をしてこない。
ただ僕たちを――急接近して魅了してきたり、言葉で挑発しているだけだ。
一見、本編で見たレベルの強さかと思ったけども――実はまだ完全じゃない?
今の僕たち――僕のレベルがメインシナリオ中盤くらいの推奨レベルに達していないから圧倒的な格差を感じているだけで、実際には本編よりも弱い……?
――そうだ。
メインシナリオできちんとレベリングとアイテムを揃えた主人公パーティーでも苦戦する相手に、まだ明確な攻撃らしいものを食らっていない。
つまり――付け入る余地はある。
あるいは、逃走するための隙が。
「………………………………」
彼女の今のレベルと、その目的が不明。
けれども、この場面は逃げるしかない。
「……攻撃は、まだできますね。いつまでかは不明ですが」
「そう……なら、機会をうかがって階段を駆け上がるわよ」
ひとりでもじもじと――紐な胸元や股をまさぐっている痴女から視線を強引に外しつつ、耳打ちしてくるマルテルさんと話し合う。
うん、この子とは意見が一致している。
こういう非常時に落ち着いてる参謀ポジションは本当に助かるよね。
金髪をなびかせ、彼女は僕たちの後ろをさっと振り返り――一瞬、目を細めたもののすぐに力を抜き。
「経緯は聞いていたから仕方がないとは思うけど、あの3人は戦えない。発破をかけて、せめて自力で走ってもらうしかないわ。ユリアの、あのよく分からない馬鹿みたいな魔力攻撃でさえ、まるで通じない相手だもの」
「……そう、ですね」
ちらりと――僕たちの後ろ、足元を見下ろす。
――そう。
僕たちには、この場面で護衛しなければならない対象ができてしまっているから。
「ごめんなさいましごめんなさいまし……」
「ダメですの……あのときのことは、悪夢で何度も……」
「『その後に起こり得たこと』を、どうしても……」
僕が固まってたのもあるけども、それよりも僕の前に、兄妹が飛び出してくれた理由。
ですのちゃんたち3姉妹――3年前、エロディーさんにとっ捕まってて、すんでの所でなんとか助かった子たち。
あのときも相当な覚悟があった様子だったけれども、あれから3年が経ち――前世の記憶がある僕はともかく、一般的には男子よりも女子が、さらに平民よりも貴族の方が、幼い頃の精神年齢は高い。
そして、一般的には男性よりも女性の方が「そういう被害」に対する危機意識や末路に対し、聞きもするし考えもするもの。
だからこそ――ダンジョンで男女ともに起こり得る、けれどもどうしても女性の方が心と体に傷を負いやすい「苗床」、そしてサキュバスである彼女の「おもちゃ」になったらどうなるかという、具体的な知識。
それを知ってしまったからこそ、彼女たちは腰が砕けて――その下の水たまりは意識して気がつかなかったことにしなければならない。
「にゃろー! こいつ、すばしっこい!」
「あらぁ……? これについてこられるのねぇ……♥」
この子たちのために、リラちゃんは少し無理をして挑発をしている。
……あるいはリラちゃん自身の性格もあるかもだけど、いずれにしても余裕があるから攻撃してこないだけかもしれない魔族相手に、あまり長く牽制をさせるのは良くないはずだ。
「くそっ! オークたちが邪魔だ……!」
エロディーへちょっかいをかけるリラちゃんを追い群がってくる――さっきまではおしりを隠したへっぴり腰だったテオくんも、必死に彼女をサポートしてくれている。
――これだけ考える余裕があるほどに、エロディーはこちらを見ながらも手を出してこない。
「――マイクロジャッジメント! ミジンコジャッジメント!」
兄妹の邪魔にならないよう、サポートできる位置へ魔力を絞った必殺技を弾幕として――エロディーには気づかれているだろうけども、最下層の他のモンスターたちを吹き飛ばす。
今は、これしかない。
――隙を見て、全員を逃がす。
それだけを、意識して。
今度は――比較的落ち着いてからの攻撃。
3年前とは隔絶した脅威に魔力の遠慮なしにぶっ放したそれは、最下層の中を一瞬染め、全ての光と音を吸収する。
……よし。
攻撃もできるし、不意打ちのさっきとは違ってきちんと練ることができた。
でも、問題は……。
「「ガァァァ――!?」」
「……はぁん、これよぉ……♥ 体が砕けるほど、痺れちゃうの……♥」
――半壊したトロール集団の「前」で、艶めかしい動きと声を吐き出す幹部。
わざわざ攻撃を回避してから一瞬で戻ってきているその無駄に、明らかな余裕が見える。
……彼女には通じなくとも、彼女が従えるモンスターたちには問題なく効果がある。
それだけでもまだ安心できるはず。
――エロディーは、遊んでいるだけだ。
3年前に自分を不意打ちで倒した相手の僕を見つけ、どうしてやろうと妄想を膨らませているからおとなしいだけ。
奥のオーク、トロール、取り巻きのゴブリンたちは本来なら脅威じゃないけども、魔王軍幹部という強敵に貼りつけられる以上には充分な脅威。
よく見れば特別にでかいトロールも居るし、きっとあいつが本来のダンジョンボス。
それさえ倒せばクリア――のはずだけども。
「けどぉ……うっふぅん……? やっぱり、これぇ……」
もぞもぞとしながらも、何か考えているのか下を向いて何かしらを思案している様子。
――3年前に吹っ飛ばされたのに、僕のことを脅威と見なしていない?
