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3章 女装して捨て子を堕とした
47話 ユリアさまはお姫さまで――お母さん(byルーシー)
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……この人は――ユリアさまは、やっぱりお姫さまだ……!
間違いない、吟遊詩人の人が歌ってた「灰被りのアクヤクレイジョウ」に出てくるお姫さまだ。
暗がりでもまぶしく光る銀色の髪の毛――前髪に紫が入ってたりするし、歌とは違って幼いし髪の毛は短めだし、なぜか路地裏で砂をかぶっちゃったけども、赤い目も優しいところも、なにもかもがお姫さまと同じ。
そうだ、名前がそうだったんだ。
だって、美しすぎるから女の人に嫌われて「灰被り」したのが――って、最初の方で歌われてたもん。
その歌が好きすぎて毎晩思い出してたから、ぼくが毎晩のように夢に見てたお姫さま――その幼いころって感じなんだ。
そうだ、きっとあの歌はこれから先のユリアさまを予言してるんだ。
ぼくはできそこないの男だけど、お兄ちゃんたちが揃って憧れてた「勇者」さまじゃなくって、お姉ちゃんたちが憧れてた「お姫さま」の方が好きだったんだもん。
そんなユリアさまは、ぼくが冒険者ギルドのお使いをできるようになるまで、何日も一緒に居てくれるって言ってくれた。
何日も前に村で畑を耕してそのままの、汚いはずのぼくの手を引いてくれた。
身に付けてた防具――ダンジョンで拾ったからって、知り合ったばかりの僕に分け与えてくれて。
知ったかぶりはダメ――村だったらそうしないとひっぱたかれたけど、町じゃ逆で、すると怒られるらしい――ううん、ぼくが損するだけだって教えてもらって。
地図の読み方を、書いてある文字を、一緒に歩きながら教えてもらって。
何回聞いても怒らないって優しく言ってくれて、覚えるまで本当に怒らなくって。
果物を持って歩いたり、用事を伝えるために町の端から端まで歩いたり。
――お姫さまなのに嫌な顔もしないで、ぼくですら臭くて嫌だった汚いところに、自分から入ってドブさらいをしたり。
お店の前に立ってお客さんを呼んだり、お野菜を運んだ先でごはんをもらったり。
書いてあることと違う依頼でも、困った顔をしながら全部やり切って。
全部全部、全部。
ぼくが生まれて1回もやったことも見たこともないことばっかりで、だから疲れてへとへとでもお口がにまにましていくらでも動けちゃって。
終わりには、村でも居た「あの人はえっちだから、お前でも近づくな」ってお父さんに言われてた人みたいなのが近づいてきたのを――大人の男の人を、気がついたら地面に押しつけていて、かっこよくって。
やっぱり。
やっぱり、あの歌のお姫さま――最後には魔王軍をやっつけたけど神さまのところに行っちゃった、あのお姫さまなんだ。
あれはいつのことなんだろう。
ぼくが産まれたころ?
それとも何年後?
ううん、歳はぼくとおなじくらいみたいだし、ひょっとしたら生まれ変わりかも。
きっとそうだ、町から帰ってきた村の人とかが言ってたもん、お姫さまが居なくなっちゃったのがぼくが産まれたころなんだって。
だからきっと――灰被りのアクヤクレイジョウなユリアさまは、生まれ変わっては悪いやつを懲らしめる、でもぼくみたいなのにも優しい――素敵なお姫さまなんだ。
◇
お姫さまは心の底までが誰よりも美しくって、誰よりも賢くって――誰よりも優しい。
だから、ぼくがへまばかりしてたのに起こらなかったばかりか、ギルドでもらったお金と食べものを半分もくれるって言ってくれた。
嬉しさと、夜を真っ暗な外で過ごさなくて良くって食べものがあるっていう安心感とで、泣きそうだった。
でも、そこまでしてもらうわけにはいかないから、必死に押し返そうとした。
けど、
「――ですが、ルーシー。今朝、言ってしまいましたよね? 『なんでもする』と」
「あっ」
――お姫さまは、いたずらっぽく笑ってた。
ずるい。
ずるいよ、ユリアさま。
けど、賢くて優しいからなんだって、できそこないのぼくでも分かるから……これ以上は押し返せなくって。
だから、とにかく逃げようとした。
これ以上迷惑かけるわけにはいかないからって。
けど。
「――どこに行くのですか」
彼女は、神さまとか天使さまみたいに優しすぎて。
彼女が泊まってる部屋で、一緒に寝ようって。
けど、それはダメだ。
できそこない扱いされてても、ぼくは男。
だから、今年からお姉ちゃんたちとは一緒に寝ちゃダメだって言われてるんだ。
じゃないと、男だから――その、夜中にお父さんとお母さんがもぞもぞしてるみたいなことを、女の子にしちゃうからって。
こんなぼくでも、そのうちにえっちなことしか頭にない男になっちゃうんだって。
できそこないが産ませた子供なんてできそこないの中のできそこないになるから、そういうことは一生しちゃダメだって。
なのに、
「――くすっ。夜中、僕に何か……するつもりなのですか?」
笑いながら見上げてきたお姫さまに――ぼくは胸から頭から熱くなりすぎて、なんにも考えられなくなって、
「――――――僕と、子を作るようなことをしたいのですか?」
「 」
――――――――気がついたら、すごく良い宿に来ていて。
「じゃ、まずは脱いでください。全部」
「!?」
女の子なお姫さまの前で服を脱げって命令されて。
「……僕に脱がされるのも、見られるのも……嫌?」
――悲しそうな目をされて、頭と胸が凍ったみたいになってるのにぐつぐつしてて。
なんだかおしっこするところとおなかの中とが一緒に熱くなって――「ぼくの体が、どっちが熱くなれば良いのか分からなくなってて」。
女の子に脱げって命令されて、頭がおかしくなりそうになって。
でも、ユリアさまに命令されたらなんでもできるししたくなって。
でもでも、そんなことしたらむずむずのせいでユリアさまにえっちなことをしたくなっちゃうかもしれないって、怖くって。
分かってる。
ユリアさまは、優しいんだ。
まるで、村の友達のお母さんみたいに。
――そうだ、お母さんなんだ。
ユリアさまは、ぼくが夢に見てたお母さんそのものなんだ。
間違いない、吟遊詩人の人が歌ってた「灰被りのアクヤクレイジョウ」に出てくるお姫さまだ。
暗がりでもまぶしく光る銀色の髪の毛――前髪に紫が入ってたりするし、歌とは違って幼いし髪の毛は短めだし、なぜか路地裏で砂をかぶっちゃったけども、赤い目も優しいところも、なにもかもがお姫さまと同じ。
そうだ、名前がそうだったんだ。
だって、美しすぎるから女の人に嫌われて「灰被り」したのが――って、最初の方で歌われてたもん。
その歌が好きすぎて毎晩思い出してたから、ぼくが毎晩のように夢に見てたお姫さま――その幼いころって感じなんだ。
そうだ、きっとあの歌はこれから先のユリアさまを予言してるんだ。
ぼくはできそこないの男だけど、お兄ちゃんたちが揃って憧れてた「勇者」さまじゃなくって、お姉ちゃんたちが憧れてた「お姫さま」の方が好きだったんだもん。
そんなユリアさまは、ぼくが冒険者ギルドのお使いをできるようになるまで、何日も一緒に居てくれるって言ってくれた。
何日も前に村で畑を耕してそのままの、汚いはずのぼくの手を引いてくれた。
身に付けてた防具――ダンジョンで拾ったからって、知り合ったばかりの僕に分け与えてくれて。
知ったかぶりはダメ――村だったらそうしないとひっぱたかれたけど、町じゃ逆で、すると怒られるらしい――ううん、ぼくが損するだけだって教えてもらって。
地図の読み方を、書いてある文字を、一緒に歩きながら教えてもらって。
何回聞いても怒らないって優しく言ってくれて、覚えるまで本当に怒らなくって。
果物を持って歩いたり、用事を伝えるために町の端から端まで歩いたり。
――お姫さまなのに嫌な顔もしないで、ぼくですら臭くて嫌だった汚いところに、自分から入ってドブさらいをしたり。
お店の前に立ってお客さんを呼んだり、お野菜を運んだ先でごはんをもらったり。
書いてあることと違う依頼でも、困った顔をしながら全部やり切って。
全部全部、全部。
ぼくが生まれて1回もやったことも見たこともないことばっかりで、だから疲れてへとへとでもお口がにまにましていくらでも動けちゃって。
終わりには、村でも居た「あの人はえっちだから、お前でも近づくな」ってお父さんに言われてた人みたいなのが近づいてきたのを――大人の男の人を、気がついたら地面に押しつけていて、かっこよくって。
やっぱり。
やっぱり、あの歌のお姫さま――最後には魔王軍をやっつけたけど神さまのところに行っちゃった、あのお姫さまなんだ。
あれはいつのことなんだろう。
ぼくが産まれたころ?
