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5章 女装して国の裏を堕とした
78話 唐突な魔王ルートRTA疑惑
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どうしよう。
変態さんってのは、良い意味でも変態さんだったらしい。
体の変態成分は子供を手籠めにするために全力を、頭の変態成分はそれを隠しつつ王国じゅうに張り巡らせたスパイ――いや、防諜組織で魔族の暗躍を刈り取るために全力を。
……前世の知識が言っている。
有能な変態ほど迷惑な存在は無いと。
だって切りたくても切れない理由があるんだから。
「……これを、あなたが全て?」
それでも僕は諦めない。
聞けば男の子でも食べてたみたいだし、だからジュリオン様のおしりが危ういところだったんだ。
功績を考えても、それでも処罰できる理由を探さないと――。
「はいぃ!!」
「ひっ……」
そんな考えは吹き飛んだ。
もんのすごく嬉しそうな顔がぐりんっと僕を下から見上げてくるインパクトで、思わずに悲鳴が出ちゃったし腰も引けた。
怖い。
女の子みたいな悲鳴出ちゃったけど、今はそんなのが気にならないくらい怖い。
「全ては貴女様のご指示の通りに……どうか! どうかひとこと『よくやった』と……!」
「えっ」
待って、聞いてない。
僕、命令なんてしてない。
周囲の子たちの視線が痛い。
やめて、僕を見ないで。
冤罪なんだ、言いがかりなんだ。
「『よくやった』と……! 儂はそれだけを生き甲斐にしてきたのでございます……!」
「い、いえ……」
「『よくやった』と……! 足を何時間でも舐めますから、どうか――」
「――よ、よくやった! だから舐めなくて良い!」
ぐわっ。
ただでさえインパクトの極大な顔が、僕に近づいてきて思わずで叫んじゃった。
嫌だよ、変態さんに足べろべろされるのとか!?
絶対ご褒美にしかならないだろ!?
「直々のねぎらいを……ぐふぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「ひぃっ!?」
這いつくばったまま白目を剥いて――あ、ひっくり返った――びくんびくんと痙攣しているおじさんのインパクト。
これ、ジュリオン様が見てたらまた心停止でもするんじゃないかってくらいの衝撃だよね。
「ご、ご主人様が……」
「な、なにこれ……」
「あの子、何……?」
「あのご主人様に、あんなことまでさせるだなんて……?」
ひそひそと――自分たちをさんざんいたぶってきたはずの太っちょさんが、それはもう情けないどころじゃない醜態を晒している。
しかもその相手は、自分たちと変わらない歳の女の子――に見えるだろう僕。
……あれ?
これ、対処法間違えると僕が悪の親玉に見える?
ジュリオン様魔王ルートRTAになっちゃう?
え?
僕、それといちばん遠い道を選んでたつもりなのに、実はばく進してた?
僕はもうおしまい?
どうあがいても手遅れ?
まだ何もしてないのに?
え……?
