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4章 女装して路地裏から町を堕とした
57話 豪運とポーターとクレーマー
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「ルーシー様ぁ~♥」
「どうかこのまま一緒にパーティー組んでいてくださいましー♥」
「ユ、ユリアさま助けてぇ……」
あれから数日。
今日も今日とてダンジョンに潜って、その帰りの馬車。
そこには……ルーシーちゃんとモブ子ズによる4人の百合が花開いている。
いいよね、女の子たちが純粋な好意で仲良くしてるのって。
僕はそういうのを愛でるのが趣味……だった前世を持つんだ。
「もう、ユリア様も混ざるのですわ!」
「いえ、僕は1人が好きなので」
「孤高なところも素敵ですの……」
「侵しがたい聖域ですものねぇ」
ハムスターみたいに身を寄せ合っている4人が見てくるけども、僕は男だから百合園には入れない。
僕もまだバラしてないし、ルーシーちゃんも内緒ごとをうっかりしゃべっちゃう子じゃないみたいだしで、この子たちにはバレてないけども。
バレてないなら良いんじゃないかって?
そういうのはいけないと思う。
特に意味のないこだわりだけども、僕はそう思うんだ。
「いいよな……」
「いい……」
ちらりと漏れ聞こえてくる、馬車内の他の人たちの声。
――けれども魔王軍っていう明確な脅威があり、孤児でもその日暮らしくらいならその気があればできるっていう国家のセーフネットな冒険者っていう職業。
町の中の普通の職業に就いていないって時点で、みんなどこか普通じゃない。
その多くが荒くれ者――ってわけでもないけども、まぁガラは悪いのが多め。
「子供ってのはうるさいけど、癒やされるよな」
「そうだね。知り合い以外の子供だと、スられるの警戒しなきゃならねぇ孤児たちしかいねぇし」
「女の子ってやっぱり良いわよね」
「あの歳で冒険者やらなきゃってのがかわいそうだけど……」
「悪い大人に騙されそうになってたら……って思ったけど、どうやらちゃんとやれてるみたいで良かったわ」
町から近場のダンジョンまで往復する、乗り合い馬車。
当然ながら乗る人の顔ぶれはある程度固定されるわけで……気がつけば4人は――あ、僕は基本顔隠してそっぼ向いてるからともかく――冒険者たちの癒やし枠になっている。
もともとモブ子ズ3人でもなってたっぽいけど、そこへ3人にいつも構われてもみくちゃにされてるルーシーちゃんが入ったんだ、そりゃあ目を引くってものだろう。
ルーシーちゃんについてはいろいろやらかしちゃったから責任は取るけども……ひとまずはこの子たちに預けても大丈夫そうだね。
ギルドハウスとかでも普通に話しかけられるようになってるし、少なくないお兄さんお姉さんたちに好かれる立場なら大変なことにはならないだろうし。
「知ってるか? いつもフードのあの子、とんでもねぇ美人さんでよぉ」
「まだ子供だからなぁ」
「俺はあれくらいの歳の方が」
「うわぁ……」
「え?」
「お前……」
「え?」
「衛兵に突き出すか? やらかして死刑になるよかマシだろ」
「待て違う、俺はノータッチ主義で……」
「………………………………」
……この前のお兄さんみたいなのは、なぜか僕が引きつけてるみたいだし。
なんでだろうね。
僕は男なのにね。
女装してる変態だからかな。
変態同士、共鳴とかしてるのかもな。
僕はしたくてしてるわけじゃ――いや、したくてしてるってことにしてたんだった……そりゃあ世界にそう思わせたんならそういう結果にもなるか。
死なないためとはいえ、メス堕ちしないためとはいえ、悲しいね。
