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3章 女装して捨て子を堕とした
38話 ルーシーくんとデイジーさん
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「……ということで、初日の実入りは現代換算で3000円。現物支給と食事を含めると余裕で1万を超えるので、大戦果ですね」
「現代……? えん……?」
1日中歩き回った疲労感が心地よい。
ああ、労働のすがすがしさ。
こういうのって学校とか会社で押しつけられたタスクを必死にクリアしても感じられるけども、なんとなくおもしろそうな単発のバイトとかボランティアとか、ぶらりと半日旅行に行ったり数日かけて行った先で歩き回っても感じられるよね。
たぶん、これが「楽しい」って感覚なんだ。
今日の僕は、新鮮なことばかりを経験した。
前世の僕からすると完全な異世界の町を冒険者として探検して回り、おつかいイベントを疲れるまで繰り返して。
今世のジュリオン様を受け継いだ僕からすると、屋敷の中だけで完結し――特に母さんが死んじゃったって聞いてからは完全に暴走してっていうか5歳児じゃしょうがないんだけども、とにかく視野狭窄に陥って周りがなんにも見えてなかったんだってね。
まぁしょうがない、実の母親が――男だとしても、いや、男はすべからくマザコンであり、成人しちゃえばもう泣き言を言える相手が居なくなるんだ、母親っていうのは男だからこそ必要な存在。
それが父親とかにも理由がある死に方をして、そのまま放置されたんだ。
いじけない方がおかしいもんな。
ジュリオン様。
君は――僕だけども――きっと君なりに、がんばったんだよ。
どうかエミリーちゃんにハートをキャッチされて天国に行ってね。
さて、そんなわけで僕はぶっちゃけ3日目の今日で、町に出てきた目的はほぼ達成できたと言っても良い。
必要な情報を取得し、必要な身分と顔合わせは済ませ、いざ暗殺されそうになったり追放されても平民として生きていけるためのきっかけはばっちり。
……7歳児の、しかも転生から目覚めて3日でするボリュームじゃなかったけども、それだけジュリオン様はとにかく死にやすいしメス堕ちしやすいんだ。
「さて、それでは……はい、ルーシー」
「ありがとうございます! ……え。こ、こんなに……?」
「? はい、僕は暗算できますので、きっかり等分ですよ?」
受付嬢さんから受け取った、さっきのお金を――コインとお札の半分を両手に乗せられた彼は、僕を見てお金を見て、僕を見て受付嬢さんを見て――僕を見てお金を見ている。
「……あ、あのっ! ぼ、ぼく、こんなに受け取れません!」
「いえ、ですがパーティーというものは、基本的に報酬は等分――ですよね? デイジー様」
「え、違いますけど」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
僕たちの三重奏はしょぼかった。
「……え、ええと。パーティーにもよりますが、基本的にはリーダーの方、あるいはその日の戦闘で最も貢献の大きかった方が多く分配していますね」
「……それって、いわゆる荷物持ちとか補助魔法専門とか斥候専門とかが割を食うんじゃ?」
「良くご存じですね、さすユリ!」
「サスユリ?」
まーた謎のユリの名前が出てきた。
「い、いえ! とにかく、それでトラブルになったりすることも多いのですが、なにしろ冒険者というものは基本的に命のやりとりですから!」
「ああ、リスク――命の危険を冒したものから順に、金が配られると。人間関係的に序列が高かったり、単純に力や精神的な威圧が得意なオラオラ系が幅を利かせていると」
つまりは田舎のヤンキー理論。
なまじ腕っ節で決まる世界観だからなぁ……なおそこをダイレクトにぶち壊すのが魔法の素養で、つまりは貴族階級なんだけどね。
「……ユリア様? その見た目で、実は学園に入るお歳だったりします……?」
デイジーさんの――ゆるいブロンドの髪から透ける、蒼い目が僕を見透かしてきている。
お化粧をしているからか、たぶんまだ高校生くらいの年齢だけどもぱっと見でおしゃれな大学生くらいな彼女が――僕の頭をのぞき見してきている感覚がして、心臓がきゅっとなる。
