追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布

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3話

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 案内された浴室は、もはや「部屋」だった。
 床は滑らかな大理石で、中央には湯気を立てる広大な浴槽。
 アルヴィス様は僕を入り口で降ろすと、当然のような顔をして背後の扉を閉めた。

「あの、アルヴィス様? お着替えとか、一人で大丈夫ですので……」
「黙っていろ。貴様は今にも倒れそうな顔をしている。……それに、私は貴様の体の隅々まで確認せねばならんのだ」

 確認って、何を!?
 抗議する間もなく、彼は手慣れた動作で僕のボロボロの服を脱がせていく。
 抵抗しようにも、体力が尽きかけている僕は、ひな鳥のように大人しくしているしかなかった。

 やがて、一糸まとわぬ姿になった僕を、彼はじっと見つめる。
 恥ずかしさで顔が燃えそうだ。けれど、彼の視線は卑猥なものというよりは、もっと切実で、執拗なものだった。

「……白いな。栄養が足りていない」
「それは、まあ……前の国では『おまけ』扱いだったので」
「あんな愚鈍な王のいる国など、忘却しろ。……入れ」

 促されるまま、温かいお湯に身を沈める。
 ふあぁ……と、思わず声が漏れた。
 冷え切った芯まで解けていくような心地よさ。ブラック企業時代、シャワーだけで済ませていた日々が嘘のようだ。

「……っ」

 ふいに、肩に熱い感触がした。
 見上げると、アルヴィス様が袖を捲り上げ、お湯に浸した布で僕の背中を拭き始めていた。

「自分、で、やります……っ!」
「動くなと言ったはずだ。……これは、私のための儀式でもある」

 彼の大きな手が、布越しに僕の肌を撫でる。
 首筋から肩甲骨、そして腰の曲線へ。
 丁寧すぎるほどに繰り返されるその愛撫に近い動きに、頭がぼうっとしてくる。

 触れられるたびに、僕の中の「お湯」が暴れるのだ。
 もっと触れてほしい。もっと彼の中に、僕を流し込みたい。
 そんな本能的な衝動が、理性をじわじわと侵食していく。

「ヒイロ、貴様は不思議な男だ。私の『魔力酔い』……頭を割るような痛みが、貴様に触れている間だけは消える」
「痛み……。そんなに、お辛いんですか?」
「ああ。……だが、今は非常に気分がいい。貴様のこの柔らかな肌が、毒を吸い取ってくれているようだ」

 彼の指が、僕のうなじを優しくなぞる。
 ゾクりと背筋を震わせた僕を見て、アルヴィス様の唇がわずかに弧を描いた。

「……逃がさんぞ、小鳥。貴様を拾ったのは、一生使い潰すためだ」

 それは冷酷な言葉のはずなのに。
 鏡に映った彼の瞳は、ひどく熱く、甘く、僕を求めているように見えた。
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