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3章 女装して捨て子を堕とした
36話 おつかいバイトは歯ごたえがある
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おつかい――もといスキマバイト――もとい――やっぱただのおつかいだこれ。
ともかくおつかい3件目。
「大丈夫かい? ちょっと重いみたいだけど」
「ふんんんん……!」
「はい、私はダンジョンに潜ったことがありますし、この子は農家で――」
――べちゃっ。
「あっ」
八百屋さんからレストランへ、まとめての果物の配達。
「品物にキズは……ないね。そっちの嬢ちゃんの方が安心できる気がするねぇ」
「うぅ……」
「分かりました。この子には、軽いものを持たせます」
……思ったよりも、ダンジョンに潜った恩恵は多かったらしい。
厳密にはエロディーさんでのレベルアップか。
エロディーさん、ありがとう。
僕の身長ほどの背負い籠に果物をたんまり入れても全然重くないよ。
農家の出なルーシーくんがべちゃって潰れる重さなのにね。
まぁ村から町まで歩きづめだった後だからしょうがないとは思うけどね。
「うぅ……ぼく、なんにも……」
「ち、地図を見てくださいルーシー! 道を覚えるのも仕事です! 慣れてきたら私に楽をさせてください! それでチャラです!」
「はいぃ……」
いい子なだけに、お仕事ができないだけで泣いてる。
……そうだね、同い年の女子が軽々と持つ荷物を自分はべちゃっだもんね。
男子の面目が丸つぶれだもんね。
気持ちは分かるよ。
将来的にメス堕ちしそうだけど、僕も男だからね。
◇
5件目。
「だ、大丈夫でしょうか……私たち、後でお貴族様に呼ばれて処刑とか……」
「しませんから大丈夫ですよ。なんならギルドに頼んでしたためてもらいましょうか?」
ドブさらい。
うん、口で息をしないとえずくレベルの臭さ。
でも、こういうのも立派な仕事なんだ。
むしろこういうのを知らないと、本当の意味でこの町を知ったことにはならない。
「こ、肥だめ……よりはマシだけど……」
と――農家でこういうのにも慣れてるはずのルーシーくんが、明らかに嫌そうな顔をしている。
分かるよ、だって臭いもん。
しかも、量が量だからね。
「ルーシー、それなら受け取る仕事の方をしてください。ぼ――私がドブに入りますので」
この世界にはゴムっぽいのがあるらしい。
だから渡された、でっかすぎる大人用の長靴で――遠慮なく、排水口にじゃぶん。
「あっ……」
彼も、短パンが丸ごと収まるサイズのを履いてはいるけども、やっぱり嫌だよね。
これもボロだから、穴が開いて足ににゅるにゅると……ってのもありえるし。
「私――僕が汚物をすくいますから、タライに移してください」
「え、で、でも、依頼の内容は……」
「……? ……ああ、依頼を受けた以上、たとえ虚偽のそれであっても達成するのが冒険者の流儀。……鼻が曲がるのは諦め、さっさと袖をまくって手伝いなさい」
ちらりと依頼人の人たち――普通の、ごく普通の町の人たち。
どこにでも居るようなおばちゃんたちが、そっと目を逸らす。
下水道ってのは――排水口とか用水路とかマンホール付近は、とかく詰まりがち。
そういうのを、汚さと臭さに耐えながらもきれいきれいにするのが、僕たちの請け負った仕事だ。
――つまりは町の責任、ひいてはこの町を収めるデュクロワ家の次男たる僕の責任でもあるんだ。
こんなのを――見るからに排水口のフタ10個分くらいの沼と化した「排水」口を。
「『家の中の排水』が詰まったから数百円で直して」ってウソついた依頼でも――受けた以上は、僕たちの責任だ。
まぁ「騙して悪いが」的な悪意のあるやつじゃないし、ダンジョンとかモンスター関係で嘘つかれて命の危険があるわけでもない。
ただただ、割に合わないだけだ。
後でギルドに告げ口すれば、もうちょっともらえるかもな詐欺具合だし。
――それでも。
いや、だからこそ――僕にとっては、価値がある。
少なくとも、今回依頼をした人たちは僕に対して――明らかに貴族っぽい僕に罪悪感を抱くはず。
それなのに、嘘を許して嫌な仕事をしてもらった。
