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1章 女装して屋敷を堕とした(7歳スタート・すでに手遅れっぽいけど)
6話 今世の妹アメリアちゃん(病弱伯爵令嬢ヒロイン)3
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「ジュリオンおにいさまは、ジュリオンおねえさま。そう、なんですね?」
「だから待て、話を――」
数十秒の沈黙が続き、おかげでジュリオン様の口調問題を脳内で整理していたせいか、端から見てきっと気まずい時間から一転、斜め上の返事が来てうまく対応できない僕。
反射的に生返事しちゃったけど、なんかこの子もまたとんでもないこと言ってない?
「そうです! ジュリオンさま、こんなにかわいいでしょ?」
「はい……!」
違う違うアメリアちゃん落ち着いて、あとエミリーちゃんはステイ。
幼女同士がきゃっきゃしてるのは目の保養だけどステイステイ。
「……違う、僕は男だ」
「でも、おねえさまは」
「お兄様と言え」
「おにいさまは……おねにいさま?」
あー、優しくしたいのに優しくできない展開に。
あとそのワードはジャンル違いだからNGね。
「おね――にいさまは、初めてお会いしたときからわたしを見てごきげんななめだったり、エミリーさまを見てごきげんななめだったりしてました」
うん、そうだね。
ジュリオン様だったからね。
「だから……えんせいから帰ってくるたびにおとうさまたちからかわいい服をもらっていたわたしたちが怒られるのは、しかたがないって思ってたんです」
うん、確かにそうだね。
あの父親に兄は、まるで出張ばっかりで生まれた子供とろくに会話もできず、だからせめて気を引こうと帰るたびにお土産を貢ぐ、子供とのコミュニケーション力が悲しい父親みたいなことしかしてないからね。
ちなみにジュリオン様へも、一応で服とか各地の名産品とかをプレゼントしてはいた記憶がある。
肝心のジュリオン様が拒否って、速攻倉庫行きだったけども。
……あ、あの中に今後使えそうな武器とかアイテムあったなぁ……。
「あー、確かにぃ。私が服とかだらしないとすーぐ怒りますし、寝癖が残ってても怒りますし。『しゅくじょとして恥ずかしくはないのかー!』って!」
「わたしも……そうしておにいさまがもらえなかったお洋服とかを、きちんと着こなせていないから怒られるのかなって……」
違う。
違うんだ、賢すぎる義妹よ。
2歳上の遠い親戚よりも賢い病弱幼女よ。
――だけども同時に、この状況がこの上なく「使える」から明確に否定できないって気づいてしまっている僕。
だってこれ、「ある日いきなり母さんの服で女装し始めた、気の狂ったジュリオン様」よりも「前からずっと女装したかったジュリオン様」の方がなにかと便利で納得させやすいもん……。
ああ、なまじ思考能力まで成人男性なせいで、こんなこと思いついちゃった僕の馬鹿。
「おにいさま……? それとも、おねえさまと……?」
「私たち、応援しますから素直になっていいんですよジュリオンさま!」
「………………………………」
メインヒロイン2人(幼)が、僕を見てくる。
ついでに使用人たちも――おいなんで部屋の外からドアいっぱいに密集してさっきの人たちまで居るんだ。
てことはあれか。
この返事をしちゃったら、もう既成事実として周知のものになるのか?
