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3章 女装して捨て子を堕とした
35話 悪役貴族が悪徳貴族を認知した
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「お、あんたらが依頼の――!? も、申し訳ございません! お貴族様に依頼できるお金は!」
ずざざっ。
「あの……」
「どうかお許しくださいませぇ! うちにはそんな蓄えは……!」
恰幅の良いおじさんが、ドアを開けたとたんに這いつくばっている。
……フード、被らないといけなかったか……ほら、孤児って多いしさ、ルーシーくんは前髪で顔が見えなくってぼろ着てて、だから僕がマントとフード姿なのは不安にさせちゃうかって思って。
「いや、あの」
「まだ身重のかみさんが居るんだ! 不敬とかはどうか俺ひとりで……!」
………………………………。
それはもう綺麗な流れで這いつくばっているおじさん。
こんな子供相手に。
……もう少し砂被らないといけないかなぁ……。
それとも、どっかの家の灰とか炭でももらって、もっときちゃなくなるしかない……?
顔も泥とかで汚すかなぁ……。
ていうか、貴族……畏れられすぎじゃない?
いや、これはどっちかっていうと恐れ――なんか身近で貴族の横暴を見かけたとかかな。
少なくともデュクロワ家はそんなことしないっていうか、そもそもほとんど父さんと兄さんが留守にしてるし、町に出ておいたする物理的時間がないから……どっかの爵位持ちとかがおいたしてるのか?
それはデュクロワ家として見過ごせない――なにしろこの町はお膝元だし――けども、今の僕は家とは関係ないどこぞの貴族の娘さん設定。
……ここは無難にやり過ごそう。
「――私はギルドでは新参で、この者は……従者です」
ジュリオン様フェイスのせいで第一印象が貴族になっちゃったものはしょうがない。
とりあえずこの人相手はこれで切り抜けよう。
「……ぼくが、従者……」
ルーシーくんは静かにしていようね。
「報酬は依頼文書通りで問題ありません。この通り、ランクも最下位。家名を持ち出す方が恥です」
「は、ははーっ!」
「……このギルドのプレートのとおり、私は何の権限もない新人でしかありませんから何もしませんよ? そもそも私はこんな子供ですし」
「ほ、本当か……ですか? な、なら……」
唇まで真っ青になってたおじさんが、ぷるぷる震えながら僕を見てきて――なぜか目を逸らしながら、依頼の内容を改めて伝えてくれて。
そんな感じで納得させての1件目。
ギルドハウスの目の前の雑貨屋さんからの、子供へのお駄賃程度の運搬依頼。
そこから町の端まで、現代換算で100円ほどの小遣いで荷物運びをした。
安いなぁ……まぁやってることは本当に小間使いだからしょうがないんだけど。
掛かった時間も10分程度で重くもないものだし、本当にお駄賃だこれ。
……ま、まあ、たかが100円でも、こういう依頼を何件もやれば食費にはなるけども。
いやぁ、世知辛い。
これは確かにみんながやりたがらないわけだ。
そういう依頼を優先してもらっちゃった僕が悪いもんね。
ルーシーくんはやっぱり、明日にでもダンジョンで鍛えて出入り口付近でだけでも稼げるように鍛えてあげないと。
それにしても。
「……貴族とは、そんなに恐ろしいものですか?」
「え? あ、はい……ユリアさまが特別に優しいだけかなって思います……村とかでも、お貴族様には気をつけろって、みんなが……」
「……そうですか」