「お、お前たちぃ……」
「「「………………………………!」」」
白目を剥きながらひっくり返ってセミファイナルみたいになってる悪徳貴族だった存在の呼びかけに――たぶん新鮮な恐怖も手伝ってだろう、部屋中の子たちが身構える気配。
ていうか白目でしゃべるの、怖いからやめて。
汗とかよだれとか涙とか鼻水とかをまき散らしながら震えながら言うのはやめて。
「このお方がぁ、新しい主人だぁ……儂などへよりも敬意を払えぇ……儂が命ずる、儂の敬愛するこのお方の命令には絶対遵守だぁ……」
「「「は……はいっ!」」」
待って、やめて。
まるで魔王軍幹部みたいな言い回しやめて。
「魔王様のために良かれと思ってやっておきました!」とか魔王ジュリオン様でぽんこつさんがやらかしてたみたいなのはやめて。
あの人の方がまだ見た目だけは良い分マシだからやめて。
お願い。
「朝から晩まで尽くせぇ……人生の全てを尽くし捧げろぉ……」
やめて、お願い。
「食事の世話、風呂の世話、夜の世話……その全てで、教え込んできた全てを捧げるのだぁ……ぐふっ」
「「「ご……ご主人様……!」」」
やめて、さんざんひどい目に遭わされてきた子たちが溜め尽くしてるであろうヘイトを僕に投げつけるのやめて。
「まるで僕がこうしろって命令してたかのような」いいがかりはやめて。
なんでこんなことになったんだ。
僕はただ、巻き込まれたから仕方なく変態悪徳貴族を成敗しようと企んだだけだったのに。
なんで、どうして。
………………………………。
僕……世界の運命から嫌われてるジュリオン様に生まれ変わってるから、なにしてもこうなるのかなぁ。
思わずで上を向いた僕の頬を――生暖かい雨が、ほろりと流れた。
ああ。
涙って――絶望しても流れるんだね。
そして、流しても心は癒やされないんだね。
僕はひとつ大人になった。
もう手遅れだけども。
「……あ、あの……」
「はい……」
おずおずと――さっきまでとは違い、警戒をあらわにしているメイドお姉ちゃん。
僕は悲しい。
さっきまで慈愛の瞳だったのに、今や恐怖の色が混じっているんだもん。
子供からの視線って……刺さるよね。
「貴女は、一体……?」
「それが……分からなくて……」
分かってたまるか、こんなもん。
「ご主人様と以前に……? でも、そのころのあなたはもっと子供で……」
「はい、5歳くらいでしたね……」
そうだよ、子供だったんだ。
中身成人男性とかいう詐欺じゃなく、本物のジュリオン様っていうおばかわいいクソガキもといお子様だったんだ。
こんな命令を出せるはずがない、良くも悪くもピュアな子供だったんだ。
そんな子供は、もう存在しない。
するのは子供詐欺な僕だけだ。
ああ、そうか。
そうなんだ。
これは、きっと――世界からの罰。
ジュリオン様っていう悪を死なせなかったから、僕が代わりの罪を背負わされる運命なんだ。
ああ。
変態さんってのは、良い意味でも変態さんだったらしい。
体の変態成分は子供を手籠めにするために全力を、頭の変態成分はそれを隠しつつ王国じゅうに張り巡らせたスパイ――いや、防諜組織で魔族の暗躍を刈り取るために全力を。
……前世の知識が言っている。
有能な変態ほど迷惑な存在は無いと。
だって切りたくても切れない理由があるんだから。
「……これを、あなたが全て?」
それでも僕は諦めない。
聞けば男の子でも食べてたみたいだし、だからジュリオン様のおしりが危ういところだったんだ。
功績を考えても、それでも処罰できる理由を探さないと――。
「はいぃ!!」
「ひっ……」
そんな考えは吹き飛んだ。
もんのすごく嬉しそうな顔がぐりんっと僕を下から見上げてくるインパクトで、思わずに悲鳴が出ちゃったし腰も引けた。
怖い。
女の子みたいな悲鳴出ちゃったけど、今はそんなのが気にならないくらい怖い。
「全ては貴女様のご指示の通りに……どうか! どうかひとこと『よくやった』と……!」
「えっ」
待って、聞いてない。
僕、命令なんてしてない。
周囲の子たちの視線が痛い。
やめて、僕を見ないで。
冤罪なんだ、言いがかりなんだ。
「『よくやった』と……! 儂はそれだけを生き甲斐にしてきたのでございます……!」
「い、いえ……」
「『よくやった』と……! 足を何時間でも舐めますから、どうか――」
「――よ、よくやった! だから舐めなくて良い!」
ぐわっ。
ただでさえインパクトの極大な顔が、僕に近づいてきて思わずで叫んじゃった。
嫌だよ、変態さんに足べろべろされるのとか!?
絶対ご褒美にしかならないだろ!?
