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1章 女装して屋敷を堕とした(7歳スタート・すでに手遅れっぽいけど)
14話 すてきなジュリオンさま(by エミリー)
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――わたしの体には、生まれたお家を出るまでにつけられた、たくさんの傷がありました。
特にひどかったのは、お父さまの大切な壺を――「お前を10人集めても足りないくらいの、祖先からの大切なものだぞ!」とおっしゃって、危うく命を落としそうな炎魔法で、一時期は歩けないほどで。
それも、ジュリオンさまの――公爵さまのお家に出されるのが決まってから高名な治癒魔法の方に治してもらいましたけど、体中が醜くて……だから、誰にも見せていませんでした。
でも。
「ジュリオンさまぁ、見てくださいー」
「エミリー? 何を……ばっ!? いきなり脱ぐやつがあるか!?」
「ほらほら、ジュリオンさまのおかげで、とうとう最後まで残ってた傷、綺麗になったんですぅ! しっかりみてください、ちょうどおへその下の……」
「分かった! 分かったからいい加減服を――せめて胸元と股は隠せ!?」
「あ、じゃあおしり! おしり見てください! つるつるです!」
「……見て、またエミリーが……」
「ジュリオン様に裸を見せつけて……あんなに子供なのに、ご実家からの知恵入れかしらね……いやらしい」
「いえ、それとも毎日の折檻を怖れてなのかも……かわいそうに」
「まぁいいじゃないか。どうせ側室にはなるんだろうし、早くお手つきになれば、少しはジュリオン様の折檻も……」
――いつしか、みなさんのわたしへの目が「いつも余計な仕事を増やすダメな子」から「ドジばかりしてるけどいつもひどい目に遭わされてかわいそうな子」になりました。
ジュリオンさまは天才なので、この2年で魔法がすっかり上達されて――今ではわたしへの折檻魔法は、屋敷の外からでも一瞬の光が見え、音も聞こえるほどだそうです。
……わたしへはなぜか「ぺちり」としか聞こえませんし、ジュリオンさまをよっぽど怒らせたりしなければ、おしりぺんぺんのうちの1回の「ぺん」よりも痛く感じることはないのに。
ジュリオンさまの言いつけ通り、哀れまれるようになった結果で仲良くなれた女性の方々に一緒に湯浴みをと言われても、毎回「わたしはジュリオンさまのものなので」ってお断りし続けました。
そうしたら「かわいそうに……最初の頃見たけど、体中ひどい痣とミミズ腫れと火傷の痕だらけ。今は、きっとあんなもんじゃ……」って、最初から優しかった1人が言ってるのが聞こえました。
ジュリオンさまは、本当はとってもお優しい人なんです。
だから、せめてその誤解だけでもって言ったら「それは都合が良い。良いな、絶対僕以外に――せめて近距離で肌を見せるな。醜い振りをしろ。母上なら、きっとそう言う」って。
ジュリオンさまがみなさんから悪く言われるのも、セレスティーヌさまにますます似てきた綺麗なお顔で、涼しい表情で淡々と話していました。
――だからわたしは、ことあるごとにジュリオンさま「だけ」に、服を脱ぐんです。
みなさんが言っていました。
「男の人は女の人の裸を見るだけで幸せになるんだ」って。
それなら、ジュリオンさまだってきっと、嬉しくて幸せになれるんです。
それに、あのジュリオンさまが唯一――本当に唯一、まるで普通の男の子みたいに慌てるのは、ちょっと嬉しいんです。
だって、この世界で今、たった1人だけわたしが大好きで、わたしが何をされてもいい人で、かっこいい人で将来はお嫁さんにしてくれる人で、だから私はいっぱいはだかを見せて――どうやるかは知りませんけど、がんばってジュリオンさまの子供を産むんです。
とりあえず100人くらいは欲しい気がします。
がんばれば200人くらいは産める気がします。
――セレスティーヌさまがお亡くなりになったあとから、セレスティーヌさまの代わりにジュリオンさまがくださるようになった、1年に1回のプレゼント。
ジュリオンさまは、毎年「何が良いか」って聞いてくれます。
だから、もうちょっと大きくなって子供が産めるようになったら、毎年子供を3人ずつとか4人ずつとか10人ずつとか、お願いするんです。
大丈夫です!