いや、僕から目を離しているようでいて、彼女の意識は常に僕へ向いている――やっぱり警戒している僕をおもしろおかしく弄んでいるだけだろう。
「うぅーん……おかしいわねぇ……?」
くねくねとしているだけのサキュバス――魔王の復活していないこの時代では、事実上のラスボス。
そんなものに遭遇してしまったのに、僕たちはまだ誰も致命傷を負わされていない。
エロディーは、さっきから基本的に攻撃をしてこない。
ただ僕たちを――急接近して魅了してきたり、言葉で挑発しているだけだ。
一見、本編で見たレベルの強さかと思ったけども――実はまだ完全じゃない?
今の僕たち――僕のレベルがメインシナリオ中盤くらいの推奨レベルに達していないから圧倒的な格差を感じているだけで、実際には本編よりも弱い……?
――そうだ。
メインシナリオできちんとレベリングとアイテムを揃えた主人公パーティーでも苦戦する相手に、まだ明確な攻撃らしいものを食らっていない。
つまり――付け入る余地はある。
あるいは、逃走するための隙が。
「………………………………」
彼女の今のレベルと、その目的が不明。
けれども、この場面は逃げるしかない。
「……攻撃は、まだできますね。いつまでかは不明ですが」
「そう……なら、機会をうかがって階段を駆け上がるわよ」
ひとりでもじもじと――紐な胸元や股をまさぐっている痴女から視線を強引に外しつつ、耳打ちしてくるマルテルさんと話し合う。
うん、この子とは意見が一致している。
こういう非常時に落ち着いてる参謀ポジションは本当に助かるよね。
金髪をなびかせ、彼女は僕たちの後ろをさっと振り返り――一瞬、目を細めたもののすぐに力を抜き。
「経緯は聞いていたから仕方がないとは思うけど、あの3人は戦えない。発破をかけて、せめて自力で走ってもらうしかないわ。ユリアの、あのよく分からない馬鹿みたいな魔力攻撃でさえ、まるで通じない相手だもの」
「……そう、ですね」
ちらりと――僕たちの後ろ、足元を見下ろす。
――そう。
僕たちには、この場面で護衛しなければならない対象ができてしまっているから。
「ごめんなさいましごめんなさいまし……」
「ダメですの……あのときのことは、悪夢で何度も……」
「『その後に起こり得たこと』を、どうしても……」
僕が固まってたのもあるけども、それよりも僕の前に、兄妹が飛び出してくれた理由。
ですのちゃんたち3姉妹――3年前、エロディーさんにとっ捕まってて、すんでの所でなんとか助かった子たち。
あのときも相当な覚悟があった様子だったけれども、あれから3年が経ち――前世の記憶がある僕はともかく、一般的には男子よりも女子が、さらに平民よりも貴族の方が、幼い頃の精神年齢は高い。
そして、一般的には男性よりも女性の方が「そういう被害」に対する危機意識や末路に対し、聞きもするし考えもするもの。
だからこそ――ダンジョンで男女ともに起こり得る、けれどもどうしても女性の方が心と体に傷を負いやすい「苗床」、そしてサキュバスである彼女の「おもちゃ」になったらどうなるかという、具体的な知識。
それを知ってしまったからこそ、彼女たちは腰が砕けて――その下の水たまりは意識して気がつかなかったことにしなければならない。
「にゃろー! こいつ、すばしっこい!」
「あらぁ……? これについてこられるのねぇ……♥」
この子たちのために、リラちゃんは少し無理をして挑発をしている。
……あるいはリラちゃん自身の性格もあるかもだけど、いずれにしても余裕があるから攻撃してこないだけかもしれない魔族相手に、あまり長く牽制をさせるのは良くないはずだ。
「くそっ! オークたちが邪魔だ……!」
エロディーへちょっかいをかけるリラちゃんを追い群がってくる――さっきまではおしりを隠したへっぴり腰だったテオくんも、必死に彼女をサポートしてくれている。
――これだけ考える余裕があるほどに、エロディーはこちらを見ながらも手を出してこない。
「――マイクロジャッジメント! ミジンコジャッジメント!」
兄妹の邪魔にならないよう、サポートできる位置へ魔力を絞った必殺技を弾幕として――エロディーには気づかれているだろうけども、最下層の他のモンスターたちを吹き飛ばす。
今は、これしかない。
――隙を見て、全員を逃がす。
それだけを、意識して。
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