こういうものの積み重ねは、反乱とか革命とか暴動とかのリスクをごくわずかでも着実に下げていくはず。
何十回も周回して1回もジュリオン様不在のパターンを僕は経験しなかったけども、プレイヤーたちによると確実に存在するものなんだ。
そのレア過ぎる、けども僕が10年後を迎えるまでに死ぬ可能性は、こういう下積みで取り除いていくんだ。
……巻き添えなルーシーくんにはごめんだけどね。
「……ルーシー、嫌なら」
ぶんぶんっ。
意を決した顔をして――ゆっくりと、足先を沈めていく彼。
「だ、だいじょ……けほっ、おえっ」
「……とりあえず、口で息をなさい。多少は楽になります」
まぁ口で息してもむせるんだけどね。
けども、たとえどんだけ臭くっても、がんばらないと。
大丈夫大丈夫、エミリーちゃんのアレよりはずっとずっとマシだから。
あのダイレクトアタックは、心臓が止まるくらいに冷たくて臭かったんだから。
「……ご令嬢……だよな」
「ああ、ギルドにも何人か居るのを見たことが……」
「嫌な顔、ひとつせずに……」
「白髪の……どこの家かは分からないが、よく平気な顔で」
「子供だからというのもあるんだろうが……」
「近頃悪さしてるお貴族様のせいで、みんな嫌なやつだと思っていたが……」
ジュリオン様イヤーは地獄耳。
臭くないところまで離れたところで、ひそひそと――気がつけば近所の人も集まって僕たちを眺めている。
よしよし、臭いだけの価値はあるね。
さすがに銀髪じゃなくなったからそこまでではないにしても、この世界ではやっぱり、貴族の血は見ただけで分かるもの。
――だからこそ、これは報酬自体は現在地球換算で数百円でも、実際には命の対価としては計り知れないんだ。
どっかの貴族の令嬢らしい冒険者ユリアとしての名声も上がるし、将来的に女装をバラした後も一定数の人は悪名高くなるだろうジュリオン――僕へのヘイトも、少しは下がったままになる。
少なくとも「女装とかして最低の領主だけど、人としては悪い人じゃない」ってね。
「うっ……くさい……家に居たときよりもくさい……」
――なんかモブ子ズよりもかわいそうなことになってるルーシーくんが煤けている。
ごめんね……でも孤児になったら臭いが分からなくなるくらいの生活になってたはずだから……ね?
ともかくおつかい3件目。
「大丈夫かい? ちょっと重いみたいだけど」
「ふんんんん……!」
「はい、私はダンジョンに潜ったことがありますし、この子は農家で――」
――べちゃっ。
「あっ」
八百屋さんからレストランへ、まとめての果物の配達。
「品物にキズは……ないね。そっちの嬢ちゃんの方が安心できる気がするねぇ」
「うぅ……」
「分かりました。この子には、軽いものを持たせます」
……思ったよりも、ダンジョンに潜った恩恵は多かったらしい。
厳密にはエロディーさんでのレベルアップか。
エロディーさん、ありがとう。
僕の身長ほどの背負い籠に果物をたんまり入れても全然重くないよ。
農家の出なルーシーくんがべちゃって潰れる重さなのにね。
まぁ村から町まで歩きづめだった後だからしょうがないとは思うけどね。
「うぅ……ぼく、なんにも……」
「ち、地図を見てくださいルーシー! 道を覚えるのも仕事です! 慣れてきたら私に楽をさせてください! それでチャラです!」
「はいぃ……」
いい子なだけに、お仕事ができないだけで泣いてる。
……そうだね、同い年の女子が軽々と持つ荷物を自分はべちゃっだもんね。
男子の面目が丸つぶれだもんね。
気持ちは分かるよ。
将来的にメス堕ちしそうだけど、僕も男だからね。
◇
5件目。
「だ、大丈夫でしょうか……私たち、後でお貴族様に呼ばれて処刑とか……」
「しませんから大丈夫ですよ。なんならギルドに頼んでしたためてもらいましょうか?」
ドブさらい。
うん、口で息をしないとえずくレベルの臭さ。
でも、こういうのも立派な仕事なんだ。
むしろこういうのを知らないと、本当の意味でこの町を知ったことにはならない。
「こ、肥だめ……よりはマシだけど……」
と――農家でこういうのにも慣れてるはずのルーシーくんが、明らかに嫌そうな顔をしている。
分かるよ、だって臭いもん。
しかも、量が量だからね。
「ルーシー、それなら受け取る仕事の方をしてください。ぼ――私がドブに入りますので」