「………………………………」
男としてのプライド、矜持、誇り、尊厳――それと、死にたくないという本能がせめぎ合い。
そして。
「……そうだ……嫉妬できつく当たったのを、謝罪しようと思って来たんだ……ずっと、素直になれなくて……ほら、女の服を着るとか、宗教的にも……だし……噂されると恥ずかしいし……」
僕は――プライドなんかよりも命を取った。
きっと、これは最も男らしい行動なんだ。
女装とは、男にしかできないという究極的に漢らしいものなんだ。
……怪我の功名。
わざとらしい、たどたどしい話し方で、ぽつぽつとしか出てこない「らしい言い訳」。
だけども、逆にそれが「ずっと言えなかった秘密に気づかれ、恥ずかしいものの言わざるを得なくなって言っている」系統の真実味を帯びているのか。
それともこの子たちが7歳児と5歳児(精神年齢はたぶん2人ともおなじ5歳児)で、あとたぶん思い込みも相当に激しいからか。
あるいはその両方か。
両方だな……うん。
彼女たちは――なぜか目を輝かせて、2人揃ってきゃっきゃとし出す。
「あ、あのっ、おとうさまからいただきましたお洋服の中に、まだわたしが着られない大きなものがいくつかあるのでっ!」
「ジュリオンさまぁ? 背丈は同じですし、私のお洋服も貸しますね? おそろいです!」
「…………ああ……感謝する…………」
僕はもうお嫁に行けない。
じゃない、お婿に行けない。
……じゃないじゃない、男として妻を娶る貴族令息としてのプライドを投げ捨てたんだ。
恥ずかしくてうつむいても良いじゃないか。
……たとえそれが精神年齢現代社会成人男性として、恥ずかしいどころじゃない羞恥で死にそうだからって理由でも良いじゃないか。
そもそもだ、今のこの格好ですら顔を赤くしないように他のどうでもいいこと――ほら、死なない方法とかメス堕ち回避とか――を必死で考えてたりしてたのに、それが全部おじゃんになってるんだから。
無邪気な笑顔ふたつに使用人たちの納得の表情と引き換えに――僕は「ただの傲慢不遜でぼんくらぼんぼんでなんの取り柄もない次男」から「女装に憧れていた、亡き母にちょっぴり似ているかわいい坊や」に大幅ランクダウンした。
……うん、良いさ。
それで僕が本編開始前までに闇討ちに遭う危険と、本編開始後に襲ってくるだろう大量の死亡&メス堕ちフラグが何割かでも折れるのなら。
折れなかったら?
……さすがに、泣く。
◇
【END/No.41:アメリア「お兄様から全てを奪ってしまった私が――せめて、ひと思いに ……産まれてきて、ごめんなさい」――回避】
「だから待て、話を――」
数十秒の沈黙が続き、おかげでジュリオン様の口調問題を脳内で整理していたせいか、端から見てきっと気まずい時間から一転、斜め上の返事が来てうまく対応できない僕。
反射的に生返事しちゃったけど、なんかこの子もまたとんでもないこと言ってない?
「そうです! ジュリオンさま、こんなにかわいいでしょ?」
「はい……!」
違う違うアメリアちゃん落ち着いて、あとエミリーちゃんはステイ。
幼女同士がきゃっきゃしてるのは目の保養だけどステイステイ。
「……違う、僕は男だ」
「でも、おねえさまは」
「お兄様と言え」
「おにいさまは……おねにいさま?」
あー、優しくしたいのに優しくできない展開に。
あとそのワードはジャンル違いだからNGね。
「おね――にいさまは、初めてお会いしたときからわたしを見てごきげんななめだったり、エミリーさまを見てごきげんななめだったりしてました」
うん、そうだね。
ジュリオン様だったからね。
「だから……えんせいから帰ってくるたびにおとうさまたちからかわいい服をもらっていたわたしたちが怒られるのは、しかたがないって思ってたんです」
うん、確かにそうだね。
あの父親に兄は、まるで出張ばっかりで生まれた子供とろくに会話もできず、だからせめて気を引こうと帰るたびにお土産を貢ぐ、子供とのコミュニケーション力が悲しい父親みたいなことしかしてないからね。
ちなみにジュリオン様へも、一応で服とか各地の名産品とかをプレゼントしてはいた記憶がある。
