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3章 女装して捨て子を堕とした
45話 できそこないだったからすてられたぼく(by ■■■■)
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「はぁ……はぁ……」
「おい、またお前はこんな朝っぱらからへたり込んでるのか」
「お前の兄や姉は、その歳なら少なくとも日が傾き始めるまでは真面目にやっていたっていうのに」
「しょうがないよ父さん母さん、こいつは『できそこない』なんだからさ」
「そうよ母さん、私、気分悪くなるからこんなのほっときましょ」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ぼくは、生まれつき体が弱かった。
冬になると毎年、何日か起きることもできなくなって、だから家族のみんながたくさん作ってる「ないしょく」を、ぼくは1個も――手先もぶきようだから、できなくって。
畑に出ても、おにいちゃんやおねえちゃんならもうとっくに一人前にやれてたっていう耕す作業も、ほんの少しで息が切れちゃって、座り込んじゃって。
つい最近までは、こうなるたびに「ごくつぶし」「なまけてるんじゃない」ってお父さんとお母さんが――特にケンカしてて機嫌が悪いときは、引っ張り上げられて叩かれて。
そうでなくっても「ぐず」とか「のろま」とか、上のおにいちゃんとかおねえちゃんたちに言われて叩かれて、ごはんとか取られたりして。
しょうがないよ、だってぼくは「できそこない」。
きょうだいの――ううん、村の子供の誰よりも力がなくって、いちばん早くに座り込んじゃって――体も、誰よりも小さくって。
みんなの誰とも違うから、笑われるしからかわれるしいじめられるんだ。
男なはずなのにおしっこ出すところが短すぎて笑われるし、「お前にはタマもねぇんだな!」って笑われるように――みんなにはあるものが、ぼくにはない。
いや、あるんだけどもすっごく小さいんだ。
だから、ぼくは男としては「できそこない」。
それに、気がついたらおしりの近くに裂け目が――歳が近いおねえちゃんのおまたみたいになってて。
でも、これを言ったらもっといじめられそうだから……ぼくのことをこっそり守ってくれたり、ごはんを取られたときはこっそり分けてくれる下のおにいちゃんとおねえちゃんにも気持ち悪がられるから、だまってた。
◇
「あんた、どうするのこれ……」
「畜生……これだから外のやつらは!」
「っ……!」
がしゃんっ。
機嫌がものすごく悪いお父さんが、農作業の道具を蹴り飛ばす。
「どうしたんだよ父さん」
「どうもこうもあるか! あれを見ろ!」
お父さんが――ぼくたちの家族だけじゃなくって、村の人たちが集まる「その場所」を乱暴に指差す。
「――俺の畑が! 爺ちゃんの時から大切にしてきた畑が! どこぞのお貴族様か冒険者の流れ弾かは知らねぇが、ごっそり持ってかれてんだよ! どうすんだよ、これ!!」
夕日の差し込む、ぼくたちの畑。
その何分の1が――ああ、確かあのあたりは「あんたができそこないじゃなきゃ任せて楽ができたのにねぇ」ってお母さんに言われた場所だ――大きく、ぼくの背の高さよりも深くえぐれている。
「ちょうど出稼ぎから帰ってきたやつによると、この魔法の跡は街道の先まで続いてるらしいぜ」
「運が悪いよなぁ……削れたのはこの家のだけなのが幸いか」
「なぁ、村の家で少しずつ農地分けてやるから――」
よく分からないけど、どうやらなんとかなるらしい。
けど、
「……口減らしするしか、ねぇ」
お父さんが――怖い顔で、ぼくを見てきた。
「なぁ――できそこない。お前はもともと産ませるつもりじゃなかったんだ。なのにうっかりできちまって、産まれてからほったらかしにしても死ななかった。だから俺の酒代もめっきり少なくなった、疫病神なんだよ」
「ちょっと、お父さん……!」
「待てよ、村のみんなも――」
そんなぼくを――みんなの前で守ったら自分たちがいじめられちゃうのに、末のおねえちゃんと1個上のおにいちゃんが、守ってくれようとする。
「……そうだな。こんな災いが起きたのも、『できそこない』が居たからかも」
「ああ……うちの子も言ってたぞ、そいつはタマ無し――子供も作れないって」
「男なのに男じゃないんでしょ? ……気持ち悪い」
村の人たちも、怖い顔をしてきている。
――ああ。
ぼくは、理解した。
去年も。
去年も、みんな不作でお腹が空いてて――こうしてみんなで集まったときに、別の家のお兄さんが追い出されていた。
……後で聞いたけど、昔はもっと怖かったんだって。
かみさまに――村のしんぷさまが言ってるかみさまじゃなくって、古くから居るかみさまに、捧げてたんだって。
かみさまに食べてもらうために、みんなで――って。
けど。
そんな怖いことは、ぼくが産まれたころ、おひめさまがここのりょうしゅさまのところに来たときから禁止されたんだって。
だから、追い出されるだけで済むんだって。
……だから。
「……いいよ。ぼく、村を出るよ。そうすれば、もうちょっとみんなが食べられるから」
そうしてぼくは、ふらふらの体で――どうせぼくの持ち物なんてなんにもなかったから、そのまま村の入り口からひとりぼっちで、真っ暗になってきてる街道へと歩いていった。
