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5章 女装して国の裏を堕とした
69話 町の闇
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「――――――………………………………」
顔の良い男女。
特に幼い女の子。
さらには貴族が孕ませて捨てた女性の子供。
あるいは頭が良い子。
そういう子たちを――――――
「――悪徳貴族が見目麗しい子供を、『遊ぶために』男女問わず連れて行くと……特に孤児は、帰らないと。ほう……」
僕は普段滅多に怒らないのに、なんだか異様に胃がむかむかしてきた。
こんなにも怒ったことは、前世でもそうそうないレベルで。
覚えてないけども。
「ひぃっ……!?」
「周囲の小石が……!?」
「地鳴りがしてきたぞ!?」
「ま、まさか、怒りだけで魔力が……!?」
「――――――話しなさい」
「も、もう話しました! これ以上は――――」
これは、ジュリオン様の――多分はエリート貴族としての意識が、怒っている。
恐らくは自分の――お父さんのだけども――領地で好き勝手されたことに対して。
僕の――前世の市民としての意識が、怒っている。
――年端もいかない子供への、一方的な犯罪に対して。
かちり。
僕たちの心が――意識が同調する感覚。
「そのゴ――虫ケラ共の住処を。おおよそは分かっているはずです」
「ひぃっ!?」
「あ、コイツ、漏らしやがった!?」
ギャラリーがうるさい。
けども、そんなことはどうでも良い。
「……あの、それを知って……?」
「――――――もちろん、今から磨り潰すためですが、何か?」
「ぴぃっ!?」
あ、リラちゃんが泣きそう。
……子供を怖がらせちゃうのは大人失格だ。
怒っちゃったときこそにっこり笑わないとね。
「ひぃっ……」
「笑って……!?」
「なんと恐ろしい笑顔なんだ……」
……なんかもう、聞いちゃった以上にはその貴族さんへ天誅――じゃないじゃない、文句、抗議を言いに行かないと体が収まらなくなっちゃったらしい。
僕も同じ意見だから良いけども……ジュリオン様ってば、自分が関係無い場面では意外と良い人だったりするのかな。
あ、いや、僕はジュリオン様の前世の存在なんだから実質的には僕の魂的なのの怒りポイントが同じなだけかな。
そんなことを考えていたら、ちょっとだけ落ち着いてきて周りが見えてくる。
……ちょっと怒っただけで、なぜかみんなが異様に怖がってる。
これはいけない、革命の兆しがまた産まれちゃう。
せっかく摘み取ったはずなのに、また産まれちゃう。
「あ、ま、待ってくれ……ええと、お嬢様! その前に俺たちの――」
顔が真っ青――だけども声を上げてくれたテオくんのおかげで、完全に怒りが収まってきた。
……ジュリオン様関係なく、子供ボディだから感情爆発しやすいのかなぁ。
「――ああ、先ほどの、あなたたちが養っていた子たちの件ですね」
しゅううう。
そうだった、この子たちが居なくなったら困る子たちが居るって話だったね。
ならまずはそっちを片づけてからだ。
「案内してください。……いえ、今は怒っていませんよ。ごめんなさい、怖がらせて」
「ちびるとこだった……」
「リラ? こんな場面で漏らすなよ? 頼むからな?」
「ごめん、嘘ついた。ちょいちびった。そのへんで洗ってきて良い?」
「お前……」
しっかり者のテオくん、あと涙目のおでこちゃんに着いていこう。
あ、漏らしちゃったのはしっかり洗ってきてね。
◇
「……そうですか。あなたたちが盗んだお金で、この子たち10人ほどを養っていたと」
「は、はい! あ、でも、欲ばったりは――姉御相手以外は、何回かしか……」
「ですからその……怒らないでほしい……あ、いや、お怒りにならないでほしいんですが……」
「生きるためですから怒りませんよ。怒りませんが……」
リラちゃんとテオ君の根城。
……そこには確かに、リラちゃんよりも幼かったり――明らかに病気な子が。
孤児同士の絆なのか、それとも共同体としての義務なのか。
とにかくこの兄妹は、この孤児たちのスラム街には不可欠な存在だったらしい。
うん、確かにこの世界「生きるのは自前でなんとかしろ」ってスタンスだからね……福祉なんてないんだ。
だからこそ、盗みを働くしかない。
衛兵とか町の人たちに諦められる程度の、こそ泥とかの範囲で。
その塩梅ははたして年上の住人たちからの知恵か、それともこの子たちのものか。
孤児が、ギルドで働けば良いっていう情報にアクセスできるわけがないもんね。
あったとしたって、孤児ってだけで大変な思いもするだろうし。
「………………………………」
世界を知ってる商人たちが「かなり上等」って言ってたこの領ですらこれだと、他の領は一体どうなっているんだ、とも思うけども。
――それはともかくとして。
貧民出身の子供たち――彼らへ恩を売りつつ育てたら、実に良い手駒になりそうですね?
