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5章 女装して国の裏を堕とした
86話 あれが……お姫さま その2(by リラ)
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あたいは、しくった。
あたいは、ドジった。
――「お姫様」のことなんて忘れ切った、何日か後。
あたいは――たまたま。
たまたま目に着いた、首から提げる財布を取り出してた子供の手元――その高そうな財布と箱が気になって、ほとんど無意識で――まるで吸い寄せられるように、手を伸ばしちまって。
それがあんときの綺麗な貴族の女の子だって、盗んじまってから目が合って――思わずで逃げてるあいだに思い出して。
あたいには、多分冒険者たちが持っているっていう「何か」がある。
気がついたときには、ちょっとだけだけど大人よりも速く走れるようになってた。
気がついたときには、ちょっとだけだけど人に気づかれずに触ったりできるようになってた。
だから、こそ泥をするようになった。
他の、そういうのが得意な子に混ぜてもらって。
うまくやれるようになったら、みんながちょっとずつ多くごはんを食べられる。
だから、兄貴が止めるように言ってきても聞かずに続けていた。
あたいはヘマをこいたことは――そんなにない。
10のうち9はそのまま歩いて逃げても気づかれないし、残りの1だって、相手が誰かに呼び止められたりくしゃみしたりっていう「運が悪かった」ときだけだ。
だから、びっくりしちまったんだ。
首から提げてるのの紐を切って手に収めた瞬間に――その宝石みたいな赤い目であたいの顔を見られて。
だけど、逃げ切れると思った。
だって、いつもそうだったから。
けど――逃げてる途中から、町の外に居るっていうモンスターに追われてるみたいな感覚で、追いつかれつつあることに気がついた。
「逃げた先で盗んだもん投げつけてなんとか逃げ切ろう」、そう思ったら兄貴が居て――あたいはともかく、兄貴はもう逃げ切れないって悟って。
だから、「済まねぇ」ってそのまま返して許してもらおうと思った。
けど――。
「――――――止まりなさい。死にたいなら動きなさい」
――怖すぎて、動けなくなった。
話には聞いていた。
貴族さまは、貴族さまになる理由があるんだって。
子供であっても、衛兵が束になっても勝てない強力な魔法を使えるんだって。
――でもさぁ。
「――――投げ・マイクロ極小ミジンコなめくじエビルジャッジメント」
……まさか、あたいとおんなじくらいの子が――後で聞いたら50軒くらいの家をぶっ壊すほどの大魔法、ぶっ放せるだなんて――誰だって、想像できねぇだろ?
あと、ちびったのもしょうがねぇだろ?
だって、ありゃあもう「死神」そのものじゃねぇか……あ、またぱんつがあったかくなった……。
◇
何が起きたのかは、よく分かんなかった。
まぁ兄貴が分かってるみたいだったから大丈夫だと思う。
――その子は、いや、姉御は――怖いけど優しい女の子だった。
貴族の中でも金持ってる家の娘な服を着てて、綺麗に光る白髪で。
顔なんか、まるで生きてる人形みたいに整っていてさ。
「はぇー」
なんかすごい魔法をぶっ放してスラム街を壊滅させた姉御は、あたいたちにも何かの魔法を掛けたらしい。
けど、周りのやつらの話を聞く限り、どうやら姉御のとこで働けばうまいもん食わせてくれてあったかい寝床をくれるらしい。
しかも、ガキたちの分もだ。
こんな金持ちが、居たんだ。
こんな貴族が、居たんだ。
しゃべり方はときどきこぇぇけどそれ以外は落ち着いていて優しいし、殴ったりもしてこないし。
――大切なもんだったらしい財布とかを盗んだのに、兄貴によるとびっくりするくらい楽な仕事してれば許してくれるらしい。
しかも10年も面倒を見てくれるんだ。
ガキたちもまとめて。
こんな女の子が……歳もそう変わらないのに、まるで大人みたいに頭が良くて強くって、なんでもできて。
やっぱ貴族ってすげぇな。
「……なぁ兄貴。これ、夢じゃねぇよな? 騙されたりもしてねぇよな?」