優しいおにいちゃんとおねえちゃん、それに、ときどき「かわいそうだから」ってごはんとか分けてくれてた村の人が持たせてくれた、地図に一切れのパンだけを抱えて。
◇
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「おい、またお前はこんな朝っぱらからへたり込んでるのか」
「お前の兄や姉は、その歳なら少なくとも日が傾き始めるまでは真面目にやっていたっていうのに」
「しょうがないよ父さん母さん、こいつは『できそこない』なんだからさ」
「そうよ母さん、私、気分悪くなるからこんなのほっときましょ」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ぼくは、生まれつき体が弱かった。
冬になると毎年、何日か起きることもできなくなって、だから家族のみんながたくさん作ってる「ないしょく」を、ぼくは1個も――手先もぶきようだから、できなくって。
畑に出ても、おにいちゃんやおねえちゃんならもうとっくに一人前にやれてたっていう耕す作業も、ほんの少しで息が切れちゃって、座り込んじゃって。
つい最近までは、こうなるたびに「ごくつぶし」「なまけてるんじゃない」ってお父さんとお母さんが――特にケンカしてて機嫌が悪いときは、引っ張り上げられて叩かれて。
そうでなくっても「ぐず」とか「のろま」とか、上のおにいちゃんとかおねえちゃんたちに言われて叩かれて、ごはんとか取られたりして。
しょうがないよ、だってぼくは「できそこない」。
きょうだいの――ううん、村の子供の誰よりも力がなくって、いちばん早くに座り込んじゃって――体も、誰よりも小さくって。
みんなの誰とも違うから、笑われるしからかわれるしいじめられるんだ。
男なはずなのにおしっこ出すところが短すぎて笑われるし、「お前にはタマもねぇんだな!」って笑われるように――みんなにはあるものが、ぼくにはない。
いや、あるんだけどもすっごく小さいんだ。
だから、ぼくは男としては「できそこない」。
それに、気がついたらおしりの近くに裂け目が――歳が近いおねえちゃんのおまたみたいになってて。
でも、これを言ったらもっといじめられそうだから……ぼくのことをこっそり守ってくれたり、ごはんを取られたときはこっそり分けてくれる下のおにいちゃんとおねえちゃんにも気持ち悪がられるから、だまってた。
◇
「あんた、どうするのこれ……」
「畜生……これだから外のやつらは!」
「っ……!」
がしゃんっ。
機嫌がものすごく悪いお父さんが、農作業の道具を蹴り飛ばす。
「どうしたんだよ父さん」
「どうもこうもあるか! あれを見ろ!」
お父さんが――ぼくたちの家族だけじゃなくって、村の人たちが集まる「その場所」を乱暴に指差す。
「――俺の畑が! 爺ちゃんの時から大切にしてきた畑が! どこぞのお貴族様か冒険者の流れ弾かは知らねぇが、ごっそり持ってかれてんだよ! どうすんだよ、これ!!」
夕日の差し込む、ぼくたちの畑。
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「ちょうど出稼ぎから帰ってきたやつによると、この魔法の跡は街道の先まで続いてるらしいぜ」
「運が悪いよなぁ……削れたのはこの家のだけなのが幸いか」
「なぁ、村の家で少しずつ農地分けてやるから――」
よく分からないけど、どうやらなんとかなるらしい。
けど、
「……口減らしするしか、ねぇ」
お父さんが――怖い顔で、ぼくを見てきた。
「なぁ――できそこない。お前はもともと産ませるつもりじゃなかったんだ。なのにうっかりできちまって、産まれてからほったらかしにしても死ななかった。だから俺の酒代もめっきり少なくなった、疫病神なんだよ」
「ちょっと、お父さん……!」
「待てよ、村のみんなも――」
そんなぼくを――みんなの前で守ったら自分たちがいじめられちゃうのに、末のおねえちゃんと1個上のおにいちゃんが、守ってくれようとする。
「……そうだな。こんな災いが起きたのも、『できそこない』が居たからかも」
「ああ……うちの子も言ってたぞ、そいつはタマ無し――子供も作れないって」
「男なのに男じゃないんでしょ? ……気持ち悪い」
村の人たちも、怖い顔をしてきている。
――ああ。
ぼくは、理解した。
去年も。
去年も、みんな不作でお腹が空いてて――こうしてみんなで集まったときに、別の家のお兄さんが追い出されていた。
……後で聞いたけど、昔はもっと怖かったんだって。
かみさまに――村のしんぷさまが言ってるかみさまじゃなくって、古くから居るかみさまに、捧げてたんだって。
かみさまに食べてもらうために、みんなで――って。
けど。
そんな怖いことは、ぼくが産まれたころ、おひめさまがここのりょうしゅさまのところに来たときから禁止されたんだって。
だから、追い出されるだけで済むんだって。
……だから。
「……いいよ。ぼく、村を出るよ。そうすれば、もうちょっとみんなが食べられるから」
そうしてぼくは、ふらふらの体で――どうせぼくの持ち物なんてなんにもなかったから、そのまま村の入り口からひとりぼっちで、真っ暗になってきてる街道へと歩いていった。
優しいおにいちゃんとおねえちゃん、それに、ときどき「かわいそうだから」ってごはんとか分けてくれてた村の人が持たせてくれた、地図に一切れのパンだけを抱えて。
◇
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