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28話
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騒がしい晩餐会の喧騒は、重厚な扉の向こう側へと消えた。
月光だけが差し込む静かな寝室。アルヴィス様は僕をベッドに降ろすと、自身の上着を荒々しく脱ぎ捨て、僕の上に覆い被さった。
ドクン、ドクン。
重なり合った胸から、二つの心臓が同じ速さで脈打っているのが伝わってくる。
「……はぁ、ようやく二人きりだ。貴様をあの場所に立たせたのは失敗だったな。どいつもこいつも、貴様を品定めするような目で……」
「アルヴィス様、それは考えすぎですよ。みんな、あなたの婚約者を祝福してくれていただけです」
「私以外の誰かが貴様を見るだけで、その目を潰したくなる。……ヒイロ、貴様はわかっていない。私がどれほど貴様に飢えているか」
アルヴィス様の銀色の瞳が、夜の闇の中で熱く、湿った光を放っている。
彼は僕の銀青色の礼服のボタンを、一つひとつ、もどかしそうに外していく。指先が僕の肌に触れるたび、そこから心地よい痺れが全身へと広がった。
「……今夜は、魔力供給のためじゃないんですよね?」
僕が少しだけ顔を赤くして訊ねると、彼は動きを止め、僕の髪を愛おしそうに梳き上げた。
「ああ。魔力などもう溢れるほど満たされている。……今夜私が欲しいのは、貴様の体温と、貴様の心、そのすべてだ。……儀式的な供給ではなく、一人の男として、貴様を抱きたい」
彼の言葉が、僕の胸に深く、甘く突き刺さる。
あの日、国境で凍え、死を待っていた僕。
その僕を拾ったのは「有益だったから」かもしれない。けれど、今、僕を抱きしめているこの男の腕には、打算なんて一欠片も残っていなかった。
「……僕も、同じです。……アルヴィス様。僕を、あなたのものにしてください」
僕がそう囁くと、アルヴィス様は堪えきれないといったように、僕の唇に深い、深い接吻を落とした。
昼間の形式的なキスとは違う、独占欲と情熱が入り混じった、魂を吸い尽くされるような口づけ。
服が脱ぎ捨てられ、肌と肌が直接触れ合う。
彼の逞しい体躯が僕を優しく押し潰し、白檀の香りと、彼の体温が僕のすべてを支配していく。
「……あ、ぁ……っ、アルヴィス、さま……っ」
「ヒイロ、愛している。……貴様が私の前に現れてくれた奇跡に、毎日感謝している。……もう二度と、貴様を誰にも渡さない。地獄の果てまで一緒だ」
熱い吐息が耳元で弾け、僕は彼を強く抱きしめ返した。
社畜だった僕には、魔法なんて使えなかった。
聖女の「おまけ」として呼ばれ、役立たずと捨てられた。
けれど、あの絶望があったからこそ、僕は世界で一番わがままで、世界で一番僕を愛してくれる、この「鎖」に巡り会えたのだ。
「……僕も、大好きです。……世界で一番、幸せにしてくださいね。主様(だんなさま)」
冗談めかして言った言葉に、彼は子供のように幸せそうに微笑むと、再び僕を深い愛の渦へと引き込んでいった。
窓の外では、二つの月が寄り添うように夜空を飾っている。
ルード帝国の新しい夜が始まる。
それは、おまけの聖女が「最愛の妃」として、たった一人の騎士に溺愛され続ける、永遠の幸福の物語の始まりだった。
月光だけが差し込む静かな寝室。アルヴィス様は僕をベッドに降ろすと、自身の上着を荒々しく脱ぎ捨て、僕の上に覆い被さった。
ドクン、ドクン。
重なり合った胸から、二つの心臓が同じ速さで脈打っているのが伝わってくる。
「……はぁ、ようやく二人きりだ。貴様をあの場所に立たせたのは失敗だったな。どいつもこいつも、貴様を品定めするような目で……」
「アルヴィス様、それは考えすぎですよ。みんな、あなたの婚約者を祝福してくれていただけです」
「私以外の誰かが貴様を見るだけで、その目を潰したくなる。……ヒイロ、貴様はわかっていない。私がどれほど貴様に飢えているか」
アルヴィス様の銀色の瞳が、夜の闇の中で熱く、湿った光を放っている。
彼は僕の銀青色の礼服のボタンを、一つひとつ、もどかしそうに外していく。指先が僕の肌に触れるたび、そこから心地よい痺れが全身へと広がった。
「……今夜は、魔力供給のためじゃないんですよね?」
僕が少しだけ顔を赤くして訊ねると、彼は動きを止め、僕の髪を愛おしそうに梳き上げた。
「ああ。魔力などもう溢れるほど満たされている。……今夜私が欲しいのは、貴様の体温と、貴様の心、そのすべてだ。……儀式的な供給ではなく、一人の男として、貴様を抱きたい」
彼の言葉が、僕の胸に深く、甘く突き刺さる。
あの日、国境で凍え、死を待っていた僕。
その僕を拾ったのは「有益だったから」かもしれない。けれど、今、僕を抱きしめているこの男の腕には、打算なんて一欠片も残っていなかった。
「……僕も、同じです。……アルヴィス様。僕を、あなたのものにしてください」
僕がそう囁くと、アルヴィス様は堪えきれないといったように、僕の唇に深い、深い接吻を落とした。
昼間の形式的なキスとは違う、独占欲と情熱が入り混じった、魂を吸い尽くされるような口づけ。
服が脱ぎ捨てられ、肌と肌が直接触れ合う。
彼の逞しい体躯が僕を優しく押し潰し、白檀の香りと、彼の体温が僕のすべてを支配していく。
「……あ、ぁ……っ、アルヴィス、さま……っ」
「ヒイロ、愛している。……貴様が私の前に現れてくれた奇跡に、毎日感謝している。……もう二度と、貴様を誰にも渡さない。地獄の果てまで一緒だ」
熱い吐息が耳元で弾け、僕は彼を強く抱きしめ返した。
社畜だった僕には、魔法なんて使えなかった。
聖女の「おまけ」として呼ばれ、役立たずと捨てられた。
けれど、あの絶望があったからこそ、僕は世界で一番わがままで、世界で一番僕を愛してくれる、この「鎖」に巡り会えたのだ。
「……僕も、大好きです。……世界で一番、幸せにしてくださいね。主様(だんなさま)」
冗談めかして言った言葉に、彼は子供のように幸せそうに微笑むと、再び僕を深い愛の渦へと引き込んでいった。
窓の外では、二つの月が寄り添うように夜空を飾っている。
ルード帝国の新しい夜が始まる。
それは、おまけの聖女が「最愛の妃」として、たった一人の騎士に溺愛され続ける、永遠の幸福の物語の始まりだった。
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