ジュリオンさまはセレスティーヌさまの子供なんです!
そのくらい、きっとできます!
あのセレスティーヌさまそっくりなんですから、それくらいへっちゃらです!
あのセレスティーヌさまもデュクロワさまと会った日にジュリオンさまのお兄さまを「はらんだ」って言ってたので大丈夫です!
◇
そんな、みんなの前でジュリオンさまに痛めつけてもらえる幸せな日々は――急に、終わりました。
しょんぼりです。
……さすがに今回はジュリオンさまも魔法じゃなくて、おしりぺちぺち100回かな。
私がわざとだったりお説教を受けたばかりで同じドジをしたりすると、みなさんに見られながらの折檻ごっこはお部屋の中にふたりきりになっての、本物の折檻になります。
おしりぺんぺんは……叩かれてる100回が痛くって、最近はなぜかおしりを出すと恥ずかしくって、顔か真っ赤になるしはぁはぁなるし、そのあともしばらくおしりとおまたが痛くてじんじんするんです。
おまたは叩かれてないのに不思議です。
でも、朝、井戸に張っていた氷を割るのが楽しくって。
いつも「前を向いて歩け」って言われてたのに、そのときに限って――ぷかぷかと浮いていた氷の残骸を眺めながら歩いてて、つい滑って。
その痛くなる冷たさのお水を、なぜか勢いがついて――なんかすっごい勢いで、ジュリオンさまに頭からかぶせちゃったんです。
そうしたら、ジュリオンさまのお顔が――あれは、そうです。
セレスティーヌさまが「ふむ……ここはゲンサクとは違うのか」とか「しまった、ゲンサクとの齟齬はこの形で……手痛いな」などと悩んでおられた、きっとすごく難しいことを考えているときのお顔に。
だから、せめておしりぺんぺんで許してもらおうとしました。
けど、目つきの変わった――いいえ、かっこ良くて美しいセレスティーヌさまそっくりの顔つきになられたジュリオンさまは、私がお馬さんを拭くための雑巾で顔を拭いちゃって、あとで嗅いだらすっごくすっごくくちゃかったあの雑巾で拭いちゃったのに、折檻も、折檻ごっこもされないで。
まるでずっと前から――きっとセレスティーヌさまに言われていたのかもしれません――使用人の方たちが困るのも気にせずにセレスティーヌさまの寝室に入り、そしてセレスティーヌさまが幼かったら――その妄想のままの姿に。
美しい、そして強くてかっこいい――でもかわいい、小さいセレスティーヌさまになりました。
みなさんを前に、実はかわいい服を着てみたかったとおっしゃっていましたジュリオンさま。
それで――ジュリオンさまが、折檻ごっこにしない折檻になるときのことを思い出すと、どうやらジュリオンさまはセレスティーヌさまみたいになりたいんだって、すっと納得しました。
だから私はいっぱいおめかししてあげました。
かわいい格好になって褒められるのが初めてだからか、顔を赤くしてもじもじしてたのが、すっごくすっごくかわいかったです。
そんなジュリオンさまは――あとでベルトランおじいちゃんに聞いたら分かりやすく教えてくれましたけど、ずっとずっと「私を相手にいじめて楽しむだけのぼんくら」っていう演技をしていたんだそうです。
そうです!
ジュリオンさまはセレスティーヌさまみたいに頭がすっごく良くって!
魔法も実は極大魔法っていうすっごいのを「ぺちん」って程度でわたしに折檻ごっこできるほどで!
お庭にあった大きなお岩――おじいさんによると、セレスティーヌさまが「魔王でもない限り破壊できぬ素材ゆえ、屋敷が長距離射撃される想定ルートの先に安置せよ」っておっしゃっていたらしい、かつて魔王軍を殲滅した帰り道に拾って帰ってきたすごいのだそう――を、魔法を乗せていたとはいえ、決してすごいとは言えないものだったらしい剣で――一撃で、切っちゃったんです!
おじいさんから学べるものはないって知ったジュリオンさまは、町で冒険者になるそうです。
冒険者……ジュリオンさまとふたりっきり……楽しそうですね!