◇
「やはり、ユリア様とルーシー様は素敵なのですわ……!」
「ドロップ品だけで毎日荷物がぱんっぱんになって引き上げるだなんて……!」
「重いというのは幸せなのですわ……! 重いですけれども……!」
「ごめんなさいごめんなさいっ、ぼく、まだまだ足引っ張ってるのに……」
どうやらドロップ運ってのは、パーティーメンバー全体に影響するらしい。
おかげで僕とルーシーちゃんそれぞれのLUKにより、もはやバグかって思うほどドロップ率が高くなってて……おかげでほぼ毎日、夕方前に引き上げられるようになっている。
「ここまで来ますと、荷物持ちの方も雇うべきなのでしょうか……?」
「け、けれど、ツテもないですし、それに」
「このことを知られると面倒ですものねぇ」
荷物持ち――ポーター。
毎回みんなで持ちきれる一杯の荷物を抱えて帰るからか、ここまで何人かに声をかけられて売り込まれたけども、今のところ全部お断りしている。
……そもそも小学生になるかって歳の女の子たちのパーティーに志願してくる大人の男は論外、明らかに悪い顔つきの女の人もまた論外。
そんなわけで年齢と性別がだいぶ限定される上――僕はまだなんとかなるにしても、まだまだ駆け出しなのに僕並みの豪運持ちのルーシーちゃんのことを悪い人に知られるのは、まずい。
そういう意味でも「信用できる」人が欲しいんだけども……なかなか居ないよね。
同年代、できれば女の子――男の子でも良いけども、悪いことをしてきたりしないって確信できる相手って。
「ポーターの方は引き続きそれとなく探すとして、とりあえず換金しましょう」
「ですわね!」
「ですの!」
「は、はいっ!」
僕は、すっかり慣れ親しみつつある日常をぼんやりと――
「――ちょっと! どうして私にそれ売ってくれないわけ?」
「じょ、嬢ちゃん! だから違うんだって、これは――……」
――通り過ぎようとしたところにあった、街角の屋台。
何回か話したことのある店主さん。
子供の僕にもお釣りをごまかしたりしない、誠実な人。
「子供だから売ってくれない」――そんなわけはない。
彼の目の前には、僕と同じようにフードをかぶった子供らしき存在が声を上げている。
けども、ぱっと見で良い仕立てのもので――つまりは孤児とかではない。
……お客商売って変な客に絡まれる宿命だもんね。
「……みなさん、先に行っていてください」
あそこの串焼きはおいしいんだ。
ぎゃんぎゃん騒いでいる理由はさっぱりだけども、そのせいで売れ行きが落ちてお店を畳んだりされたら僕が困る。
僕は、すでに形成されつつある野次馬の人垣を押し分けて行った。
「ユリア様……!」
「分かりましたわ、終わりましたら宿で……」
「『ユリア様は人々の諍いにも躊躇なく仲裁に』……と……」
「どうかこのまま一緒にパーティー組んでいてくださいましー♥」
「ユ、ユリアさま助けてぇ……」
あれから数日。
今日も今日とてダンジョンに潜って、その帰りの馬車。
そこには……ルーシーちゃんとモブ子ズによる4人の百合が花開いている。
いいよね、女の子たちが純粋な好意で仲良くしてるのって。
僕はそういうのを愛でるのが趣味……だった前世を持つんだ。
「もう、ユリア様も混ざるのですわ!」
「いえ、僕は1人が好きなので」
「孤高なところも素敵ですの……」
「侵しがたい聖域ですものねぇ」
ハムスターみたいに身を寄せ合っている4人が見てくるけども、僕は男だから百合園には入れない。
僕もまだバラしてないし、ルーシーちゃんも内緒ごとをうっかりしゃべっちゃう子じゃないみたいだしで、この子たちにはバレてないけども。
バレてないなら良いんじゃないかって?
