12 / 164
第五話①『友達とお出かけ』
しおりを挟む翌日以降、形南とは定期的に連絡を取っていた。あれ以降会えてはいなかったものの時々電話をしたり、レインで何の変哲もないやり取りを繰り返していた。
彼女とは間違いなく友人と呼び合えるようなそんな関係になれており、そんな事が心から嬉しかった。
そして平尾との進展は中々に順調のようだった。形南は平尾に少しずつアクションを起こし、彼からも必ず反応が返ってくるのだと嬉しそうに話していた。そうして数日が経ち、形南と遊びに出掛ける日がやってきた。
「これでよしっと」
早朝の魔法少女活動を終え、出かける準備を終えた嶺歌は鏡に映った自分の姿を再度確認する。今日も自分で満足できる範囲のお洒落さを演出できている。
友人のヘアアレンジなども度々行っている嶺歌には髪型を整える事も得意だった。
肩まで伸びたボブヘアを今日はコテアイロンで波巻きウェーブにアレンジし、数本のキラキラと光るヘアピンをこめかみに施している。
嶺歌は約束の時間を確認するとそのまま玄関へと向かった。
「おはよう御座いますですの」
インターホンが鳴り、テレビドアホンを確認するとそこにはいつもの制服姿とは違った形南の姿があった。
約束より早く訪れた彼女に驚いたもののすぐに玄関を出てエントランスまで走るとそこには上品に佇む形南がいた。
彼女は目が合うと優しげに微笑み、手を振ってくる。
「おはようあれな。久しぶりだね、待たせてごめん」
謝罪と共にそう挨拶を返すと彼女は先ほどよりも一層口元を緩め、嬉しそうに微笑んだ。
「ええ、お久しぶりね。私本日を楽しみにしていましたの。私が早く来てしまったのでどうか気になさらないで」
形南はそう言うと直ぐに嶺歌の腕に自身の腕を絡めてエントランスの先に停めてあるリムジンまで案内してくれる。
リムジンの前にはいつものように執事の兜悟朗が控えており、嶺歌と形南が近づくと車の扉を開けてくれた。
「お早う御座います和泉様」
「おはようございます。いつも有り難うございます」
「とんでも御座いません。どうぞこちらへ」
兜悟朗は紳士的な笑みを向け、車内に入るようにと誘導してくる。形南も「お先にお乗りになってね」と背後から言葉を掛けてきたため、そのままリムジンの中に乗り込んだ。
そして素早くしかし丁寧に扉が閉められると続いて形南が乗車し、最後に兜悟朗が運転席に着席する。そして目的地へと車が動き始めた。
形南と初めてのお出かけに選んだ場所はハリネズミカフェだった。実は形南とは連絡を取り合っている際に偶然にも互いがハリネズミを好きである事を知ったのだ。
そこからはその動物の話題も増え、出掛ける際はハリネズミカフェに出向こうとそういう話になっていた。
目的地に到着した二人は兜悟朗をリムジンに残し、二人でカフェに入る。中には数十匹ものハリネズミがゲージの中におり、可愛らしい仕草を見せる様々なハリネズミが二人を出迎えてくれた。
二人でそれぞれの料金を支払い、九十分コースを選択する。これなら思う存分堪能できそうだ。
「私、現地のハリネズミカフェは初めてですの。この子たち、愛おしくて堪らないわ」
「現地って……あ、屋敷に来てもらったって事?」
「そうですの! 一週間ほどハリネズミカフェワゴンを派遣させましてよ。けれど、現地の方が活気があっていいですわね」
形南は心底嬉しそうにそんな言葉を口に出すと受付で購入していたハリネズミ用の餌であるミミズを器用にピンセットでつまみながら餌を与え始める。
動いているミミズはお嬢様である形南には不釣り合いに感じる所があったが、形南は何も問題がなさそうに平然とミミズをつまんでいた。少し意外である。
そのまま二人は各エリアに設置されているハリネズミのゲージを一つずつ訪問し、多くのハリネズミ達と触れ合った。
軍手をした状態で店員の指示に従ってハリネズミを持ち上げたり、ミミズの餌を与えたり、観察して写真を撮ったりする。
二人で癒しの根源であるハリネズミに没頭しているとあっという間に時間は過ぎていった。
長いと思い込んでいた九十分は短く、名残惜しい気持ちが生まれるほどだった。
「ああ~! 楽しくて仕方がなかったですの。ではそろそろお昼に向かいましょうか」
「ほんとあっという間だったね、ちょうどお腹空いてたからラッキー」
そんな話をしながらリムジンまで戻ると兜悟朗は二人が戻る時間を把握していたのかリムジンの前で既に立っており、目が合うと同時に丁寧なお辞儀をしてきた。
「お帰りなさいませ。形南お嬢様、和泉様。こちらへどうぞ」
「ええ兜悟朗、お留守番ご苦労様。とても楽しかったですの」
「労いのお言葉、感謝いたします。それはとても何よりなお話で御座います」
そんな会話をしながら兜悟朗は形南を車に乗せようとするが彼女は「私の前に嶺歌から乗せてあげて頂戴な」と予想外の言葉を口にした。
初めは主である形南の方から乗るべきではないのだろうか。
(今朝もそうだったけど、どうしてだろ)
そう思いつつもそれを口に出すのは憚られた。形南からの気遣いである事だけは分かるからだ。
すかさず嶺歌をリムジンに誘導する兜悟朗に大人しく従って車に乗車する。それから形南も座席へと座り、昼食を食べる目的地に向けて再び車は発進した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる