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4章 女装して路地裏から町を堕とした
56話 ムチと輪形陣で行こう
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「ということで、実戦経験のないルーシーに魔法での攻撃をさせるのを、僕たちが護衛する形でダンジョンを攻略したいと思います」
「賛成ですわ」
「賛成ですの」
「昨日あわあわしましたけれど何あのガリガリっぷり! いくら武器を扱えても前には出せませんの!」
結局、あるだけの武器はことごとく使えることが判明したルーシーちゃん。
これは単純にすごいことだ。
だってゲームシステム的には――もちろんここは現実の世界だけども――主人公くんと数人くらいしかありえない仕様だったんだから。
まぁゲームだと限られた人しか登場しなかっただけで、実際にはこうして主人公くんみたいに農民の出で、しかも才能にあふれる人とかもそれなりに居るんだろう。
そこへ魔法持ってのは……うん?
ここまですごいのって、もう主人公くんレベルなんじゃ――――――。
「ご、ごめんなさい……みなさんは努力してるのに、ぼくだけ……」
「……いえ、ルーシーは大変な苦労をする生まれだったんです。それくらいはないと……あんまりでしょう」
そうだ。
主人公くんも、そういやモノローグでいろいろあふれる闇を抱えた存在だった。
だからこそ癖のありすぎるメインヒロインたちに惹かれたんだから。
ルーシーちゃんも同じくらい苦労する生まれなんだから、それくらいあってもおかしくはないだろう。
「ぶわっ」
「ユリア様はお優しいのですわ……!」
「ええ……ええ……! 7つになるまで、ユリア様にいただくまで名前すらなかったとか……そうですわ! きっと哀れんだ神が与えてくださったのですわ!」
ずびずびと泣き始めるモブ子ズ。
「そうですね。この世界には本当に神も居ますから……きっと、ルーシーのことを気に留めてくれた。そう思っておきましょう?」
「……教会の人も、ごはんくれるときにそう言ってた気がします……ごはんを自分で取ってこいって、家から追い出されたときに……」
ルーシーちゃん!
闇を噴出させるのは止めよう!
その分才能があるんだし、まだ7歳なんだし、なによりモブ子ズが面倒を見てくれる!
君の人生はこれからなんだ!
「ずびっ……そういえばユリア様? 武器は結局何にされたので?」
「そ、そうですわ! わたくしたちがルーシー様にいろいろ教えているあいだに!」
「ユリアさまも、いろいろ使えてましたけど……」
「はい、これです。しっくりするのを手に入れましたので」
――ひゅんっ。
「ムチですの!」
「綺麗過ぎるユリア様からの折檻……」
「確か、わたくしの父上の寝室にもありましたわ。護身にぴったりですものね!」
……ちょっと危ない言葉が聞こえた気がするけども、気にしないでおこう。
「そうですわね、ユリア様はお優しすぎますもの」
「ぼ、ぼくもそれで叩いておしおきを……」
「いえ、ダンジョンで使うものですから人に使ったら大変なことになりますし」
なんだかルーシーちゃんが熱に浮かされたような顔つきになってるのも……気がつかないでおこう。
「これならリーチも長いですし、なにより――」
ダメージを出さないよう、ゆるーくムチをしならせて――
「――ひゃあっ!?」
くるっとルーシーちゃんの腰に巻き、そのまま――ゆっくりと抱き寄せる。
「「「きゃーっ♥」」」
「あ、あぅあぅ……」
「……と、誰かが危険なときに緊急避難もできますから」
急に引きつけちゃったからか、目を回しているルーシーちゃん。
痛かったりはしないだろうけども……次からはせめて声をかけてからにしよう。
――ダンジョンでは、何が起きるか分からない。
それは幸の薄いモブ子ズ……この子たちがうっかり召喚の罠を踏み抜いて魔族のエロディーさんを連れてきちゃったりと、本当に予想外のことは起こり得る。
ここはゲームのシステム以外のことが起きうる、現実世界。
なら、せめてモンスターの強襲とか罠とかから少しでも……っていう感じに。
あと、なぜか妙にしっくりくるんだよなぁ、ムチ。
なんとなく何かに呼ばれたかのように吸い寄せられたんだ。
まぁジュリオン様としてエミリーちゃんをいじめてたときとかに使ってたんだろう、うん。
