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14話
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部屋に戻った後も、僕の心臓の震えは止まらなかった。
夕食の時間になっても食欲が湧かず、窓の外で赤く染まっていく空をぼんやりと眺めていた。
ガチャリ、と扉が開く音がして、反射的に肩が跳ねる。
「……ヒイロ。食事も摂らずに何をしている」
低い、けれどどこか安心させる声。アルヴィス様だ。
彼は執務を終えたばかりなのか、少し疲れた様子でシャツの第一ボタンを外しながら歩み寄ってきた。僕の顔を見るなり、そのプラチナシルバーの瞳が僅かに細められる。
「顔色が悪いな。……ジゼルから聞いた。庭園で、くだらん鼠の鳴き声を聞いたそうだな」
アルヴィス様は僕の目の前まで来ると、大きな手で僕の頬を包み込んだ。その手が驚くほど熱くて、僕は縋るように彼の腕に手を添えた。
「アルヴィス様……あの、クリュス王国の使者が来るって、本当ですか?」
「……フン。死に損ないの王が、自分の失態を棚に上げて、こちらの宝を返せとほざいているだけだ。取り合う価値もない」
宝。
その言葉が、僕の胸を熱く焦がす。
「でも、あちらの国は今、大変なことになっているんですよね……? 僕が戻れば、助かる命があるかもしれない。それを無視して、僕がここにいてもいいんでしょうか」
「ヒイロ、貴様は……どこまでお人好しなのだ」
アルヴィス様の瞳に、苛立ちとは異なる、もっと深い、暗い光が宿った。
彼は僕を抱き寄せ、その広い胸の中に僕を閉じ込める。耳元で聞こえる、彼の激しい鼓動。
「あやつらは、貴様をゴミのように捨てた。貴様が凍え、飢え、死にかけているときに、嘲笑っていた奴らだ。……そんな者たちのために、なぜ貴様が犠牲になる必要がある?」
「それは……」
「いいか、よく聞け」
彼は僕の肩を掴み、自分と視線を合わせるように強引に顔を上げさせた。
「貴様を最初に見つけたのは私だ。貴様に触れ、その熱に救われたのも私だ。……この命を賭して、私は貴様を所有すると決めた。クリュス王国が何を持ってこようと、世界が貴様を指差そうと、私は貴様を離さん」
アルヴィス様の唇が、僕の額に深く押し当てられる。それは祈りのようでもあり、呪いのようでもあった。
「……もし貴様を無理に連れ戻そうとするなら、私は容赦なく剣を振るう。隣国が滅ぼうと、民が泣こうと知ったことか。私の世界には、貴様がいればそれでいい」
あまりに身勝手で、あまりに苛烈な愛の告白。
普通の人間なら恐怖を感じるはずなのに、今の僕には、その言葉がどんな救いよりも甘く響いてしまった。
僕は彼のシャツの胸元をぎゅっと掴み、その逞しい体に顔を埋めた。
嵐が近づいている。
けれど、この腕の中にいる限り、僕はもう二度と「おまけ」として捨てられることはないのだ。
夕食の時間になっても食欲が湧かず、窓の外で赤く染まっていく空をぼんやりと眺めていた。
ガチャリ、と扉が開く音がして、反射的に肩が跳ねる。
「……ヒイロ。食事も摂らずに何をしている」
低い、けれどどこか安心させる声。アルヴィス様だ。
彼は執務を終えたばかりなのか、少し疲れた様子でシャツの第一ボタンを外しながら歩み寄ってきた。僕の顔を見るなり、そのプラチナシルバーの瞳が僅かに細められる。
「顔色が悪いな。……ジゼルから聞いた。庭園で、くだらん鼠の鳴き声を聞いたそうだな」
アルヴィス様は僕の目の前まで来ると、大きな手で僕の頬を包み込んだ。その手が驚くほど熱くて、僕は縋るように彼の腕に手を添えた。
「アルヴィス様……あの、クリュス王国の使者が来るって、本当ですか?」
「……フン。死に損ないの王が、自分の失態を棚に上げて、こちらの宝を返せとほざいているだけだ。取り合う価値もない」
宝。
その言葉が、僕の胸を熱く焦がす。
「でも、あちらの国は今、大変なことになっているんですよね……? 僕が戻れば、助かる命があるかもしれない。それを無視して、僕がここにいてもいいんでしょうか」
「ヒイロ、貴様は……どこまでお人好しなのだ」
アルヴィス様の瞳に、苛立ちとは異なる、もっと深い、暗い光が宿った。
彼は僕を抱き寄せ、その広い胸の中に僕を閉じ込める。耳元で聞こえる、彼の激しい鼓動。
「あやつらは、貴様をゴミのように捨てた。貴様が凍え、飢え、死にかけているときに、嘲笑っていた奴らだ。……そんな者たちのために、なぜ貴様が犠牲になる必要がある?」
「それは……」
「いいか、よく聞け」
彼は僕の肩を掴み、自分と視線を合わせるように強引に顔を上げさせた。
「貴様を最初に見つけたのは私だ。貴様に触れ、その熱に救われたのも私だ。……この命を賭して、私は貴様を所有すると決めた。クリュス王国が何を持ってこようと、世界が貴様を指差そうと、私は貴様を離さん」
アルヴィス様の唇が、僕の額に深く押し当てられる。それは祈りのようでもあり、呪いのようでもあった。
「……もし貴様を無理に連れ戻そうとするなら、私は容赦なく剣を振るう。隣国が滅ぼうと、民が泣こうと知ったことか。私の世界には、貴様がいればそれでいい」
あまりに身勝手で、あまりに苛烈な愛の告白。
普通の人間なら恐怖を感じるはずなのに、今の僕には、その言葉がどんな救いよりも甘く響いてしまった。
僕は彼のシャツの胸元をぎゅっと掴み、その逞しい体に顔を埋めた。
嵐が近づいている。
けれど、この腕の中にいる限り、僕はもう二度と「おまけ」として捨てられることはないのだ。
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