だからわたしも……え?
ダメ?
え?
……そんなぁぁぁ……わたし、ジュリオンさまのおくさんかあいじんさんになるんだから……それでもだめなんですかぁぁ……えーん……。
特にひどかったのは、お父さまの大切な壺を――「お前を10人集めても足りないくらいの、祖先からの大切なものだぞ!」とおっしゃって、危うく命を落としそうな炎魔法で、一時期は歩けないほどで。
それも、ジュリオンさまの――公爵さまのお家に出されるのが決まってから高名な治癒魔法の方に治してもらいましたけど、体中が醜くて……だから、誰にも見せていませんでした。
でも。
「ジュリオンさまぁ、見てくださいー」
「エミリー? 何を……ばっ!? いきなり脱ぐやつがあるか!?」
「ほらほら、ジュリオンさまのおかげで、とうとう最後まで残ってた傷、綺麗になったんですぅ! しっかりみてください、ちょうどおへその下の……」
「分かった! 分かったからいい加減服を――せめて胸元と股は隠せ!?」
「あ、じゃあおしり! おしり見てください! つるつるです!」
「……見て、またエミリーが……」
「ジュリオン様に裸を見せつけて……あんなに子供なのに、ご実家からの知恵入れかしらね……いやらしい」
「いえ、それとも毎日の折檻を怖れてなのかも……かわいそうに」
「まぁいいじゃないか。どうせ側室にはなるんだろうし、早くお手つきになれば、少しはジュリオン様の折檻も……」
――いつしか、みなさんのわたしへの目が「いつも余計な仕事を増やすダメな子」から「ドジばかりしてるけどいつもひどい目に遭わされてかわいそうな子」になりました。
ジュリオンさまは天才なので、この2年で魔法がすっかり上達されて――今ではわたしへの折檻魔法は、屋敷の外からでも一瞬の光が見え、音も聞こえるほどだそうです。
……わたしへはなぜか「ぺちり」としか聞こえませんし、ジュリオンさまをよっぽど怒らせたりしなければ、おしりぺんぺんのうちの1回の「ぺん」よりも痛く感じることはないのに。
ジュリオンさまの言いつけ通り、哀れまれるようになった結果で仲良くなれた女性の方々に一緒に湯浴みをと言われても、毎回「わたしはジュリオンさまのものなので」ってお断りし続けました。
そうしたら「かわいそうに……最初の頃見たけど、体中ひどい痣とミミズ腫れと火傷の痕だらけ。今は、きっとあんなもんじゃ……」って、最初から優しかった1人が言ってるのが聞こえました。
ジュリオンさまは、本当はとってもお優しい人なんです。
だから、せめてその誤解だけでもって言ったら「それは都合が良い。良いな、絶対僕以外に――せめて近距離で肌を見せるな。醜い振りをしろ。母上なら、きっとそう言う」って。
ジュリオンさまがみなさんから悪く言われるのも、セレスティーヌさまにますます似てきた綺麗なお顔で、涼しい表情で淡々と話していました。
――だからわたしは、ことあるごとにジュリオンさま「だけ」に、服を脱ぐんです。
みなさんが言っていました。
「男の人は女の人の裸を見るだけで幸せになるんだ」って。
それなら、ジュリオンさまだってきっと、嬉しくて幸せになれるんです。
それに、あのジュリオンさまが唯一――本当に唯一、まるで普通の男の子みたいに慌てるのは、ちょっと嬉しいんです。
だって、この世界で今、たった1人だけわたしが大好きで、わたしが何をされてもいい人で、かっこいい人で将来はお嫁さんにしてくれる人で、だから私はいっぱいはだかを見せて――どうやるかは知りませんけど、がんばってジュリオンさまの子供を産むんです。
とりあえず100人くらいは欲しい気がします。
がんばれば200人くらいは産める気がします。
――セレスティーヌさまがお亡くなりになったあとから、セレスティーヌさまの代わりにジュリオンさまがくださるようになった、1年に1回のプレゼント。
ジュリオンさまは、毎年「何が良いか」って聞いてくれます。
だから、もうちょっと大きくなって子供が産めるようになったら、毎年子供を3人ずつとか4人ずつとか10人ずつとか、お願いするんです。
大丈夫です!
