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4章 女装して路地裏から町を堕とした
58話 おてんばお嬢様らしい
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広場の端っこ、屋台の前。
ざわざわと――子供の声、しかも女の子のとあって、さらにちょっと物騒な感じだったからか、かなりの人が立ち止まって遠巻きに野次馬を形成している。
うーん、営業妨害。
そこの串焼きはおいしいのに。
「……あ、いえ、違うの。今のはただ、どうして私だけに売ってくれないのかって……声、大きくてごめんなさい……」
周囲のざわめきに気がついたのか、フードをかぶって見えないけども顔がきょろきょろとあたりを見回し――怒ってたその声が、急にもごもごとおとなしくなる。
……クレーマーとかじゃない感じ?
じゃあ僕は引き返しても――
「でも、このお金は偽物とかじゃないの。本物のお金よ? 嘘じゃないわ」
「いや、それも分かってるんだが……」
「私、悪いことはしないって決めているもの」
「いや、だから」
「それとも、こういう店って子供は買えないとかそういう決まりがあるの? あ、もちろんこのお金だって盗んできたとかそういうわけじゃないし、それに……」
……ふむ?
なにやら顔馴染みの串焼きのおじさんも、どうしようか困ってる感じ?
いちゃもんつけて串焼きをたかろうとか、そういうわけでもない感じだし……僕がわざわざとも思うけども、もう来ちゃったからいっか。
「どうかしましたか?」
「お、いつもの嬢ちゃん! なぁ、ちょいとこの子に話してやってくれよ!」
「……どなたです――か……って……」
フード姿のままで振り向いてきた姿は――うん?
金髪の前髪に、意志の強そうな目元。
「どっかで見たことあるような」女の子な気がするけども……。
「………………………………」
「?」
……フードって、思ったよりも顔を隠すんだよね。
僕もお世話になってるからよく分かる。
口元まで隠れてるし、やっぱよく見えないや。
「……ごめんなさい、じろじろ見て。ちょっと、知り合いの方――人に似てたから」
「そうですか」
相手も僕の顔をしげしげと見ようとして、やっぱよく見えなくて諦めたらしい。
でも――モブ子ズや僕みたいに貴族階級の子供なんだろう雰囲気だし、この町に来てるってことはわりと近いところの子なのかもしれない。
それなら、ジュリオン様としてのパーティーとかで顔を合わせた可能性がある。
貴族ってば狭い世界だからね、馬車で数日程度なら結構行き来するんだ。
まぁパーティーって言っても僕たちの年齢なら、親とかにくっついてるだけだからそんなに覚えてなくても不思議じゃない。
そもそもジュリオン様、そういうのほとんど出てないからなぁ。
ママンが死んじゃってからは、もう完全にね。
5歳以下の男児がそんなパーティー行ったところで、会った人のことをはっきり覚えてる方がおかしいもんなぁ。
なんとなく覚えてるってだけでやっぱりすごいぞジュリオン様メモリー。
最後のは……確か。
どうしても行かなきゃ行けなかった、パパンに連れられてパーティーで婚約者の子――メインヒロインの子と顔合わせしたときくらいか。
確かそのときに盛大にやらかしてたから、女装を解けば相手が思いだしてくれるかもしれないけども……そこまでする理由もないし。
「……白い髪の毛の女の子……あの子とあの子は違うし……」
ごめんね、今、灰被りしてるんだ。
ただの砂だけどね。
まぁいいや、あっちとしても僕のことを思い出そうとしてか、怒ってるっぽかったのももう完全に静まってるみたいだし。
「それで、どうしましたか? この方の串焼きはとてもおいしいですよ?」
「おう! 嬢ちゃん、毎日のように買ってってくれるもんな!」
じゅうじゅうとよだれが出てくる匂いを振りまくおじさん。
「後で10本欲しいんですけど、取っておいてもらえますか?」
「あの子たちの分もだろ? 任せとけ!」
「……あなたには売ってくれるのね」
うん?
「だから違うってば嬢ちゃん」
「だって、このお金は偽物でもないって――」
と、握りしめていた手を広げるのを見ると――うわぁ……。
「……白金貨なんて町中では使わないですよ?」
「え?」
白金貨――プラチナでできた、最上位のコイン。
前世でも、何かの記念とかのときに特注で作られるような――それ自体が資産になるような代物だ。
あれだ、お値段的には延べ棒とかそんなレベルのやつ。
ゲームでもコレクションアイテムとしてときどきあったけど……うわぁ、子供の手でぎりぎり握りしめられるサイズの、重そうな白金貨。
そこには王家の印がでかでかと。
素手で持っちゃっていいやつだったの、それ……?
「うへぇ、そんな高いもんだったのか……さすがはお貴族様だねぇ。俺も初めて見たぜ……金貨よりでかいから、そうかもとは思っていたが」
「え?」
「いえ、僕も見たことはありますけど、白金貨なんて基本的には金庫に眠ってるものですから」
「えっ」
持ち歩いたら危険極まりないし。
「まぁなぁ、俺もでかい支払いはギルド使うしなぁ」
「そもそも紙幣使いますからね」
「え、え?」
きょろきょろきょろ、と、僕たちの顔を交互に見るもんだからフードからはみ出た横髪がぶんぶんと。
……こうして見ると、普通の子供だ。
ほら、もうさっき怒ってたことなんて、完全に忘れてるくらいだもん。
もうこれだけで、ここに来た目的は達成してるけども……じゅうじゅうと、香ばしい匂いには……負けるよね。
みんなには悪いけど……買い食い、しちゃおっか。
ついでで、食べてみたかったらしいこの子も一緒に。
ざわざわと――子供の声、しかも女の子のとあって、さらにちょっと物騒な感じだったからか、かなりの人が立ち止まって遠巻きに野次馬を形成している。
うーん、営業妨害。
そこの串焼きはおいしいのに。
「……あ、いえ、違うの。今のはただ、どうして私だけに売ってくれないのかって……声、大きくてごめんなさい……」
周囲のざわめきに気がついたのか、フードをかぶって見えないけども顔がきょろきょろとあたりを見回し――怒ってたその声が、急にもごもごとおとなしくなる。
……クレーマーとかじゃない感じ?
