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20話
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粉々に砕けた契約石の破片が、冷たい床に虚しく散らばっている。
壁際で崩れ落ちたエドワード王子は、王族としての尊厳をかなぐり捨て、ガタガタと歯を鳴らしていた。その隣で、セシリアは自分の手が白くひび割れていくのを見て悲鳴を上げている。
「あ……あぁ……! 私の力が、魔法が消えていく……!」
セシリアが縋るように僕を見たが、その視線は届かない。彼女の魔力は、もともと僕が供給していたおこぼれに過ぎなかった。その源泉が自らの意志で閉ざされた今、彼女はただの「魔力を持たない少女」に戻ったのだ。
「……ジゼル。その二名を地下牢へ。クリュス王国には『聖女の偽造、および帝国への宣戦布告とみなす』と通告しろ」
アルヴィス様の冷酷な声が、広間に響き渡る。
ジゼルさんは深く一礼すると、近衛兵たちに合図を送った。兵士たちに引きずられていく王子とセシリアの叫び声が、次第に遠ざかっていく。
静寂が戻った広間。
僕は全身から溢れさせていた光を収め、ふぅ、と長い息を吐いた。
途端に襲ってきたのは、強烈な脱力感だった。
「うわっ……」
よろめいた僕の体を、力強い腕が背後から抱きとめる。
そこには、これまで見たこともないほど複雑な表情をしたアルヴィス様がいた。驚愕、喜び、安堵……そして、隠しきれないほどの熱い独占欲。
「ヒイロ、貴様……本当に、とんでもない男だな。……私が拾ったのは、一国の運命を左右する神の落とし子だったか」
アルヴィス様は僕を正面から抱きかかえると、その顔を僕の首筋に深く埋めた。
震えている。
あれほど傲然としていた彼が、僕を失う寸前だった恐怖から、まだ抜け出せずにいるのだ。
「ごめんなさい、アルヴィス様。黙っていたわけじゃないんです。自分でも、こんな力があるなんて知らなくて……」
「謝るな。……むしろ、礼を言いたいのは私の方だ。貴様が、自らの意志で、私を選んでくれた……」
彼は顔を上げると、僕の頬を両手で挟み、じっと瞳を見つめてきた。
「もう一度、言え。……どこへも行かないと。私のために、その力を使いたいと」
その必死な瞳。
僕はふっと笑って、今度は僕の方から彼の首に腕を回した。
そして、彼の耳元で、甘やかな呪いのように囁く。
「当たり前じゃないですか。……僕は、アルヴィス様だけの『聖女』ですから」
彼が再び僕を強く抱きしめる。その腕は、先ほどよりもずっと独占欲に満ちていて、骨が軋むほどだった。
けれど、僕はそれがたまらなく愛おしくて。
遠くで雨が上がり、雲の間から差し込む陽光が、傷だらけの広間を優しく照らしていた。
壁際で崩れ落ちたエドワード王子は、王族としての尊厳をかなぐり捨て、ガタガタと歯を鳴らしていた。その隣で、セシリアは自分の手が白くひび割れていくのを見て悲鳴を上げている。
「あ……あぁ……! 私の力が、魔法が消えていく……!」
セシリアが縋るように僕を見たが、その視線は届かない。彼女の魔力は、もともと僕が供給していたおこぼれに過ぎなかった。その源泉が自らの意志で閉ざされた今、彼女はただの「魔力を持たない少女」に戻ったのだ。
「……ジゼル。その二名を地下牢へ。クリュス王国には『聖女の偽造、および帝国への宣戦布告とみなす』と通告しろ」
アルヴィス様の冷酷な声が、広間に響き渡る。
ジゼルさんは深く一礼すると、近衛兵たちに合図を送った。兵士たちに引きずられていく王子とセシリアの叫び声が、次第に遠ざかっていく。
静寂が戻った広間。
僕は全身から溢れさせていた光を収め、ふぅ、と長い息を吐いた。
途端に襲ってきたのは、強烈な脱力感だった。
「うわっ……」
よろめいた僕の体を、力強い腕が背後から抱きとめる。
そこには、これまで見たこともないほど複雑な表情をしたアルヴィス様がいた。驚愕、喜び、安堵……そして、隠しきれないほどの熱い独占欲。
「ヒイロ、貴様……本当に、とんでもない男だな。……私が拾ったのは、一国の運命を左右する神の落とし子だったか」
アルヴィス様は僕を正面から抱きかかえると、その顔を僕の首筋に深く埋めた。
震えている。
あれほど傲然としていた彼が、僕を失う寸前だった恐怖から、まだ抜け出せずにいるのだ。
「ごめんなさい、アルヴィス様。黙っていたわけじゃないんです。自分でも、こんな力があるなんて知らなくて……」
「謝るな。……むしろ、礼を言いたいのは私の方だ。貴様が、自らの意志で、私を選んでくれた……」
彼は顔を上げると、僕の頬を両手で挟み、じっと瞳を見つめてきた。
「もう一度、言え。……どこへも行かないと。私のために、その力を使いたいと」
その必死な瞳。
僕はふっと笑って、今度は僕の方から彼の首に腕を回した。
そして、彼の耳元で、甘やかな呪いのように囁く。
「当たり前じゃないですか。……僕は、アルヴィス様だけの『聖女』ですから」
彼が再び僕を強く抱きしめる。その腕は、先ほどよりもずっと独占欲に満ちていて、骨が軋むほどだった。
けれど、僕はそれがたまらなく愛おしくて。
遠くで雨が上がり、雲の間から差し込む陽光が、傷だらけの広間を優しく照らしていた。
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