「気まぐれでも良いんだ、契約魔法で縛ってくれた以上あの人は僕たちを奴隷とか見世物としてではなく、多分……屋敷の庭掃除とか馬の世話とか、そういうのをさせてくれるらしい。リラ、くれぐれも変なこと言って怒らせるなよ」
「あい!」
「……不安だ……」
兄貴は心配性だけど、あたいは心配してない。
だって――あんな魔法使えるのに、あたいたちどころかスラム街を半壊させたのに「誰も殺さなかった」んだから……絶対にいいやつに決まってるんだ、あの姉御は。
◇
そんな姉御は、やっぱりいいやつだった。
だって、さらわれた子たちを助けに――なぜかきらきら光る銀髪になってまでさらわれる役やったんだから。
しかもあっという間に連れ去られて、姉御の呼んだたくさんの人が屋敷に集まって。
んで、
「……ぐすっ……」
「 」
「あ、姉御……?」
あんなに自分への自信があふれててかっこ良くて、こぇぇけど優しくて勇敢な姉御。
あたいには無理だろうけど、こんな風な「姉御」って感じの憧れる大人の女になりてぇな。
そう思ってた子が――へそとかいろいろ出ててなぜかどきどきするようなぺらっぺらの服を着てて、あたいたちに向かって振り向いたその顔は真っ赤で汗ばんでいて。
あたいたちはみんな、なぜかよく分かんない感覚で動けなくなったんだ。
兄貴なんかは白目剥いて鼻血出してたけど、後ろの綺麗な姉ちゃんはもっとすごかった。
なぜかあたいまでどきっとして熱くなってくるような、あと、思わず触りたくなるような泣き顔と泣き声で、返事をしてて。
――さっきまでのかっこいい女の子が、こんなにも弱そうな感じになるだなんて。
そう思ったら――よく分からない熱で、でこが真っ赤になった。
あたいは、ドジった。
――「お姫様」のことなんて忘れ切った、何日か後。
あたいは――たまたま。
たまたま目に着いた、首から提げる財布を取り出してた子供の手元――その高そうな財布と箱が気になって、ほとんど無意識で――まるで吸い寄せられるように、手を伸ばしちまって。
それがあんときの綺麗な貴族の女の子だって、盗んじまってから目が合って――思わずで逃げてるあいだに思い出して。
あたいには、多分冒険者たちが持っているっていう「何か」がある。
気がついたときには、ちょっとだけだけど大人よりも速く走れるようになってた。
気がついたときには、ちょっとだけだけど人に気づかれずに触ったりできるようになってた。
だから、こそ泥をするようになった。
他の、そういうのが得意な子に混ぜてもらって。
うまくやれるようになったら、みんながちょっとずつ多くごはんを食べられる。
だから、兄貴が止めるように言ってきても聞かずに続けていた。
あたいはヘマをこいたことは――そんなにない。
10のうち9はそのまま歩いて逃げても気づかれないし、残りの1だって、相手が誰かに呼び止められたりくしゃみしたりっていう「運が悪かった」ときだけだ。
だから、びっくりしちまったんだ。
首から提げてるのの紐を切って手に収めた瞬間に――その宝石みたいな赤い目であたいの顔を見られて。
だけど、逃げ切れると思った。
だって、いつもそうだったから。
けど――逃げてる途中から、町の外に居るっていうモンスターに追われてるみたいな感覚で、追いつかれつつあることに気がついた。
「逃げた先で盗んだもん投げつけてなんとか逃げ切ろう」、そう思ったら兄貴が居て――あたいはともかく、兄貴はもう逃げ切れないって悟って。
だから、「済まねぇ」ってそのまま返して許してもらおうと思った。
けど――。
「――――――止まりなさい。死にたいなら動きなさい」
――怖すぎて、動けなくなった。
話には聞いていた。
貴族さまは、貴族さまになる理由があるんだって。
子供であっても、衛兵が束になっても勝てない強力な魔法を使えるんだって。
――でもさぁ。
「――――投げ・マイクロ極小ミジンコなめくじエビルジャッジメント」
……まさか、あたいとおんなじくらいの子が――後で聞いたら50軒くらいの家をぶっ壊すほどの大魔法、ぶっ放せるだなんて――誰だって、想像できねぇだろ?