ジュリオンさまはセレスティーヌさまの子供なんです!
そのくらい、きっとできます!
あのセレスティーヌさまそっくりなんですから、それくらいへっちゃらです!
あのセレスティーヌさまもデュクロワさまと会った日にジュリオンさまのお兄さまを「はらんだ」って言ってたので大丈夫です!
◇
そんな、みんなの前でジュリオンさまに痛めつけてもらえる幸せな日々は――急に、終わりました。
しょんぼりです。
……さすがに今回はジュリオンさまも魔法じゃなくて、おしりぺちぺち100回かな。
私がわざとだったりお説教を受けたばかりで同じドジをしたりすると、みなさんに見られながらの折檻ごっこはお部屋の中にふたりきりになっての、本物の折檻になります。
おしりぺんぺんは……叩かれてる100回が痛くって、最近はなぜかおしりを出すと恥ずかしくって、顔か真っ赤になるしはぁはぁなるし、そのあともしばらくおしりとおまたが痛くてじんじんするんです。
おまたは叩かれてないのに不思議です。
でも、朝、井戸に張っていた氷を割るのが楽しくって。
いつも「前を向いて歩け」って言われてたのに、そのときに限って――ぷかぷかと浮いていた氷の残骸を眺めながら歩いてて、つい滑って。
その痛くなる冷たさのお水を、なぜか勢いがついて――なんかすっごい勢いで、ジュリオンさまに頭からかぶせちゃったんです。
そうしたら、ジュリオンさまのお顔が――あれは、そうです。
セレスティーヌさまが「ふむ……ここはゲンサクとは違うのか」とか「しまった、ゲンサクとの齟齬はこの形で……手痛いな」などと悩んでおられた、きっとすごく難しいことを考えているときのお顔に。
だから、せめておしりぺんぺんで許してもらおうとしました。
けど、目つきの変わった――いいえ、かっこ良くて美しいセレスティーヌさまそっくりの顔つきになられたジュリオンさまは、私がお馬さんを拭くための雑巾で顔を拭いちゃって、あとで嗅いだらすっごくすっごくくちゃかったあの雑巾で拭いちゃったのに、折檻も、折檻ごっこもされないで。
まるでずっと前から――きっとセレスティーヌさまに言われていたのかもしれません――使用人の方たちが困るのも気にせずにセレスティーヌさまの寝室に入り、そしてセレスティーヌさまが幼かったら――その妄想のままの姿に。
美しい、そして強くてかっこいい――でもかわいい、小さいセレスティーヌさまになりました。
みなさんを前に、実はかわいい服を着てみたかったとおっしゃっていましたジュリオンさま。
それで――ジュリオンさまが、折檻ごっこにしない折檻になるときのことを思い出すと、どうやらジュリオンさまはセレスティーヌさまみたいになりたいんだって、すっと納得しました。
だから私はいっぱいおめかししてあげました。
かわいい格好になって褒められるのが初めてだからか、顔を赤くしてもじもじしてたのが、すっごくすっごくかわいかったです。
そんなジュリオンさまは――あとでベルトランおじいちゃんに聞いたら分かりやすく教えてくれましたけど、ずっとずっと「私を相手にいじめて楽しむだけのぼんくら」っていう演技をしていたんだそうです。
そうです!
ジュリオンさまはセレスティーヌさまみたいに頭がすっごく良くって!
魔法も実は極大魔法っていうすっごいのを「ぺちん」って程度でわたしに折檻ごっこできるほどで!
お庭にあった大きなお岩――おじいさんによると、セレスティーヌさまが「魔王でもない限り破壊できぬ素材ゆえ、屋敷が長距離射撃される想定ルートの先に安置せよ」っておっしゃっていたらしい、かつて魔王軍を殲滅した帰り道に拾って帰ってきたすごいのだそう――を、魔法を乗せていたとはいえ、決してすごいとは言えないものだったらしい剣で――一撃で、切っちゃったんです!
おじいさんから学べるものはないって知ったジュリオンさまは、町で冒険者になるそうです。
冒険者……ジュリオンさまとふたりっきり……楽しそうですね!
だからわたしも……え?
ダメ?
え?
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