いや、今のはびっくりした。
本当にびっくりした。
……実際、今の僕は成人年齢社会人経験有な前世の自我inジュリオン様7歳だもんね。
なるほど、これは大人相手だと適度にエミリーちゃんもとい子供っぽく振る舞わないと、これもこれで魔族疑惑が出てきちゃうなぁ……。
「……と、とにかく。なるほど、冒険者のあいだではパーティーの中での仕事に応じて報酬を分ける仕組みと」
「! はい、ですからぼくのお金は――――――」
「――ですが、ルーシー。今朝、言ってしまいましたよね? 『なんでもする』と」
「あっ」
けども、これだけは譲れないラインなんだ。
「何度も持ち出すのは悪いので、今日1日限りにしますが――これを他人にしてしまいますと。何日どころか何年、何十年と持ち出されて不利益を――損をすることになりますよ。ですよね? デイジー様」
「……はい。これについては、ユリア様の言う通りですよ、ルーシーさん」
「………………………………」
ぎゅっと口を結んで下を向く、彼。
「……先ほどの話ですが。冒険者というのは完全に実力主義――という側面もありますが、それ以上に人間関係も重要なんです。あなたのように素直過ぎる人は――特に子供だと、完全なカモ。最低限の分け前しか渡されずに、何年もこき使われている人は……残念ながら、何人も見かけています」
「………………………………」
「それをユリア様が心配されたのは、私も分かるんです。……警戒心のない、純粋な良い人は、個人的には好きです。ですけど……この世界は、優しくはありません。そして――私たち受付と冒険者という関係では、そうした、真面目なのに不真面目な人に巻き上げられている人を守ることは――できないんです」
「明らかな暴力とがないと……でしょうか」
「教会での治癒魔法がありますので、それこそひと目で致命傷まで行きませんと、私たちに止める権限は」
「分かりました。覚えておきます」
――うん。
デイジーさんは、やっぱり良い人だ。
この人なら、今後もルーシーくんのことを気に留めておいてくれるだろう。
それだけでも、今日の報酬としては破格。
たまたまではあっても、お世話を焼いちゃった捨て子の彼が――良い人に心配してもらえるっていうのは、お金では買えない報酬だもんね。
とりあえずであと――7日はここに通うんだし、デイジーさんにもお礼はしないとなぁ。
「現代……? えん……?」
1日中歩き回った疲労感が心地よい。
ああ、労働のすがすがしさ。
こういうのって学校とか会社で押しつけられたタスクを必死にクリアしても感じられるけども、なんとなくおもしろそうな単発のバイトとかボランティアとか、ぶらりと半日旅行に行ったり数日かけて行った先で歩き回っても感じられるよね。
たぶん、これが「楽しい」って感覚なんだ。
今日の僕は、新鮮なことばかりを経験した。
前世の僕からすると完全な異世界の町を冒険者として探検して回り、おつかいイベントを疲れるまで繰り返して。
今世のジュリオン様を受け継いだ僕からすると、屋敷の中だけで完結し――特に母さんが死んじゃったって聞いてからは完全に暴走してっていうか5歳児じゃしょうがないんだけども、とにかく視野狭窄に陥って周りがなんにも見えてなかったんだってね。
まぁしょうがない、実の母親が――男だとしても、いや、男はすべからくマザコンであり、成人しちゃえばもう泣き言を言える相手が居なくなるんだ、母親っていうのは男だからこそ必要な存在。
それが父親とかにも理由がある死に方をして、そのまま放置されたんだ。
いじけない方がおかしいもんな。
ジュリオン様。
君は――僕だけども――きっと君なりに、がんばったんだよ。
どうかエミリーちゃんにハートをキャッチされて天国に行ってね。
さて、そんなわけで僕はぶっちゃけ3日目の今日で、町に出てきた目的はほぼ達成できたと言っても良い。
必要な情報を取得し、必要な身分と顔合わせは済ませ、いざ暗殺されそうになったり追放されても平民として生きていけるためのきっかけはばっちり。
……7歳児の、しかも転生から目覚めて3日でするボリュームじゃなかったけども、それだけジュリオン様はとにかく死にやすいしメス堕ちしやすいんだ。
「さて、それでは……はい、ルーシー」
「ありがとうございます! ……え。こ、こんなに……?」
