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27話
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ルード帝国の至宝と謳われる『白金の間』。
今夜、この場所は帝国史上、最も華やかで、そして最も「独占欲」に満ちた熱気に包まれていた。
天井からは数万個の魔石が散りばめられたシャンデリアが降り注ぎ、オーケストラが奏でる優雅な旋律が、集まった貴族たちの談笑と混ざり合って空気を震わせている。
その巨大な扉が開かれた瞬間、会場のすべての視線が一箇所に釘付けになった。
「……っ」
僕は、あまりの視線の数に、思わず足が止まりそうになった。
身に纏っているのは、あの日、アルヴィス様が執拗に注文を重ねて仕立てさせた、月明かりを織り込んだような銀青色の礼服だ。仕立屋さんの技術の粋を集めたその服は、僕が動くたびに水面のように輝き、首元まで隠す高い襟には、アルヴィス様の瞳と同じプラチナシルバーの刺繍が施されている。
「……怯えるな。貴様はただ、私の隣で笑っていればいい」
横から差し出された逞しい腕。
アルヴィス様は、漆黒に金の縁取りがなされた軍礼服を完璧に着こなし、その圧倒的な美貌と威圧感で周囲を平伏させていた。彼は僕の腰を抱き寄せると、あえて周囲に見せつけるように、僕の耳元に唇を寄せた。
「ひ、アルヴィス様、近いです……。みんな見てますよ」
「見せてやっているのだ。私が何よりも慈しみ、そして誰にも譲る気のない『真実』をな」
僕たちはゆっくりと、広間の中央へと進んでいく。
かつて隣国で「おまけ」と蔑まれ、石を投げられるように追放された僕。それが今、この大帝国の中心で、最高権力者である王太子の隣を歩いている。
貴族たちの目は、かつての蔑みではなく、畏怖と、そして純粋な感嘆に満ちていた。あの日、広間で見せた僕の光――「真の聖女(♂)」としての力が、彼らの常識を塗り替えたのだ。
玉座の前まで辿り着くと、アルヴィス様は僕を隣に立たせたまま、会場全体を見渡した。
静寂が広がる。彼は僕の手を恭しく取り、その薬指に光る「心臓の指輪」を高く掲げた。
「皆に告ぐ。ここにいるヒイロこそが、私の呪いを鎮め、ルード帝国の未来を守る救世の主である。……そして、私の生涯唯一の伴侶となる男だ」
地響きのような歓声が上がった。
けれど、アルヴィス様はそんな周囲の反応など、もう興味がないといった様子で僕だけを見つめていた。
「ヒイロ、貴様はかつて『自分には意味がない』と言ったな。……だが、今ここで誓おう。貴様が笑うだけで、私の世界は救われる。貴様が隣にいるだけで、この帝国は繁栄する。……貴様は私のすべてだ」
アルヴィス様は、大勢の観衆の前で膝を突いた。王太子が、一人の異邦人の前で。
彼は僕の手を口元へ運び、長い、長い誓いの口づけを落とす。
「……あ、アルヴィス様……」
視界が熱くなる。
元の世界で、誰からも必要とされず、ただ消費されるだけの歯車だった僕。
そんな僕を拾い、磨き、誰よりも価値のあるものとして扱ってくれた人。
僕は震える手で彼の頬に触れ、溢れそうになる涙を堪えて、世界で一番幸せな笑顔を浮かべた。
「……僕も、あなたを愛しています。……一生、あなたのそばで、あなただけを癒し続けます」
再び沸き起こる祝福の嵐。
けれど、アルヴィス様は満足げに目を細めると、僕の腰をグイと引き寄せ、耳元で独占欲全開の低い声を忍ばせた。
「……宣言は終わったな。これ以上の見せ物は不要だ。……ヒイロ、残りの夜は、私のためだけに捧げろ」
「え? 晩餐会、始まったばかりですよ!?」
「構わん。貴様を欲しがる連中の視線に、もう耐えられん」
彼はそのまま、呆然とする招待客を置き去りにして、僕を横抱き(お姫様抱っこ)にすると、足早に会場を後にした。