それとも何年後?
ううん、歳はぼくとおなじくらいみたいだし、ひょっとしたら生まれ変わりかも。
きっとそうだ、町から帰ってきた村の人とかが言ってたもん、お姫さまが居なくなっちゃったのがぼくが産まれたころなんだって。
だからきっと――灰被りのアクヤクレイジョウなユリアさまは、生まれ変わっては悪いやつを懲らしめる、でもぼくみたいなのにも優しい――素敵なお姫さまなんだ。
◇
お姫さまは心の底までが誰よりも美しくって、誰よりも賢くって――誰よりも優しい。
だから、ぼくがへまばかりしてたのに起こらなかったばかりか、ギルドでもらったお金と食べものを半分もくれるって言ってくれた。
嬉しさと、夜を真っ暗な外で過ごさなくて良くって食べものがあるっていう安心感とで、泣きそうだった。
でも、そこまでしてもらうわけにはいかないから、必死に押し返そうとした。
けど、
「――ですが、ルーシー。今朝、言ってしまいましたよね? 『なんでもする』と」
「あっ」
――お姫さまは、いたずらっぽく笑ってた。
ずるい。
ずるいよ、ユリアさま。
けど、賢くて優しいからなんだって、できそこないのぼくでも分かるから……これ以上は押し返せなくって。
だから、とにかく逃げようとした。
これ以上迷惑かけるわけにはいかないからって。
けど。
「――どこに行くのですか」
彼女は、神さまとか天使さまみたいに優しすぎて。
彼女が泊まってる部屋で、一緒に寝ようって。
けど、それはダメだ。
できそこない扱いされてても、ぼくは男。
だから、今年からお姉ちゃんたちとは一緒に寝ちゃダメだって言われてるんだ。
じゃないと、男だから――その、夜中にお父さんとお母さんがもぞもぞしてるみたいなことを、女の子にしちゃうからって。
こんなぼくでも、そのうちにえっちなことしか頭にない男になっちゃうんだって。
できそこないが産ませた子供なんてできそこないの中のできそこないになるから、そういうことは一生しちゃダメだって。
なのに、
「――くすっ。夜中、僕に何か……するつもりなのですか?」
笑いながら見上げてきたお姫さまに――ぼくは胸から頭から熱くなりすぎて、なんにも考えられなくなって、
「――――――僕と、子を作るようなことをしたいのですか?」
「 」
――――――――気がついたら、すごく良い宿に来ていて。
「じゃ、まずは脱いでください。全部」
「!?」
女の子なお姫さまの前で服を脱げって命令されて。
「……僕に脱がされるのも、見られるのも……嫌?」
――悲しそうな目をされて、頭と胸が凍ったみたいになってるのにぐつぐつしてて。
なんだかおしっこするところとおなかの中とが一緒に熱くなって――「ぼくの体が、どっちが熱くなれば良いのか分からなくなってて」。
女の子に脱げって命令されて、頭がおかしくなりそうになって。
でも、ユリアさまに命令されたらなんでもできるししたくなって。
でもでも、そんなことしたらむずむずのせいでユリアさまにえっちなことをしたくなっちゃうかもしれないって、怖くって。
分かってる。
ユリアさまは、優しいんだ。
まるで、村の友達のお母さんみたいに。
――そうだ、お母さんなんだ。
ユリアさまは、ぼくが夢に見てたお母さんそのものなんだ。
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