追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布

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4話

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 お風呂から上がった僕は、最高級のシルクでできた寝巻きを着せられ、再びふかふかのベッドへ。
 髪を乾かしてくれたのも、なんとアルヴィス様だった。
 あんなに綺麗な顔をして、世話焼きなのだろうか。いや、たぶん執着心が強すぎるだけなんだろうな、となんとなく察し始める。

 そこへ、コンコンと控えめなノックの音が響いた。

「失礼します、アルヴィス様。例の『迷い人』の件ですが――」

 入ってきたのは、銀色の鎧に身を包んだ凛々しい女性騎士だった。
 彼女は僕を見るなり、その鋭い眉をピクリと動かした。

「……なるほど。これが殿下が雪山から拉致……いえ、お連れしたという御方ですか」
「言葉に気をつけろ、ジゼル。彼は私の恩人になる男だ」
「恩人、ですか。……魔力測定では『ゼロ』だったと報告を受けておりますが」

 ジゼルと呼ばれた騎士は、あからさまに不審そうな視線を僕に向ける。
 そりゃそうだ。魔力ゼロの男が、この国の次期国王の寝室にいるなんて、不自然極まりない。

「あの、ヒイロと言います……。ご迷惑をおかけして、すみません」
「……殊勝な心がけですね。ですが、殿下をたぶらかすような真似をすれば、この剣が黙っていませんよ」

 ひえっ、怖い。
 でも、その直後だった。

 ぐうぅぅぅぅぅ……。

 静かな部屋に、情けない音が響き渡った。
 僕の、お腹の音だ。

「…………」
「…………」

 ジゼルさんが絶句し、アルヴィス様が小さく吹き出した。

「ふっ……。そういえば、何も食わせていなかったな。ジゼル、すぐに厨房から一番消化に良い、かつ栄養価の高いものを持ってこい。最高級の素材を使え」
「はっ……ただいま」

 ジゼルさんは毒気を抜かれたのか、どこか呆れたような顔をして部屋を出て行った。
 しばらくして運ばれてきたのは、黄金色のスープと、ふんわりとした白いパン。

「さあ、食べろ。私が食べさせてやってもいいが?」
「い、いいです! 自分で食べられます!」

 慌ててスプーンを手に取り、スープを一口。
 ……その瞬間、全身の細胞が歓喜の声を上げた。
 野菜の旨味が凝縮されていて、それでいて体に染み渡るような優しい味。

「美味しい……。こんなの、食べたことないです……」
「そうか。ならばもっと食え。貴様の体はあまりに細すぎる。まずは人並みの肉をつけるのが先決だ」

 アルヴィス様は、僕が食べる様子をじっと見つめている。
 その眼差しは、まるで大切に育てている苗木を見守る園芸家のようで。

(怖い人だと思ったけど……案外、優しいのかな?)

 そんな淡い期待は、食後に彼が放った一言で打ち砕かれた。

「腹が膨れたら、寝る準備をしろ。今夜から貴様は、私の腕の中で眠るのだ」
「……はい?」

 聞き間違いかと思ったが、彼は真剣だった。
 どうやら「おまけの聖女」の夜は、想像以上に多忙になりそうだった。
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