じゃあ僕は引き返しても――
「でも、このお金は偽物とかじゃないの。本物のお金よ? 嘘じゃないわ」
「いや、それも分かってるんだが……」
「私、悪いことはしないって決めているもの」
「いや、だから」
「それとも、こういう店って子供は買えないとかそういう決まりがあるの? あ、もちろんこのお金だって盗んできたとかそういうわけじゃないし、それに……」
……ふむ?
なにやら顔馴染みの串焼きのおじさんも、どうしようか困ってる感じ?
いちゃもんつけて串焼きをたかろうとか、そういうわけでもない感じだし……僕がわざわざとも思うけども、もう来ちゃったからいっか。
「どうかしましたか?」
「お、いつもの嬢ちゃん! なぁ、ちょいとこの子に話してやってくれよ!」
「……どなたです――か……って……」
フード姿のままで振り向いてきた姿は――うん?
金髪の前髪に、意志の強そうな目元。
「どっかで見たことあるような」女の子な気がするけども……。
「………………………………」
「?」
……フードって、思ったよりも顔を隠すんだよね。
僕もお世話になってるからよく分かる。
口元まで隠れてるし、やっぱよく見えないや。
「……ごめんなさい、じろじろ見て。ちょっと、知り合いの方――人に似てたから」
「そうですか」
相手も僕の顔をしげしげと見ようとして、やっぱよく見えなくて諦めたらしい。
でも――モブ子ズや僕みたいに貴族階級の子供なんだろう雰囲気だし、この町に来てるってことはわりと近いところの子なのかもしれない。
それなら、ジュリオン様としてのパーティーとかで顔を合わせた可能性がある。
貴族ってば狭い世界だからね、馬車で数日程度なら結構行き来するんだ。
まぁパーティーって言っても僕たちの年齢なら、親とかにくっついてるだけだからそんなに覚えてなくても不思議じゃない。
そもそもジュリオン様、そういうのほとんど出てないからなぁ。
ママンが死んじゃってからは、もう完全にね。
5歳以下の男児がそんなパーティー行ったところで、会った人のことをはっきり覚えてる方がおかしいもんなぁ。
なんとなく覚えてるってだけでやっぱりすごいぞジュリオン様メモリー。
最後のは……確か。
どうしても行かなきゃ行けなかった、パパンに連れられてパーティーで婚約者の子――メインヒロインの子と顔合わせしたときくらいか。
確かそのときに盛大にやらかしてたから、女装を解けば相手が思いだしてくれるかもしれないけども……そこまでする理由もないし。
「……白い髪の毛の女の子……あの子とあの子は違うし……」
ごめんね、今、灰被りしてるんだ。
ただの砂だけどね。
まぁいいや、あっちとしても僕のことを思い出そうとしてか、怒ってるっぽかったのももう完全に静まってるみたいだし。
「それで、どうしましたか? この方の串焼きはとてもおいしいですよ?」
「おう! 嬢ちゃん、毎日のように買ってってくれるもんな!」
じゅうじゅうとよだれが出てくる匂いを振りまくおじさん。
「後で10本欲しいんですけど、取っておいてもらえますか?」
「あの子たちの分もだろ? 任せとけ!」
「……あなたには売ってくれるのね」
うん?
「だから違うってば嬢ちゃん」
「だって、このお金は偽物でもないって――」
と、握りしめていた手を広げるのを見ると――うわぁ……。
「……白金貨なんて町中では使わないですよ?」
「え?」
白金貨――プラチナでできた、最上位のコイン。
前世でも、何かの記念とかのときに特注で作られるような――それ自体が資産になるような代物だ。
あれだ、お値段的には延べ棒とかそんなレベルのやつ。
ゲームでもコレクションアイテムとしてときどきあったけど……うわぁ、子供の手でぎりぎり握りしめられるサイズの、重そうな白金貨。
そこには王家の印がでかでかと。
素手で持っちゃっていいやつだったの、それ……?
「うへぇ、そんな高いもんだったのか……さすがはお貴族様だねぇ。俺も初めて見たぜ……金貨よりでかいから、そうかもとは思っていたが」
「え?」
「いえ、僕も見たことはありますけど、白金貨なんて基本的には金庫に眠ってるものですから」
「えっ」
持ち歩いたら危険極まりないし。
「まぁなぁ、俺もでかい支払いはギルド使うしなぁ」
「そもそも紙幣使いますからね」
「え、え?」
きょろきょろきょろ、と、僕たちの顔を交互に見るもんだからフードからはみ出た横髪がぶんぶんと。
……こうして見ると、普通の子供だ。
ほら、もうさっき怒ってたことなんて、完全に忘れてるくらいだもん。
もうこれだけで、ここに来た目的は達成してるけども……じゅうじゅうと、香ばしい匂いには……負けるよね。
みんなには悪いけど……買い食い、しちゃおっか。
ついでで、食べてみたかったらしいこの子も一緒に。
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