「……姉御?」
……あ、便利そうだよね、うん。
リラちゃんたちに心おきなくのびのびと育ってもらうためにも、家族の面倒も見なくっちゃね。
ちょっと契約魔法のせいか思考が変になりかけたけども、そういうことのはずだよね。
顔の良い男女。
特に幼い女の子。
さらには貴族が孕ませて捨てた女性の子供。
あるいは頭が良い子。
そういう子たちを――――――
「――悪徳貴族が見目麗しい子供を、『遊ぶために』男女問わず連れて行くと……特に孤児は、帰らないと。ほう……」
僕は普段滅多に怒らないのに、なんだか異様に胃がむかむかしてきた。
こんなにも怒ったことは、前世でもそうそうないレベルで。
覚えてないけども。
「ひぃっ……!?」
「周囲の小石が……!?」
「地鳴りがしてきたぞ!?」
「ま、まさか、怒りだけで魔力が……!?」
「――――――話しなさい」
「も、もう話しました! これ以上は――――」
これは、ジュリオン様の――多分はエリート貴族としての意識が、怒っている。
恐らくは自分の――お父さんのだけども――領地で好き勝手されたことに対して。
僕の――前世の市民としての意識が、怒っている。
――年端もいかない子供への、一方的な犯罪に対して。
かちり。
僕たちの心が――意識が同調する感覚。
「そのゴ――虫ケラ共の住処を。おおよそは分かっているはずです」
「ひぃっ!?」
「あ、コイツ、漏らしやがった!?」
ギャラリーがうるさい。
けども、そんなことはどうでも良い。
「……あの、それを知って……?」
「――――――もちろん、今から磨り潰すためですが、何か?」
「ぴぃっ!?」
あ、リラちゃんが泣きそう。
……子供を怖がらせちゃうのは大人失格だ。
怒っちゃったときこそにっこり笑わないとね。
「ひぃっ……」
「笑って……!?」
「なんと恐ろしい笑顔なんだ……」
……なんかもう、聞いちゃった以上にはその貴族さんへ天誅――じゃないじゃない、文句、抗議を言いに行かないと体が収まらなくなっちゃったらしい。
僕も同じ意見だから良いけども……ジュリオン様ってば、自分が関係無い場面では意外と良い人だったりするのかな。
あ、いや、僕はジュリオン様の前世の存在なんだから実質的には僕の魂的なのの怒りポイントが同じなだけかな。
そんなことを考えていたら、ちょっとだけ落ち着いてきて周りが見えてくる。
……ちょっと怒っただけで、なぜかみんなが異様に怖がってる。
これはいけない、革命の兆しがまた産まれちゃう。
せっかく摘み取ったはずなのに、また産まれちゃう。
「あ、ま、待ってくれ……ええと、お嬢様! その前に俺たちの――」
顔が真っ青――だけども声を上げてくれたテオくんのおかげで、完全に怒りが収まってきた。
……ジュリオン様関係なく、子供ボディだから感情爆発しやすいのかなぁ。
「――ああ、先ほどの、あなたたちが養っていた子たちの件ですね」
しゅううう。
そうだった、この子たちが居なくなったら困る子たちが居るって話だったね。
ならまずはそっちを片づけてからだ。
「案内してください。……いえ、今は怒っていませんよ。ごめんなさい、怖がらせて」
「ちびるとこだった……」
「リラ? こんな場面で漏らすなよ? 頼むからな?」
「ごめん、嘘ついた。ちょいちびった。そのへんで洗ってきて良い?」
「お前……」
しっかり者のテオくん、あと涙目のおでこちゃんに着いていこう。
あ、漏らしちゃったのはしっかり洗ってきてね。
◇
「……そうですか。あなたたちが盗んだお金で、この子たち10人ほどを養っていたと」
「は、はい! あ、でも、欲ばったりは――姉御相手以外は、何回かしか……」
「ですからその……怒らないでほしい……あ、いや、お怒りにならないでほしいんですが……」
「生きるためですから怒りませんよ。怒りませんが……」
リラちゃんとテオ君の根城。
……そこには確かに、リラちゃんよりも幼かったり――明らかに病気な子が。
孤児同士の絆なのか、それとも共同体としての義務なのか。
とにかくこの兄妹は、この孤児たちのスラム街には不可欠な存在だったらしい。
うん、確かにこの世界「生きるのは自前でなんとかしろ」ってスタンスだからね……福祉なんてないんだ。
だからこそ、盗みを働くしかない。
衛兵とか町の人たちに諦められる程度の、こそ泥とかの範囲で。
その塩梅ははたして年上の住人たちからの知恵か、それともこの子たちのものか。
孤児が、ギルドで働けば良いっていう情報にアクセスできるわけがないもんね。
あったとしたって、孤児ってだけで大変な思いもするだろうし。
「………………………………」
世界を知ってる商人たちが「かなり上等」って言ってたこの領ですらこれだと、他の領は一体どうなっているんだ、とも思うけども。
――それはともかくとして。
貧民出身の子供たち――彼らへ恩を売りつつ育てたら、実に良い手駒になりそうですね?
「……姉御?」
……あ、便利そうだよね、うん。
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