そういうのはいけないと思う。
特に意味のないこだわりだけども、僕はそう思うんだ。
「いいよな……」
「いい……」
ちらりと漏れ聞こえてくる、馬車内の他の人たちの声。
――けれども魔王軍っていう明確な脅威があり、孤児でもその日暮らしくらいならその気があればできるっていう国家のセーフネットな冒険者っていう職業。
町の中の普通の職業に就いていないって時点で、みんなどこか普通じゃない。
その多くが荒くれ者――ってわけでもないけども、まぁガラは悪いのが多め。
「子供ってのはうるさいけど、癒やされるよな」
「そうだね。知り合い以外の子供だと、スられるの警戒しなきゃならねぇ孤児たちしかいねぇし」
「女の子ってやっぱり良いわよね」
「あの歳で冒険者やらなきゃってのがかわいそうだけど……」
「悪い大人に騙されそうになってたら……って思ったけど、どうやらちゃんとやれてるみたいで良かったわ」
町から近場のダンジョンまで往復する、乗り合い馬車。
当然ながら乗る人の顔ぶれはある程度固定されるわけで……気がつけば4人は――あ、僕は基本顔隠してそっぼ向いてるからともかく――冒険者たちの癒やし枠になっている。
もともとモブ子ズ3人でもなってたっぽいけど、そこへ3人にいつも構われてもみくちゃにされてるルーシーちゃんが入ったんだ、そりゃあ目を引くってものだろう。
ルーシーちゃんについてはいろいろやらかしちゃったから責任は取るけども……ひとまずはこの子たちに預けても大丈夫そうだね。
ギルドハウスとかでも普通に話しかけられるようになってるし、少なくないお兄さんお姉さんたちに好かれる立場なら大変なことにはならないだろうし。
「知ってるか? いつもフードのあの子、とんでもねぇ美人さんでよぉ」
「まだ子供だからなぁ」
「俺はあれくらいの歳の方が」
「うわぁ……」
「え?」
「お前……」
「え?」
「衛兵に突き出すか? やらかして死刑になるよかマシだろ」
「待て違う、俺はノータッチ主義で……」
「………………………………」
……この前のお兄さんみたいなのは、なぜか僕が引きつけてるみたいだし。
なんでだろうね。
僕は男なのにね。
女装してる変態だからかな。
変態同士、共鳴とかしてるのかもな。
僕はしたくてしてるわけじゃ――いや、したくてしてるってことにしてたんだった……そりゃあ世界にそう思わせたんならそういう結果にもなるか。
死なないためとはいえ、メス堕ちしないためとはいえ、悲しいね。
◇
「やはり、ユリア様とルーシー様は素敵なのですわ……!」
「ドロップ品だけで毎日荷物がぱんっぱんになって引き上げるだなんて……!」
「重いというのは幸せなのですわ……! 重いですけれども……!」
「ごめんなさいごめんなさいっ、ぼく、まだまだ足引っ張ってるのに……」
どうやらドロップ運ってのは、パーティーメンバー全体に影響するらしい。
おかげで僕とルーシーちゃんそれぞれのLUKにより、もはやバグかって思うほどドロップ率が高くなってて……おかげでほぼ毎日、夕方前に引き上げられるようになっている。
「ここまで来ますと、荷物持ちの方も雇うべきなのでしょうか……?」
「け、けれど、ツテもないですし、それに」
「このことを知られると面倒ですものねぇ」
荷物持ち――ポーター。
毎回みんなで持ちきれる一杯の荷物を抱えて帰るからか、ここまで何人かに声をかけられて売り込まれたけども、今のところ全部お断りしている。
……そもそも小学生になるかって歳の女の子たちのパーティーに志願してくる大人の男は論外、明らかに悪い顔つきの女の人もまた論外。
そんなわけで年齢と性別がだいぶ限定される上――僕はまだなんとかなるにしても、まだまだ駆け出しなのに僕並みの豪運持ちのルーシーちゃんのことを悪い人に知られるのは、まずい。
そういう意味でも「信用できる」人が欲しいんだけども……なかなか居ないよね。
同年代、できれば女の子――男の子でも良いけども、悪いことをしてきたりしないって確信できる相手って。
「ポーターの方は引き続きそれとなく探すとして、とりあえず換金しましょう」
「ですわね!」
「ですの!」
「は、はいっ!」
僕は、すっかり慣れ親しみつつある日常をぼんやりと――
「――ちょっと! どうして私にそれ売ってくれないわけ?」
「じょ、嬢ちゃん! だから違うんだって、これは――……」
――通り過ぎようとしたところにあった、街角の屋台。
何回か話したことのある店主さん。
子供の僕にもお釣りをごまかしたりしない、誠実な人。
「子供だから売ってくれない」――そんなわけはない。
彼の目の前には、僕と同じようにフードをかぶった子供らしき存在が声を上げている。
けども、ぱっと見で良い仕立てのもので――つまりは孤児とかではない。
……お客商売って変な客に絡まれる宿命だもんね。
「……みなさん、先に行っていてください」
あそこの串焼きはおいしいんだ。
ぎゃんぎゃん騒いでいる理由はさっぱりだけども、そのせいで売れ行きが落ちてお店を畳んだりされたら僕が困る。
僕は、すでに形成されつつある野次馬の人垣を押し分けて行った。
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