「? はい、僕は暗算できますので、きっかり等分ですよ?」
受付嬢さんから受け取った、さっきのお金を――コインとお札の半分を両手に乗せられた彼は、僕を見てお金を見て、僕を見て受付嬢さんを見て――僕を見てお金を見ている。
「……あ、あのっ! ぼ、ぼく、こんなに受け取れません!」
「いえ、ですがパーティーというものは、基本的に報酬は等分――ですよね? デイジー様」
「え、違いますけど」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
僕たちの三重奏はしょぼかった。
「……え、ええと。パーティーにもよりますが、基本的にはリーダーの方、あるいはその日の戦闘で最も貢献の大きかった方が多く分配していますね」
「……それって、いわゆる荷物持ちとか補助魔法専門とか斥候専門とかが割を食うんじゃ?」
「良くご存じですね、さすユリ!」
「サスユリ?」
まーた謎のユリの名前が出てきた。
「い、いえ! とにかく、それでトラブルになったりすることも多いのですが、なにしろ冒険者というものは基本的に命のやりとりですから!」
「ああ、リスク――命の危険を冒したものから順に、金が配られると。人間関係的に序列が高かったり、単純に力や精神的な威圧が得意なオラオラ系が幅を利かせていると」
つまりは田舎のヤンキー理論。
なまじ腕っ節で決まる世界観だからなぁ……なおそこをダイレクトにぶち壊すのが魔法の素養で、つまりは貴族階級なんだけどね。
「……ユリア様? その見た目で、実は学園に入るお歳だったりします……?」
デイジーさんの――ゆるいブロンドの髪から透ける、蒼い目が僕を見透かしてきている。
お化粧をしているからか、たぶんまだ高校生くらいの年齢だけどもぱっと見でおしゃれな大学生くらいな彼女が――僕の頭をのぞき見してきている感覚がして、心臓がきゅっとなる。
いや、今のはびっくりした。
本当にびっくりした。
……実際、今の僕は成人年齢社会人経験有な前世の自我inジュリオン様7歳だもんね。
なるほど、これは大人相手だと適度にエミリーちゃんもとい子供っぽく振る舞わないと、これもこれで魔族疑惑が出てきちゃうなぁ……。
「……と、とにかく。なるほど、冒険者のあいだではパーティーの中での仕事に応じて報酬を分ける仕組みと」
「! はい、ですからぼくのお金は――――――」
「――ですが、ルーシー。今朝、言ってしまいましたよね? 『なんでもする』と」
「あっ」
けども、これだけは譲れないラインなんだ。
「何度も持ち出すのは悪いので、今日1日限りにしますが――これを他人にしてしまいますと。何日どころか何年、何十年と持ち出されて不利益を――損をすることになりますよ。ですよね? デイジー様」
「……はい。これについては、ユリア様の言う通りですよ、ルーシーさん」
「………………………………」
ぎゅっと口を結んで下を向く、彼。
「……先ほどの話ですが。冒険者というのは完全に実力主義――という側面もありますが、それ以上に人間関係も重要なんです。あなたのように素直過ぎる人は――特に子供だと、完全なカモ。最低限の分け前しか渡されずに、何年もこき使われている人は……残念ながら、何人も見かけています」
「………………………………」
「それをユリア様が心配されたのは、私も分かるんです。……警戒心のない、純粋な良い人は、個人的には好きです。ですけど……この世界は、優しくはありません。そして――私たち受付と冒険者という関係では、そうした、真面目なのに不真面目な人に巻き上げられている人を守ることは――できないんです」
「明らかな暴力とがないと……でしょうか」
「教会での治癒魔法がありますので、それこそひと目で致命傷まで行きませんと、私たちに止める権限は」
「分かりました。覚えておきます」
――うん。
デイジーさんは、やっぱり良い人だ。
この人なら、今後もルーシーくんのことを気に留めておいてくれるだろう。
それだけでも、今日の報酬としては破格。
たまたまではあっても、お世話を焼いちゃった捨て子の彼が――良い人に心配してもらえるっていうのは、お金では買えない報酬だもんね。
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