あと、ちびったのもしょうがねぇだろ?
だって、ありゃあもう「死神」そのものじゃねぇか……あ、またぱんつがあったかくなった……。
◇
何が起きたのかは、よく分かんなかった。
まぁ兄貴が分かってるみたいだったから大丈夫だと思う。
――その子は、いや、姉御は――怖いけど優しい女の子だった。
貴族の中でも金持ってる家の娘な服を着てて、綺麗に光る白髪で。
顔なんか、まるで生きてる人形みたいに整っていてさ。
「はぇー」
なんかすごい魔法をぶっ放してスラム街を壊滅させた姉御は、あたいたちにも何かの魔法を掛けたらしい。
けど、周りのやつらの話を聞く限り、どうやら姉御のとこで働けばうまいもん食わせてくれてあったかい寝床をくれるらしい。
しかも、ガキたちの分もだ。
こんな金持ちが、居たんだ。
こんな貴族が、居たんだ。
しゃべり方はときどきこぇぇけどそれ以外は落ち着いていて優しいし、殴ったりもしてこないし。
――大切なもんだったらしい財布とかを盗んだのに、兄貴によるとびっくりするくらい楽な仕事してれば許してくれるらしい。
しかも10年も面倒を見てくれるんだ。
ガキたちもまとめて。
こんな女の子が……歳もそう変わらないのに、まるで大人みたいに頭が良くて強くって、なんでもできて。
やっぱ貴族ってすげぇな。
「……なぁ兄貴。これ、夢じゃねぇよな? 騙されたりもしてねぇよな?」
「気まぐれでも良いんだ、契約魔法で縛ってくれた以上あの人は僕たちを奴隷とか見世物としてではなく、多分……屋敷の庭掃除とか馬の世話とか、そういうのをさせてくれるらしい。リラ、くれぐれも変なこと言って怒らせるなよ」
「あい!」
「……不安だ……」
兄貴は心配性だけど、あたいは心配してない。
だって――あんな魔法使えるのに、あたいたちどころかスラム街を半壊させたのに「誰も殺さなかった」んだから……絶対にいいやつに決まってるんだ、あの姉御は。
◇
そんな姉御は、やっぱりいいやつだった。
だって、さらわれた子たちを助けに――なぜかきらきら光る銀髪になってまでさらわれる役やったんだから。
しかもあっという間に連れ去られて、姉御の呼んだたくさんの人が屋敷に集まって。
んで、
「……ぐすっ……」
「 」
「あ、姉御……?」
あんなに自分への自信があふれててかっこ良くて、こぇぇけど優しくて勇敢な姉御。
あたいには無理だろうけど、こんな風な「姉御」って感じの憧れる大人の女になりてぇな。
そう思ってた子が――へそとかいろいろ出ててなぜかどきどきするようなぺらっぺらの服を着てて、あたいたちに向かって振り向いたその顔は真っ赤で汗ばんでいて。
あたいたちはみんな、なぜかよく分かんない感覚で動けなくなったんだ。
兄貴なんかは白目剥いて鼻血出してたけど、後ろの綺麗な姉ちゃんはもっとすごかった。
なぜかあたいまでどきっとして熱くなってくるような、あと、思わず触りたくなるような泣き顔と泣き声で、返事をしてて。
――さっきまでのかっこいい女の子が、こんなにも弱そうな感じになるだなんて。
そう思ったら――よく分からない熱で、でこが真っ赤になった。
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