背後でジゼルさんの「あーあ、また始まったわ」という溜息混じりの笑い声が聞こえた気がしたけれど、僕は彼の首にしがみつき、心地よい熱に身を委ねるのだった。
今夜、この場所は帝国史上、最も華やかで、そして最も「独占欲」に満ちた熱気に包まれていた。
天井からは数万個の魔石が散りばめられたシャンデリアが降り注ぎ、オーケストラが奏でる優雅な旋律が、集まった貴族たちの談笑と混ざり合って空気を震わせている。
その巨大な扉が開かれた瞬間、会場のすべての視線が一箇所に釘付けになった。
「……っ」
僕は、あまりの視線の数に、思わず足が止まりそうになった。
身に纏っているのは、あの日、アルヴィス様が執拗に注文を重ねて仕立てさせた、月明かりを織り込んだような銀青色の礼服だ。仕立屋さんの技術の粋を集めたその服は、僕が動くたびに水面のように輝き、首元まで隠す高い襟には、アルヴィス様の瞳と同じプラチナシルバーの刺繍が施されている。
「……怯えるな。貴様はただ、私の隣で笑っていればいい」
横から差し出された逞しい腕。
アルヴィス様は、漆黒に金の縁取りがなされた軍礼服を完璧に着こなし、その圧倒的な美貌と威圧感で周囲を平伏させていた。彼は僕の腰を抱き寄せると、あえて周囲に見せつけるように、僕の耳元に唇を寄せた。
「ひ、アルヴィス様、近いです……。みんな見てますよ」
「見せてやっているのだ。私が何よりも慈しみ、そして誰にも譲る気のない『真実』をな」
僕たちはゆっくりと、広間の中央へと進んでいく。
かつて隣国で「おまけ」と蔑まれ、石を投げられるように追放された僕。それが今、この大帝国の中心で、最高権力者である王太子の隣を歩いている。
貴族たちの目は、かつての蔑みではなく、畏怖と、そして純粋な感嘆に満ちていた。あの日、広間で見せた僕の光――「真の聖女(♂)」としての力が、彼らの常識を塗り替えたのだ。
玉座の前まで辿り着くと、アルヴィス様は僕を隣に立たせたまま、会場全体を見渡した。
静寂が広がる。彼は僕の手を恭しく取り、その薬指に光る「心臓の指輪」を高く掲げた。
「皆に告ぐ。ここにいるヒイロこそが、私の呪いを鎮め、ルード帝国の未来を守る救世の主である。……そして、私の生涯唯一の伴侶となる男だ」
地響きのような歓声が上がった。
けれど、アルヴィス様はそんな周囲の反応など、もう興味がないといった様子で僕だけを見つめていた。
「ヒイロ、貴様はかつて『自分には意味がない』と言ったな。……だが、今ここで誓おう。貴様が笑うだけで、私の世界は救われる。貴様が隣にいるだけで、この帝国は繁栄する。……貴様は私のすべてだ」
アルヴィス様は、大勢の観衆の前で膝を突いた。王太子が、一人の異邦人の前で。
彼は僕の手を口元へ運び、長い、長い誓いの口づけを落とす。
「……あ、アルヴィス様……」
視界が熱くなる。
元の世界で、誰からも必要とされず、ただ消費されるだけの歯車だった僕。
そんな僕を拾い、磨き、誰よりも価値のあるものとして扱ってくれた人。
僕は震える手で彼の頬に触れ、溢れそうになる涙を堪えて、世界で一番幸せな笑顔を浮かべた。
「……僕も、あなたを愛しています。……一生、あなたのそばで、あなただけを癒し続けます」
再び沸き起こる祝福の嵐。
けれど、アルヴィス様は満足げに目を細めると、僕の腰をグイと引き寄せ、耳元で独占欲全開の低い声を忍ばせた。
「……宣言は終わったな。これ以上の見せ物は不要だ。……ヒイロ、残りの夜は、私のためだけに捧げろ」
「え? 晩餐会、始まったばかりですよ!?」
「構わん。貴様を欲しがる連中の視線に、もう耐えられん」
彼はそのまま、呆然とする招待客を置き去りにして、僕を横抱き(お姫様抱っこ)にすると、足早に会場を後にした。
背後でジゼルさんの「あーあ、また始まったわ」という溜息混じりの笑い声が聞こえた気がしたけれど、僕は彼の首にしがみつき、心地よい熱に身を委ねるのだった。
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