追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布

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後日談1

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 柔らかな朝の陽光が、重厚な刺繍の施されたカーテンの隙間から、宝石を散りばめたような光の帯となって寝室に差し込んでいる。
 かつて、冷たい雪山で死を覚悟したあの日からは想像もできないほど、今の僕の朝は温かさに満ちていた。

「……ん、……ふ……」

 意識がゆっくりと浮上してくると、まず感じるのは、腰に回された驚くほど逞しい腕の重み。そして、項(うなじ)に当たる、規則正しくも熱い吐息だ。
 背後から抱きしめられる形で、僕はアルヴィス様の胸の中にすっぽりと収まっている。彼は眠っている間も僕を離そうとせず、まるで大切な宝物を守るドラゴンのように、僕をその強靭な体躯で囲い込んでいた。

「……アルヴィス様。……もう、朝ですよ」

 僕が寝返りを打とうと身をよじると、腰に回った腕にさらに力がこもった。
 彼は目を閉じたまま、僕の肩口に顔を埋めて深く息を吸い込む。白檀の香りと、僕自身の体温が混ざり合った匂いを確認するように。

「……あと一刻(二時間)だ。……まだ、貴様の熱が足りない」

「二時間って、それじゃ朝食の時間が終わっちゃいます。ジゼルさんがまた呆れた顔で扉の前で待機することになりますよ?」

「構わん。……あやつには、私が貴様を愛(め)でる時間を邪魔する権利などない。……ヒイロ、貴様は昨日も、公務だと言って三刻も私の側を離れただろう。その分の補填が必要だ」

 アルヴィス様がゆっくりと目を開ける。至近距離で見つめるプラチナシルバーの瞳は、朝の光を反射して、とろけるようなハチミツに似た甘さを帯びていた。
 彼は僕の顎を指先で持ち上げると、まだ眠気の残る唇に、吸い付くような深い口づけを落とした。

「……っ、ん……ふあぁ……」

 ただの挨拶代わりのキスのはずなのに、彼の舌が僕の唇を割り、執拗に内側をなぞる。
 昨夜、何度も重ねたはずの熱が、再び体の奥底で小さく火を噴き始めた。僕の中から溢れ出す純粋な魔力が、彼に触れられることで歓喜し、指先まで痺れるような快感を運んでくる。

「……足りない。貴様をどれだけ吸い尽くしても、私の乾きは癒えない。……ヒイロ。今日一日、公務をすべて休め。貴様を一日中、このベッドから出さずに愛してやりたい」

「だ、ダメですよ! 今日は隣国との貿易協定の最終確認があるって言ってたじゃないですか。……元・社畜として、無断欠勤だけは許せません!」

「ふん。……ならば、これだけは約束しろ。執務の間、私の膝の上から降りないこと。……そして、一時間に一度は、私にこうして『供給』を与えることだ」

 アルヴィス様はそう言って、僕の鎖骨のあたりを甘噛みし、真っ赤な痕を上書きした。
 新婚生活が始まってからというもの、彼の独占欲はとどまる所を知らない。けれど、彼に必要とされる喜びに抗えない僕は、真っ赤な顔をして「……一時間に一度だけですよ」と、甘すぎる契約を承諾してしまうのだった。
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