肝心のジュリオン様が拒否って、速攻倉庫行きだったけども。
……あ、あの中に今後使えそうな武器とかアイテムあったなぁ……。
「あー、確かにぃ。私が服とかだらしないとすーぐ怒りますし、寝癖が残ってても怒りますし。『しゅくじょとして恥ずかしくはないのかー!』って!」
「わたしも……そうしておにいさまがもらえなかったお洋服とかを、きちんと着こなせていないから怒られるのかなって……」
違う。
違うんだ、賢すぎる義妹よ。
2歳上の遠い親戚よりも賢い病弱幼女よ。
――だけども同時に、この状況がこの上なく「使える」から明確に否定できないって気づいてしまっている僕。
だってこれ、「ある日いきなり母さんの服で女装し始めた、気の狂ったジュリオン様」よりも「前からずっと女装したかったジュリオン様」の方がなにかと便利で納得させやすいもん……。
ああ、なまじ思考能力まで成人男性なせいで、こんなこと思いついちゃった僕の馬鹿。
「おにいさま……? それとも、おねえさまと……?」
「私たち、応援しますから素直になっていいんですよジュリオンさま!」
「………………………………」
メインヒロイン2人(幼)が、僕を見てくる。
ついでに使用人たちも――おいなんで部屋の外からドアいっぱいに密集してさっきの人たちまで居るんだ。
てことはあれか。
この返事をしちゃったら、もう既成事実として周知のものになるのか?
「………………………………」
男としてのプライド、矜持、誇り、尊厳――それと、死にたくないという本能がせめぎ合い。
そして。
「……そうだ……嫉妬できつく当たったのを、謝罪しようと思って来たんだ……ずっと、素直になれなくて……ほら、女の服を着るとか、宗教的にも……だし……噂されると恥ずかしいし……」
僕は――プライドなんかよりも命を取った。
きっと、これは最も男らしい行動なんだ。
女装とは、男にしかできないという究極的に漢らしいものなんだ。
……怪我の功名。
わざとらしい、たどたどしい話し方で、ぽつぽつとしか出てこない「らしい言い訳」。
だけども、逆にそれが「ずっと言えなかった秘密に気づかれ、恥ずかしいものの言わざるを得なくなって言っている」系統の真実味を帯びているのか。
それともこの子たちが7歳児と5歳児(精神年齢はたぶん2人ともおなじ5歳児)で、あとたぶん思い込みも相当に激しいからか。
あるいはその両方か。
両方だな……うん。
彼女たちは――なぜか目を輝かせて、2人揃ってきゃっきゃとし出す。
「あ、あのっ、おとうさまからいただきましたお洋服の中に、まだわたしが着られない大きなものがいくつかあるのでっ!」
「ジュリオンさまぁ? 背丈は同じですし、私のお洋服も貸しますね? おそろいです!」
「…………ああ……感謝する…………」
僕はもうお嫁に行けない。
じゃない、お婿に行けない。
……じゃないじゃない、男として妻を娶る貴族令息としてのプライドを投げ捨てたんだ。
恥ずかしくてうつむいても良いじゃないか。
……たとえそれが精神年齢現代社会成人男性として、恥ずかしいどころじゃない羞恥で死にそうだからって理由でも良いじゃないか。
そもそもだ、今のこの格好ですら顔を赤くしないように他のどうでもいいこと――ほら、死なない方法とかメス堕ち回避とか――を必死で考えてたりしてたのに、それが全部おじゃんになってるんだから。
無邪気な笑顔ふたつに使用人たちの納得の表情と引き換えに――僕は「ただの傲慢不遜でぼんくらぼんぼんでなんの取り柄もない次男」から「女装に憧れていた、亡き母にちょっぴり似ているかわいい坊や」に大幅ランクダウンした。
……うん、良いさ。
それで僕が本編開始前までに闇討ちに遭う危険と、本編開始後に襲ってくるだろう大量の死亡&メス堕ちフラグが何割かでも折れるのなら。
折れなかったら?
……さすがに、泣く。
◇
【END/No.41:アメリア「お兄様から全てを奪ってしまった私が――せめて、ひと思いに ……産まれてきて、ごめんなさい」――回避】
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