モブ子ズも良い子たちなんだけどなぁ……いや、あれはモブ子ズっていうセットなユニークキャラとして認識されてそう。
「……では、ルーシー。この地図を見ながら、書いてある依頼先まで行ってみてください。間違えたら教えますから、まずは自分で」
「は、はいっ!」
手描きの時代、かつ受付嬢する事務職、かつ育ちの良さそうな女性とあって、デイジーさんの書いたと思しき依頼書はすっごく読みやすい。
「これは『広場』、『尖塔』……『依頼先』という単語です。今は文字の形でなんとなく覚えてください」
「はいっ! えっと、この広場とあの尖塔が……」
この世界の文字はアルファベットっぽいやつ。
だからとりあえずで単語の綴りを形として覚えちゃえば――漢字みたいに形として覚えたら、読んだり書いたりできなくても仕事はできるはず。
ルーシーくん、要らない子扱いされてたのに頭は良いっぽいし、たぶんその程度なら覚えられるだろうっていう判断。
僕は前世であっちこっち行ったらしく、地図を見たり町を見ただけである程度方向感覚が分かり、かつ今世の記憶力で1回見たら覚えて地理感覚が分かるっぽい。
だからルーシーくんの修行として――地図をくるくる回してるのがほほえましいね――地図の読み方を学習させつつ。
――ジュリオン様は夏場の終わりごろに地面に落ちたセミくらいに……運命的にか弱い存在だ。
したがって、将来の死亡フラグに繋がりそうなものはことごとく摘み取らないと不安で眠れない。
……さっきのおじさん。
ギルドハウスの目の前なのに、貴族の横暴に怯えていた――つまり、どこぞの貴族がこの町で――僕の屋敷から歩ける距離で、幅を利かせてぶいぶい言わせているのはほぼ確実。
さっき、そこまでは聞き出せなかったけども――放置はできない。
――僕は、悪役のジュリオン様に生まれ変わった存在。
そんな僕が巨悪だとすると、その貴族とかは雑魚だろう。
爵位的にも――辺境伯の侯爵家と同等以上の存在はそうそう居ないんだ。
――それを知っていながらおいたをしている貴族さんには、お仕置き、しないとね?
「ひぃっ!?」
「……ああごめんなさい、羽虫が気になって」
「そ、そうですかぁ……こわかったぁ……」
……むぅ、さすがはジュリオン様、怒気だけで魔力とかがにじみ出たか。
とにかく今は情報収集を兼ねてルーシーくんの育成をしつつ、僕自身も町に馴染んでいこう。
悪役による悪者退治は、その後で……ね。
ずざざっ。
「あの……」
「どうかお許しくださいませぇ! うちにはそんな蓄えは……!」
恰幅の良いおじさんが、ドアを開けたとたんに這いつくばっている。
……フード、被らないといけなかったか……ほら、孤児って多いしさ、ルーシーくんは前髪で顔が見えなくってぼろ着てて、だから僕がマントとフード姿なのは不安にさせちゃうかって思って。
「いや、あの」
「まだ身重のかみさんが居るんだ! 不敬とかはどうか俺ひとりで……!」
………………………………。
それはもう綺麗な流れで這いつくばっているおじさん。
こんな子供相手に。
……もう少し砂被らないといけないかなぁ……。
それとも、どっかの家の灰とか炭でももらって、もっときちゃなくなるしかない……?
顔も泥とかで汚すかなぁ……。
ていうか、貴族……畏れられすぎじゃない?
いや、これはどっちかっていうと恐れ――なんか身近で貴族の横暴を見かけたとかかな。
少なくともデュクロワ家はそんなことしないっていうか、そもそもほとんど父さんと兄さんが留守にしてるし、町に出ておいたする物理的時間がないから……どっかの爵位持ちとかがおいたしてるのか?
それはデュクロワ家として見過ごせない――なにしろこの町はお膝元だし――けども、今の僕は家とは関係ないどこぞの貴族の娘さん設定。
……ここは無難にやり過ごそう。
「――私はギルドでは新参で、この者は……従者です」
ジュリオン様フェイスのせいで第一印象が貴族になっちゃったものはしょうがない。
とりあえずこの人相手はこれで切り抜けよう。
「……ぼくが、従者……」
ルーシーくんは静かにしていようね。
「報酬は依頼文書通りで問題ありません。この通り、ランクも最下位。家名を持ち出す方が恥です」
「は、ははーっ!」
「……このギルドのプレートのとおり、私は何の権限もない新人でしかありませんから何もしませんよ? そもそも私はこんな子供ですし」
「ほ、本当か……ですか? な、なら……」
唇まで真っ青になってたおじさんが、ぷるぷる震えながら僕を見てきて――なぜか目を逸らしながら、依頼の内容を改めて伝えてくれて。
そんな感じで納得させての1件目。
ギルドハウスの目の前の雑貨屋さんからの、子供へのお駄賃程度の運搬依頼。
そこから町の端まで、現代換算で100円ほどの小遣いで荷物運びをした。
安いなぁ……まぁやってることは本当に小間使いだからしょうがないんだけど。
掛かった時間も10分程度で重くもないものだし、本当にお駄賃だこれ。
……ま、まあ、たかが100円でも、こういう依頼を何件もやれば食費にはなるけども。
いやぁ、世知辛い。
これは確かにみんながやりたがらないわけだ。
そういう依頼を優先してもらっちゃった僕が悪いもんね。
ルーシーくんはやっぱり、明日にでもダンジョンで鍛えて出入り口付近でだけでも稼げるように鍛えてあげないと。
それにしても。
「……貴族とは、そんなに恐ろしいものですか?」
「え? あ、はい……ユリアさまが特別に優しいだけかなって思います……村とかでも、お貴族様には気をつけろって、みんなが……」
「……そうですか」
モブ子ズも良い子たちなんだけどなぁ……いや、あれはモブ子ズっていうセットなユニークキャラとして認識されてそう。
「……では、ルーシー。この地図を見ながら、書いてある依頼先まで行ってみてください。間違えたら教えますから、まずは自分で」
「は、はいっ!」
手描きの時代、かつ受付嬢する事務職、かつ育ちの良さそうな女性とあって、デイジーさんの書いたと思しき依頼書はすっごく読みやすい。
「これは『広場』、『尖塔』……『依頼先』という単語です。今は文字の形でなんとなく覚えてください」
「はいっ! えっと、この広場とあの尖塔が……」
この世界の文字はアルファベットっぽいやつ。
だからとりあえずで単語の綴りを形として覚えちゃえば――漢字みたいに形として覚えたら、読んだり書いたりできなくても仕事はできるはず。
ルーシーくん、要らない子扱いされてたのに頭は良いっぽいし、たぶんその程度なら覚えられるだろうっていう判断。
僕は前世であっちこっち行ったらしく、地図を見たり町を見ただけである程度方向感覚が分かり、かつ今世の記憶力で1回見たら覚えて地理感覚が分かるっぽい。
だからルーシーくんの修行として――地図をくるくる回してるのがほほえましいね――地図の読み方を学習させつつ。
――ジュリオン様は夏場の終わりごろに地面に落ちたセミくらいに……運命的にか弱い存在だ。
したがって、将来の死亡フラグに繋がりそうなものはことごとく摘み取らないと不安で眠れない。
……さっきのおじさん。
ギルドハウスの目の前なのに、貴族の横暴に怯えていた――つまり、どこぞの貴族がこの町で――僕の屋敷から歩ける距離で、幅を利かせてぶいぶい言わせているのはほぼ確実。
さっき、そこまでは聞き出せなかったけども――放置はできない。
――僕は、悪役のジュリオン様に生まれ変わった存在。
そんな僕が巨悪だとすると、その貴族とかは雑魚だろう。
爵位的にも――辺境伯の侯爵家と同等以上の存在はそうそう居ないんだ。
――それを知っていながらおいたをしている貴族さんには、お仕置き、しないとね?
「ひぃっ!?」
「……ああごめんなさい、羽虫が気になって」
「そ、そうですかぁ……こわかったぁ……」
……むぅ、さすがはジュリオン様、怒気だけで魔力とかがにじみ出たか。
とにかく今は情報収集を兼ねてルーシーくんの育成をしつつ、僕自身も町に馴染んでいこう。
悪役による悪者退治は、その後で……ね。
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