α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ

文字の大きさ
15 / 30
幼少期編

波乱の予感

しおりを挟む
 最近、どうもレオンの様子がおかしい。



 まず、毎朝寮で一緒に食事をとっていたのに断られることが多くなった。
 早く目が覚めたから、軽食を食べてしまってお腹が空いていないから、今日の授業の予習をするのに教科書を学校に置き忘れたから先に行く。
 そんな理由をつけて、朝食の時間をずらすようになってきたのだ。
 
 はじめは、まさか避けられているなんて思っていなかった。だから、鍛錬の時間を早めたりと、俺のルーティンをレオンとまた一緒にいられるように調整してみた。
 レオンの不規則な時間に合わせる度に、渋い顔をされた。今ならわかる。避けていたのに時間を合わせてきた俺の行動に渋い顔をしていたのだ。



 まだある。
 前までは、お互い学校でオメガや女生徒が近づいてきたら自衛のために遠ざけていたのに、最近レオンはそれをしない。
 もちろん、自分に触れようとする者は冷たくあしらうものの、俺へ近づくオメガや女性にはある程度の寛容さを見せたのだ。

 まるで、レオンが俺に積極的につがいをあてがおうとしているような行動に、もやもやする。
 いや、正確には、レオンが、俺たちの間に第三者を招き入れようとしていること自体に、だ。


 それから、微妙に距離を取られるのだ。
 今までは肩が触れ合うくらいすぐ隣を歩いていたのに、今は拳一個分あけられる。
 散々俺の部屋に入り浸っていたのに、ぱたりと来なくなる。逆に俺がレオンの部屋に行けば鍵が変えられていた。
 つまり、俺が持っていた合鍵がただの鉄くずになったのだ。

 この件をきっかけに、今までのこと全てがレオンが俺を遠ざけようとして行ったことだとわかってしまった。





「鬱だ……」
「それでなんで俺のところに来ようと思ったんだ」

 目の前には、金の髪に赤い瞳が特徴的なエドワード第一王子殿下がいらっしゃる。
 レオンに避けられているかもしれないと言う現実に耐え切れず、俺はディラン先輩とセルジュ先輩のいない今の学園で唯一信頼できる王子殿下方の元へ突撃したのだ。

 突如として、放課後のティータイムに乱入してきた俺に目を丸くさせたものの、すぐにキッと睨みつけてきた王子殿下。
 その直後に「レオンが反抗期になっちゃった!!!」とクソデカボイスで叫ぶ俺。
 あっけにとられるエドワード殿下。首をひねるヴァレスタイン伯爵子息であるフィリップと、顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ俺に駆け寄るアシュフォード子爵子息であるヴァルター。二人は、あのお茶会以降エドワード殿下に付き従う学友だ。
 カオスである。

 フィリップもヴァルターもいい子なんだ。ほんと。
 俺を追い出したそうにしているエドワード殿下に、彼らが眉尻をさげてうるうると縋りついてくれたおかげで俺は今ここにいる。



「鬱だァ…………ッ」
「あのぉ。カイル先輩何があったんですかぁ?」
「聞いてくれるか、ヴァルター。レオンに寮の部屋の合鍵替えられた」
「おい、ヴァルターその阿呆をこの部屋からつまみ出せ!!」
 思わず叫んだエドワード殿下を「まあまあ」と言ってなだめるフィリップ。
 
 あのお茶会以降、エドワード殿下は非常にツンだ。でも、アルファに覚醒してからいろんなことに鈍感になった気がする。
 昔はエドワード殿下とその背後にいる王妃陛下や国王陛下にビビっていたが、今では毛を逆立てた猫ちゃんにしか思えない。
 現在十一歳のエドワード殿下も騎士家系であるフィリップもアルファに覚醒したらしいが、残念ながら脅威に感じない。子猫の威嚇のようだ。
 ちなみに間延びしたしゃべりをするヴァルターはベータらしい。うん。我の強い殿下とフィリップに挟まれて動じない辺りそんな感じがするね。

「ひどいじゃないですか、エドワード殿下。仮にも先輩ですよ、俺」
 つんつんとつま先で殿下の足をつつくと思い切り踏まれそうになる。避けたけど。
 しかし、殿下はそれも気にくわないらしい。
「俺は王子だぞ?そのお茶会に乱入しといてそれを言うのか!?」
「まぁ、学園じゃ年功序列が基本なんで」
「フィリップ!!その阿呆をつまみ出せ!!」
 血の気の多い猫ちゃんだコト。
 しかしながら、フィリップの父親であるヴァレスタイン伯爵は近衛騎士副団長。近衛騎士団長であったグレイフォード侯爵家のディラン先輩とは違って我が家の完全なる部下なのである。

「すみません、エドワード。俺は騎士の家系なんで無理ッス!」
「役立たず!ヴァルター!」
「すみません、エドワード。カイル先輩のバックにいるレオンハルト先輩が怖いんでパスでぇ。僕の父親宰相室の文官なんですよねぇ」
「その宰相の上にいる陛下が俺の父だぞ!?」
「「すみません、エドワード。ご期待に沿えず」」
「役立たずめ!!!」

 何だコイツら仲いいな。

 

 しかし、その様子を見ていると、仲が良かったはずのレオンがなぜか離れていこうとしている俺の現状とあまりにも違っていて。


「ぅッ、なぜなんだ、レオン……ッ」

「あー、もう。鬱陶しい!!あの冷徹男に見捨てられたんなら、この俺のものになればいいだろうが!」
 どや顔を披露する殿下。その両隣でフィリップとヴァルターが「あーあ」と言わんばかりにあきれ顔をしていた。 



「前からイイ男だと思っていたんだ。レオンハルトよりも俺の方がずっとお前に似合いだろう?騎士としての品格も、アルファとしての格の強さも。王となる俺の隣に並び立つにふさわしい!」
「はぁ、まぁそうあれと言われてますんで」
 なんせ、ウチは代々王国騎士団統括団長を輩出する家系だ。
 エドワード殿下が国王陛下になった暁には、公式行事で俺とその時の近衛騎士団長が隣に立って警護することになる。
 その時に俺が粗相でもして陛下の、ひいては国の顔に泥を塗ることは許されない。
 ゆえに、父からは常にそれを意識しろとは言われているのだ。



「そうだろう!元々、お前は両陛下から俺に与えられた男なのだからな。いずれ、お前は俺に腹を見せざるを得なくなる。何も考えず、ただ俺のものになればいい」
「まぁ将来的にはそうなりますね」
 俺の返事にテンションが高くなった殿下。
 確かに、王妃陛下の本来の要請では俺に学友、ひいては側近になれとのことだったしな。
 そうでなくとも、父の跡を継いだら俺は陛下の一番の剣であり続けなければならない。
 腹見せて服従するのはあたりませだろう。



「つまりは、だ。レオンハルトなんぞによそ見をせず、俺だけを見ているといいんだ。さぁ、カイル。俺を選べ!」
 なんともまぁ、情熱的だコト。でも、俺が欲しいのは私生活で隣に立ってくれるレオンだしなぁ。
 それとこれとは話が違うんだよなぁ。

 そう思い、断るために口を開こうとしたその時。


 バンッ!!と大きな音を立てて王子殿下のサロンの扉が蹴破られた。
 咄嗟に立ち上がりすぐさま殿下を庇ったが、そこに立っていたのは他でもないレオンであった。
 らしくない行動に、どうしたのかと問おうとしたその瞬間。





「アルファの男でいいなら僕でもいいはずだろうッ!!!!!」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~

蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。 転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。 戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。 マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。 皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた! しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった! ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。 皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、 両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。 フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。 丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。 他サイトでも公開しております。 表紙ロゴは零壱の著作物です。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

処理中です...