身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥

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第12章 領主の日常

第170話 エッチな感じがします

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 3人は水着のまま宿に帰った。
 先にエミリスとウィルセアのふたりが、塩と汗を洗い流すためにシャワーを浴びていた。

「ちょっとヒリヒリしますわ……」

 ウィルセアは日焼けした痕が少し赤くなっていて、お湯を浴びると沁みるようだった。

「だいぶ赤くなってますからね。とりあえず治癒はかけておきますね」
「すみません……」

 エミリスがさっと手をかざすと、赤くなっていた肌は熱が引いていく。
 代わりに、元々よりは少し小麦色っぽい色に落ち着いた。

「日焼け自体は治せないので。しばらくはちょっと黒くなっちゃいますけど」
「いえ、それは気にしませんから。それにしても……エミリスさんは全く焼けないんですね……」

 ウィルセアは同じく裸のエミリスの上から下までじっと眺めた。
 あれほど日に当たっていたのにいつもの真っ白なままの肌で、それを羨ましく思った。

「なぜか焼けないんですよね……。でも……」

 エミリスは自分の肌を見てから、焼けたウィルセアの肌と見比べて、戸惑うような声で言った。

「なんか、焼けた方が……その……エッチな感じがします……」

 水着の痕がくっきりと付いているウィルセアの肌が色っぽく見えてしまった。
 自分の胸に視線を落としたウィルセアは苦笑いする。

「あはは……見せる相手がいませんから」
「アティアス様をお貸しするわけにはいきませんし……それじゃ、私と……どうです?」
「――――ええっ⁉︎」

 舌なめずりしながらエミリスが手を伸ばすと、ウィルセアは戸惑いながら頬を染めた。
 ゆっくり近づく手を見ながら、ウィルセアは慌てていた。

(ま、まさか……本気なのでしょうか……?)

 あと少しでエミリスの手が双丘に触れるかというところで。

「……なーんて、冗談ですよー。うふふ、ウィルセアさん可愛いですね」

 手を止めて笑うエミリスを見て、ウィルセアはホッとしたような、少し残念なような、なんとも言えない気分だった。

 ◆

「美味しいですね」
「ですよねっ!」

 泊まっている部屋の1階にある料理屋で、料理を口に運んだウィルセアが感想を溢すと、エミリスも同調する。
 以前に泊まった時も美味しかったが、季節が違う今はまた料理も異なっていた。

「以前助けてくれた恩人だからな、腕をふるわせてもらうよ」
「ありがとうございますっ」

 熟年の料理長がエミリスに向かって挨拶してから、また厨房に戻っていく。

「アティアス様、以前ここでどんなことがあったんですか?」
「ああ、話すと長くなるけど」

 アティアスに聞くと、軽い調子で話し始めた。

「前にここで食事している時に借金取りが来てな。そいつらエミーに絡んできたから、そのまま海に放り込んだんだ。おしまい」
「全然長くないですね……」
「そ、そうか……?」

 どんな壮大な話なのかと期待したウィルセアだったが、あっさり終わって肩透かしを食らった。

「こんな美味しいお店なのに、客は少ないんですね。ゆっくり食べれて良いって面もありますけど……」
「だよな。もっと流行っていいと思うんだが……」
「とはいえ、ひとつの店に肩入れするわけにもいきませんし。ご自身で頑張っていただくしかないですね」

 アティアス達が宣伝すればもう少し客が入るかもしれないが、立場上あまり良くないことをウィルセアも理解していた。そういうことを気にしないのはエミリスくらいだろうか。

「まぁ、気にせずバンバン食べましょうよ」
「わかりましたわ」

 もう最初に頼んだ分をほとんど食べてしまったエミリスは、手書きのメニュー表と睨めっこしていた。
 どうせ次に言うのは「これ全部ください」なのだろう。
 そう思っていると、事実その通りになったことにアティアスは笑った。

 ◆

「はふー、お腹いっぱいです」
「私もですー」

 食事を終えて2階の部屋に戻ると、エミリスとウィルセアの2人は、ごろんとそれぞれのベッドに寝転がった。
 ベッドは部屋に2つしかなく、もちろんアティアスとエミリスが一緒に寝ることになる。

「遊び疲れましたわ。もう眠いのでお先におやすみさせていただきます」

 ウィルセアは1人広々としたベッドの上で、大きなあくびをする。
 海で泳ぐのはかなり体力を使う。
 そのうえで、お腹いっぱい食事を取って眠くなってきてしまい、ベッドに寝転がった途端もう目を開けているのが辛くなった。

「ああ、ゆっくり寝たらいい。おやすみ」
「はい。おやすみなさいませ。アティアス様、エミリスさん」
「ウィルセアさん、おやすみなさい」

 あっという間にウィルセアから寝息が聞こえてくる。
 真夏ではあるが、そのまま寝るのは朝方の海風で冷えるかもしれないと、アティアスがタオルを掛けた。

「……寝ちゃいましたね、アティアス様?」
「そうだな。俺たちも寝るか?」
「えー、そのまま寝ちゃうんですか……?」

 エミリスが不満そうな顔をして、ベッドからアティアスの腕を引っ張った。

「そう言っても、ここでするわけにはいかんだろ」
「大丈夫ですよぅ。ウィルセアさん、ぐっすりです」
「だめ。今日は我慢。……明日ゼバーシュ行ったらできるだろ?」
「ぶぅ、仕方ないですね。……それじゃ、明日は今日の分と合わせてお願いしますね」

 エミリスは口を尖らせて言うと、同じように寝転がったアティアスの腕に自分の腕を絡めた。

「今日はこれで我慢します。……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
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