お嬢様と魔法少女と執事

星分芋

文字の大きさ
48 / 164

第十九話②『招待されて』

しおりを挟む


 そう尋ねると兜悟朗とうごろうはこんな言葉を口にする。

「問題御座いません。今回の主役は嶺歌れかさんでございます。お嬢様からはわたくしに貴女様をエスコートするよう仰せつかっております故、本日はわたくし兜悟朗が嶺歌さんをおもてなしさせて戴きます」

 そう告げて深く綺麗なお辞儀をした。

 今回は嶺歌に対する感謝の場だと形南あれなは何度も言っており、現に形南からの感謝は今日の数時間だけでたくさん受け取っている。

 しかし彼女の一番信頼している執事まで嶺歌にエスコートさせるというこの状況は、形南がどれだけの思いを嶺歌に向けてくれているのかが伝わり、それが素直に嬉しく思える。

「ですが嶺歌さん」

 そんなことを考えていると突然、兜悟朗が言葉を付け足してきた。

「パーティーの際にもし貴女様がお気に召される執事がおりましたら、何なりとお申し付け下さい。直ぐにその者と交代いたします」

「あ、はい……」

 突然な話に嶺歌は思わず頷いてしまう。

 すると兜悟朗は嶺歌の返答を聞いて直ぐに笑みを溢すと「何かありましたらお申し付け下さい」と言葉を残し、扉の近くで待機する姿勢を見せ始める。嶺歌がドレスをゆっくり選べるようにと配慮してくれている様子だった。

 その様子を見た嶺歌は再びこちらに気を配り続ける形南と兜悟朗には感謝してもしきれないとそう改めて感じ、そして胸が温かくなるのを実感していた。

 そうして形南の事を再び考える。

 これから二人で綺麗なドレスを身に纏い、楽しい話をしてパーティーを楽しめるだなんて、なんて贅沢で素敵なプレゼントなのだろう。お礼だと彼女らは口にするが、こちらが感謝してしまいたい程だ。

 嶺歌はそこまで考えると、早く形南に会うため思考を切り替えドレス選びに頭を集中させた。



「まあ嶺歌れか! なんてお似合いなの!」

 数々のドレスの中から自分の心に一番響いた青色のドレスを選出し、数人のメイドからあっという間に飾り付けてもらった嶺歌は執事の兜悟朗とうごろうにエスコートされながらパーティー会場と称された場所に到着した。

 嶺歌の選んだドレスは、胸元から袖にかけて上品な刺繍のレースが施され、ウエストで切り替えられたスカートはチュール素材が重なり美しいフレアが広がっている。膝丈のそのドレスは控えめに言っても大人びており、着用している嶺歌の心を高揚させていた。

 一足先に到着していた形南あれなはそんな嶺歌の姿を見て、甲高い声をあげるとこちらに走り寄ってくる。

 純白のドレスを身に纏った形南の姿は控えめに言っても美しく可愛らしい。まるで天界から訪れた天使のようなその姿に嶺歌は率直な感想を口にした。

「ありがと! あれなのドレスもめっちゃ可愛いー! その色のドレスあれなに似合うね」

 そう言って形南を賞賛すると彼女は嬉しそうに口元を綻ばせ、嶺歌の手を握ってきた。

「嬉しいですの! 嶺歌、兜悟朗のエスコートは問題ありませんでした? 何かあれば遠慮せず仰ってね!」

「ありがとね。でも大丈夫! 兜悟朗さん、探しても粗が出ないくらい完璧だから」

 嶺歌はそう言葉を返すと形南が「あらあら」と嬉しそうに口元に手を当て、兜悟朗は「勿体無いお言葉感謝致します」と丁重な一礼をしてくる。

 話を盛ったつもりは毛頭ないのだが、しかしこのように改まった反応をされるとどう対応したらいいのか分からなくなる。

「それでは嶺歌、お気に召した所から回りましょうか。まずはどちらに行かれたいかしら?」

 形南が沈黙を破ってくれたおかげで嶺歌は安堵した。それから彼女に言われた通り気になる所を探し、演奏が聞けるというエリアに目を向ける。

 あそこに行っていいかと尋ねると形南は勿論ですのと嬉しそうに言葉を返しそのまま演奏エリアに向かうことになった。

 そして当然なのだが兜悟朗も着いてくる。それがまた気恥ずかしく、嶺歌の顔の熱は下がるどころか更に強める要因となっていた。

 席に座ると二人の為だけに演奏者達が音楽を披露してくれた。

 そうしてその後もプロのマジシャンのマジックショーを生で拝見したり、会場を真っ暗にして天井に星座を映し出すプラネタリウムを楽しんだ。

 他にも五つ星レストランのシェフが作りたてほやほやのデザートを振る舞ってくれたりと予想外の豊富なパーティー内容にその都度感動しながら、嶺歌の気持ちは終始浮き足立っていた。



「楽しいですわね」

「うん本当! こんな豪華な一日なかなかないって」

 パーティーを一通り楽しんだ二人は一旦休憩しようとふかふかのソファに座り、雑談をしていた。

 形南あれなのエスコートをしている執事も、嶺歌れかをエスコートしてくれている兜悟朗とうごろうも今この場には居らず、完全に形南と二人きりである。

 嶺歌は自分がいつもより着飾っているせいかまるで本当にお金持ちのご令嬢になった気分だった。

 今身につけている嶺歌のドレスも、嶺歌がいるこの空間も、そして常時嶺歌をエスコートしてくれる兜悟朗も全てが非日常的だ。

「本当にありがとう! 今日の事は一生忘れないだろうなー」

 嶺歌が本心からそう呟くと形南はあらと声を上げながらくすくすと笑みをこぼす。

「今回のお礼がお気に召していただけて良かったですの」

 形南は嶺歌に目線を向けながらそのような言葉を口にした。

 嶺歌は「あれなが喜ばせようとしてくれたんだから何でも嬉しいよ」と言葉を返し笑ってみせると彼女は嬉しそうに笑いながらお礼の言葉を述べてくる。

「けれど、わたくしの最初の案を採用していたら嶺歌はきっと怒られていたと思うのですの」

「ええ? そんなことあるかな」

 形南の言葉に同意ができず嶺歌は顔を顰めた。形南にお礼をされて自分が怒るような事など、起こり得るだろうか。

 しかし数秒後に形南がその詳細を口に出し、嶺歌の思考は一変する。

「はいですの。最初の候補は高円寺院家の鍵のプレゼントでしたわ。次の候補は高円寺院家の紋章が印字された特殊なクレジットカードのプレゼントでしたの。どちらも結局お蔵入り案となりましたけれど」

「ああ、それは却下かな……」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

処理中です...