この世界にはゴムっぽいのがあるらしい。
だから渡された、でっかすぎる大人用の長靴で――遠慮なく、排水口にじゃぶん。
「あっ……」
彼も、短パンが丸ごと収まるサイズのを履いてはいるけども、やっぱり嫌だよね。
これもボロだから、穴が開いて足ににゅるにゅると……ってのもありえるし。
「私――僕が汚物をすくいますから、タライに移してください」
「え、で、でも、依頼の内容は……」
「……? ……ああ、依頼を受けた以上、たとえ虚偽のそれであっても達成するのが冒険者の流儀。……鼻が曲がるのは諦め、さっさと袖をまくって手伝いなさい」
ちらりと依頼人の人たち――普通の、ごく普通の町の人たち。
どこにでも居るようなおばちゃんたちが、そっと目を逸らす。
下水道ってのは――排水口とか用水路とかマンホール付近は、とかく詰まりがち。
そういうのを、汚さと臭さに耐えながらもきれいきれいにするのが、僕たちの請け負った仕事だ。
――つまりは町の責任、ひいてはこの町を収めるデュクロワ家の次男たる僕の責任でもあるんだ。
こんなのを――見るからに排水口のフタ10個分くらいの沼と化した「排水」口を。
「『家の中の排水』が詰まったから数百円で直して」ってウソついた依頼でも――受けた以上は、僕たちの責任だ。
まぁ「騙して悪いが」的な悪意のあるやつじゃないし、ダンジョンとかモンスター関係で嘘つかれて命の危険があるわけでもない。
ただただ、割に合わないだけだ。
後でギルドに告げ口すれば、もうちょっともらえるかもな詐欺具合だし。
――それでも。
いや、だからこそ――僕にとっては、価値がある。
少なくとも、今回依頼をした人たちは僕に対して――明らかに貴族っぽい僕に罪悪感を抱くはず。
それなのに、嘘を許して嫌な仕事をしてもらった。
こういうものの積み重ねは、反乱とか革命とか暴動とかのリスクをごくわずかでも着実に下げていくはず。
何十回も周回して1回もジュリオン様不在のパターンを僕は経験しなかったけども、プレイヤーたちによると確実に存在するものなんだ。
そのレア過ぎる、けども僕が10年後を迎えるまでに死ぬ可能性は、こういう下積みで取り除いていくんだ。
……巻き添えなルーシーくんにはごめんだけどね。
「……ルーシー、嫌なら」
ぶんぶんっ。
意を決した顔をして――ゆっくりと、足先を沈めていく彼。
「だ、だいじょ……けほっ、おえっ」
「……とりあえず、口で息をなさい。多少は楽になります」
まぁ口で息してもむせるんだけどね。
けども、たとえどんだけ臭くっても、がんばらないと。
大丈夫大丈夫、エミリーちゃんのアレよりはずっとずっとマシだから。
あのダイレクトアタックは、心臓が止まるくらいに冷たくて臭かったんだから。
「……ご令嬢……だよな」
「ああ、ギルドにも何人か居るのを見たことが……」
「嫌な顔、ひとつせずに……」
「白髪の……どこの家かは分からないが、よく平気な顔で」
「子供だからというのもあるんだろうが……」
「近頃悪さしてるお貴族様のせいで、みんな嫌なやつだと思っていたが……」
ジュリオン様イヤーは地獄耳。
臭くないところまで離れたところで、ひそひそと――気がつけば近所の人も集まって僕たちを眺めている。
よしよし、臭いだけの価値はあるね。
さすがに銀髪じゃなくなったからそこまでではないにしても、この世界ではやっぱり、貴族の血は見ただけで分かるもの。
――だからこそ、これは報酬自体は現在地球換算で数百円でも、実際には命の対価としては計り知れないんだ。
どっかの貴族の令嬢らしい冒険者ユリアとしての名声も上がるし、将来的に女装をバラした後も一定数の人は悪名高くなるだろうジュリオン――僕へのヘイトも、少しは下がったままになる。
少なくとも「女装とかして最低の領主だけど、人としては悪い人じゃない」ってね。
「うっ……くさい……家に居たときよりもくさい……」
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ごめんね……でも孤児になったら臭いが分からなくなるくらいの生活になってたはずだから……ね?
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