「では、ルーシーを中心とした輪形陣を、僕たち4人で展開する形で行きましょう」
「輪形陣……ですの?」
「それはなんですの?」
「ルーシーという魔法使い――打たれ弱い子を、どの役割もできるあなたたち3人に僕で前後左右を囲む陣形です。少なくともお互いの技量が分かるまでは安全第一で行くのが良いかと」
難易度が低いダンジョンだし、空を飛ぶ敵も少ないし、海の上でもないけどもなんとなく、ね。
「僕たちはたまたま、かなりのオールラウンダー……どんな役割もそこそこできる代わりに、恐らくは突出した才能がないタイプ。でしたら、将来いろんなパーティーと協力する際に、ひととおりの仕事をできるようにしておけば便利かと思いまして」
「……さすユリ!」
「なるほど……わたくしたち、そんなことまっっったくこれっっっぽっちも思ったことなどありませんでしたわ!」
「きっと兵法や指揮に関する書物や家庭教師にも……完璧な令嬢なのですわ……!」
冒険者のうち、戦いをメインにする人は傭兵みたいな扱いになるらしい。
なら、「特別に強くはないし、何より女の子たちだから危険な目には遭わせられないけども、いろいろできてかゆいところに手が届く系のサポート要員」って扱いになれたら、きっとこの子たちも冒険者として安全に活躍できるだろう。
ついでにルーシーちゃんもセットにして4人で活動すればバランスも良さそうだし。
「では、ダンジョンへ行きましょうか。先ほどの通りにルーシーを慣れさせるのを本日の目標として……よろしいでしょうか?」
そういうことになった。
……こんだけいろいろと仕切っちゃってるのに反発とかがないのは、やっぱ高位の貴族(かもしれない)っていう身分マウントとかになっちゃうのかなぁ……。
なんだかこう、前世の一般的な平社員っぽい感覚のせいで、なんとなく落ち着かない気がする。
出会いが出会いだからしょうがないんだけども……うーむ。
せっかくだから身分が近くって、なんなら偉そうにされるような子と行動できたら気が楽なんだろうけども……まぁそうそうそんな子は冒険者、しかも子供には居ないか。
居るとしたらモブ子ズみたいに将来学園で知り合うキャラクターとかだけども、そんなのと立て続けに会うはずなんてないし。
◇
【フラグが形成されました】
【フラグを形成しすぎるとBAD ENDに繋がることがあります。お気を付けください】
「賛成ですわ」
「賛成ですの」
「昨日あわあわしましたけれど何あのガリガリっぷり! いくら武器を扱えても前には出せませんの!」
結局、あるだけの武器はことごとく使えることが判明したルーシーちゃん。
これは単純にすごいことだ。
だってゲームシステム的には――もちろんここは現実の世界だけども――主人公くんと数人くらいしかありえない仕様だったんだから。
まぁゲームだと限られた人しか登場しなかっただけで、実際にはこうして主人公くんみたいに農民の出で、しかも才能にあふれる人とかもそれなりに居るんだろう。
そこへ魔法持ってのは……うん?
ここまですごいのって、もう主人公くんレベルなんじゃ――――――。
「ご、ごめんなさい……みなさんは努力してるのに、ぼくだけ……」
「……いえ、ルーシーは大変な苦労をする生まれだったんです。それくらいはないと……あんまりでしょう」
そうだ。
主人公くんも、そういやモノローグでいろいろあふれる闇を抱えた存在だった。
だからこそ癖のありすぎるメインヒロインたちに惹かれたんだから。
ルーシーちゃんも同じくらい苦労する生まれなんだから、それくらいあってもおかしくはないだろう。
「ぶわっ」
「ユリア様はお優しいのですわ……!」
「ええ……ええ……! 7つになるまで、ユリア様にいただくまで名前すらなかったとか……そうですわ! きっと哀れんだ神が与えてくださったのですわ!」
ずびずびと泣き始めるモブ子ズ。
「そうですね。この世界には本当に神も居ますから……きっと、ルーシーのことを気に留めてくれた。そう思っておきましょう?」
「……教会の人も、ごはんくれるときにそう言ってた気がします……ごはんを自分で取ってこいって、家から追い出されたときに……」
ルーシーちゃん!
闇を噴出させるのは止めよう!
その分才能があるんだし、まだ7歳なんだし、なによりモブ子ズが面倒を見てくれる!
君の人生はこれからなんだ!