「直々のねぎらいを……ぐふぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「ひぃっ!?」
這いつくばったまま白目を剥いて――あ、ひっくり返った――びくんびくんと痙攣しているおじさんのインパクト。
これ、ジュリオン様が見てたらまた心停止でもするんじゃないかってくらいの衝撃だよね。
「ご、ご主人様が……」
「な、なにこれ……」
「あの子、何……?」
「あのご主人様に、あんなことまでさせるだなんて……?」
ひそひそと――自分たちをさんざんいたぶってきたはずの太っちょさんが、それはもう情けないどころじゃない醜態を晒している。
しかもその相手は、自分たちと変わらない歳の女の子――に見えるだろう僕。
……あれ?
これ、対処法間違えると僕が悪の親玉に見える?
ジュリオン様魔王ルートRTAになっちゃう?
え?
僕、それといちばん遠い道を選んでたつもりなのに、実はばく進してた?
僕はもうおしまい?
どうあがいても手遅れ?
まだ何もしてないのに?
え……?
「お、お前たちぃ……」
「「「………………………………!」」」
白目を剥きながらひっくり返ってセミファイナルみたいになってる悪徳貴族だった存在の呼びかけに――たぶん新鮮な恐怖も手伝ってだろう、部屋中の子たちが身構える気配。
ていうか白目でしゃべるの、怖いからやめて。
汗とかよだれとか涙とか鼻水とかをまき散らしながら震えながら言うのはやめて。
「このお方がぁ、新しい主人だぁ……儂などへよりも敬意を払えぇ……儂が命ずる、儂の敬愛するこのお方の命令には絶対遵守だぁ……」
「「「は……はいっ!」」」
待って、やめて。
まるで魔王軍幹部みたいな言い回しやめて。
「魔王様のために良かれと思ってやっておきました!」とか魔王ジュリオン様でぽんこつさんがやらかしてたみたいなのはやめて。
あの人の方がまだ見た目だけは良い分マシだからやめて。
お願い。
「朝から晩まで尽くせぇ……人生の全てを尽くし捧げろぉ……」
やめて、お願い。
「食事の世話、風呂の世話、夜の世話……その全てで、教え込んできた全てを捧げるのだぁ……ぐふっ」
「「「ご……ご主人様……!」」」
やめて、さんざんひどい目に遭わされてきた子たちが溜め尽くしてるであろうヘイトを僕に投げつけるのやめて。
「まるで僕がこうしろって命令してたかのような」いいがかりはやめて。
なんでこんなことになったんだ。
僕はただ、巻き込まれたから仕方なく変態悪徳貴族を成敗しようと企んだだけだったのに。
なんで、どうして。
………………………………。
僕……世界の運命から嫌われてるジュリオン様に生まれ変わってるから、なにしてもこうなるのかなぁ。
思わずで上を向いた僕の頬を――生暖かい雨が、ほろりと流れた。
ああ。
涙って――絶望しても流れるんだね。
そして、流しても心は癒やされないんだね。
僕はひとつ大人になった。
もう手遅れだけども。
「……あ、あの……」
「はい……」
おずおずと――さっきまでとは違い、警戒をあらわにしているメイドお姉ちゃん。
僕は悲しい。
さっきまで慈愛の瞳だったのに、今や恐怖の色が混じっているんだもん。
子供からの視線って……刺さるよね。
「貴女は、一体……?」
「それが……分からなくて……」
分かってたまるか、こんなもん。
「ご主人様と以前に……? でも、そのころのあなたはもっと子供で……」
「はい、5歳くらいでしたね……」
そうだよ、子供だったんだ。
中身成人男性とかいう詐欺じゃなく、本物のジュリオン様っていうおばかわいいクソガキもといお子様だったんだ。
こんな命令を出せるはずがない、良くも悪くもピュアな子供だったんだ。
そんな子供は、もう存在しない。
するのは子供詐欺な僕だけだ。
ああ、そうか。
そうなんだ。
これは、きっと――世界からの罰。
ジュリオン様っていう悪を死なせなかったから、僕が代わりの罪を背負わされる運命なんだ。
ああ。
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