「ずびっ……そういえばユリア様? 武器は結局何にされたので?」
「そ、そうですわ! わたくしたちがルーシー様にいろいろ教えているあいだに!」
「ユリアさまも、いろいろ使えてましたけど……」
「はい、これです。しっくりするのを手に入れましたので」
――ひゅんっ。
「ムチですの!」
「綺麗過ぎるユリア様からの折檻……」
「確か、わたくしの父上の寝室にもありましたわ。護身にぴったりですものね!」
……ちょっと危ない言葉が聞こえた気がするけども、気にしないでおこう。
「そうですわね、ユリア様はお優しすぎますもの」
「ぼ、ぼくもそれで叩いておしおきを……」
「いえ、ダンジョンで使うものですから人に使ったら大変なことになりますし」
なんだかルーシーちゃんが熱に浮かされたような顔つきになってるのも……気がつかないでおこう。
「これならリーチも長いですし、なにより――」
ダメージを出さないよう、ゆるーくムチをしならせて――
「――ひゃあっ!?」
くるっとルーシーちゃんの腰に巻き、そのまま――ゆっくりと抱き寄せる。
「「「きゃーっ♥」」」
「あ、あぅあぅ……」
「……と、誰かが危険なときに緊急避難もできますから」
急に引きつけちゃったからか、目を回しているルーシーちゃん。
痛かったりはしないだろうけども……次からはせめて声をかけてからにしよう。
――ダンジョンでは、何が起きるか分からない。
それは幸の薄いモブ子ズ……この子たちがうっかり召喚の罠を踏み抜いて魔族のエロディーさんを連れてきちゃったりと、本当に予想外のことは起こり得る。
ここはゲームのシステム以外のことが起きうる、現実世界。
なら、せめてモンスターの強襲とか罠とかから少しでも……っていう感じに。
あと、なぜか妙にしっくりくるんだよなぁ、ムチ。
なんとなく何かに呼ばれたかのように吸い寄せられたんだ。
まぁジュリオン様としてエミリーちゃんをいじめてたときとかに使ってたんだろう、うん。
「では、ルーシーを中心とした輪形陣を、僕たち4人で展開する形で行きましょう」
「輪形陣……ですの?」
「それはなんですの?」
「ルーシーという魔法使い――打たれ弱い子を、どの役割もできるあなたたち3人に僕で前後左右を囲む陣形です。少なくともお互いの技量が分かるまでは安全第一で行くのが良いかと」
難易度が低いダンジョンだし、空を飛ぶ敵も少ないし、海の上でもないけどもなんとなく、ね。
「僕たちはたまたま、かなりのオールラウンダー……どんな役割もそこそこできる代わりに、恐らくは突出した才能がないタイプ。でしたら、将来いろんなパーティーと協力する際に、ひととおりの仕事をできるようにしておけば便利かと思いまして」
「……さすユリ!」
「なるほど……わたくしたち、そんなことまっっったくこれっっっぽっちも思ったことなどありませんでしたわ!」
「きっと兵法や指揮に関する書物や家庭教師にも……完璧な令嬢なのですわ……!」
冒険者のうち、戦いをメインにする人は傭兵みたいな扱いになるらしい。
なら、「特別に強くはないし、何より女の子たちだから危険な目には遭わせられないけども、いろいろできてかゆいところに手が届く系のサポート要員」って扱いになれたら、きっとこの子たちも冒険者として安全に活躍できるだろう。
ついでにルーシーちゃんもセットにして4人で活動すればバランスも良さそうだし。
「では、ダンジョンへ行きましょうか。先ほどの通りにルーシーを慣れさせるのを本日の目標として……よろしいでしょうか?」
そういうことになった。
……こんだけいろいろと仕切っちゃってるのに反発とかがないのは、やっぱ高位の貴族(かもしれない)っていう身分マウントとかになっちゃうのかなぁ……。
なんだかこう、前世の一般的な平社員っぽい感覚のせいで、なんとなく落ち着かない気がする。
出会いが出会いだからしょうがないんだけども……うーむ。
せっかくだから身分が近くって、なんなら偉そうにされるような子と行動できたら気が楽なんだろうけども……まぁそうそうそんな子は冒険者、しかも子供には居ないか。
居るとしたらモブ子ズみたいに将来学園で知り合うキャラクターとかだけども、そんなのと立て続けに会うはずなんてないし。
◇
【フラグが形成されました】
【フラグを形成しすぎるとBAD ENDに繋がることがあります。お気を付けください】
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