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38話
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一夜明けて、ログハウスの庭には新しい「構造物」が鎮座していた。
アイアンと名付けられた巨大ゴーレムは、リィエルの命令を忠実に守り、結界の内側で待機している。しかし、その巨体はただ座っているだけでも、庭の景観を大幅に書き換えていた。
「……おはよう、アイアン。昨夜の魔力充填(チャージ)は十分だったか? システムの整合性にエラーは出ていないな」
「おはようございます、お母様。エネルギー残量は八十パーセント。お母様に喜んでいただくため、既に周辺環境の最適化を開始しています」
アイアンの幼い合成音声が、朝の静かな森に響く。
リィエルが怪訝そうな顔で庭を見渡すと、そこには昨日までとは全く違う景色が広がっていた。
自生していた雑草は一本残らず引き抜かれ、不揃いだった低木は、定規で測ったかのような完璧な「立方体」へと剪定されている。さらに、リィエルが大切に育てていたハーブの苗は、なぜか魔力効率が最も高まるという幾何学的な同心円状に植え替えられていた。
「……アイアン。お前の言う最適化は、俺の美意識という名のユーザーインターフェースを完全に無視しているな。この立方体の木は、森の風景から浮きすぎているぞ」
「……不評、ですか? 効率ログに基づいた配置なのですが……。申し訳ありません、お母様」
アイアンは大きな金属の肩を落とし、地響きを立ててその場に丸くなった。
三メートルの巨体が小さくなろうとする姿は、どこか捨てられた子犬のような哀愁を漂わせている。
「ははは! リィエル、そう責めてやるな。アイアンなりにお前を助けようとしたんだ。……よし、アイアン。次は俺が庭師の極意を教えてやろう。この森に馴染む『自然な曲線』というやつをな」
ガイアスが腕をまくり、アイアンの巨大な膝を景気よく叩いた。
彼は王都の騎士団長でありながら、かつては領地の庭園管理にも興味を持っていたらしい。ガイアスは早速、手近な倒木を拾い上げ、地面に理想的な庭の設計図を描き始めた。
「いいか、アイアン。計算通りの直線は美しいが、この森では少しの『揺らぎ』が重要なんだ。……シロ、お前もそこを掘りすぎないで、アイアンの足元を案内してやれ」
「きゅうっ! お兄ちゃんについてきて!」
シロは自称兄貴分として、アイアンの巨大な足元を器用に走り回り、植え替えが必要な場所を示していく。
アイアンはガイアスの指導を受けながら、繊細な魔力の指先を動かし、先ほどまでの無機質な庭を少しずつ柔らかい表情へと作り替えていった。
「……やれやれ。俺の庭が、騎士とゴーレムの共同開発拠点になるとは。……ルミ、お前も遊んでいないで、土の水分量をモニターしてやれ」
「ぷる、ぷるるん!」
ルミはアイアンの肩に乗って、センサーの代わりに光を明滅させ、作業の進捗をリィエルに伝えてくる。
リィエルはテラスの椅子に腰を下ろし、賑やかになった庭を眺めながら、不格好に整えられた立方体の木を一つだけ、記念に残しておくことに決めた。
アイアンと名付けられた巨大ゴーレムは、リィエルの命令を忠実に守り、結界の内側で待機している。しかし、その巨体はただ座っているだけでも、庭の景観を大幅に書き換えていた。
「……おはよう、アイアン。昨夜の魔力充填(チャージ)は十分だったか? システムの整合性にエラーは出ていないな」
「おはようございます、お母様。エネルギー残量は八十パーセント。お母様に喜んでいただくため、既に周辺環境の最適化を開始しています」
アイアンの幼い合成音声が、朝の静かな森に響く。
リィエルが怪訝そうな顔で庭を見渡すと、そこには昨日までとは全く違う景色が広がっていた。
自生していた雑草は一本残らず引き抜かれ、不揃いだった低木は、定規で測ったかのような完璧な「立方体」へと剪定されている。さらに、リィエルが大切に育てていたハーブの苗は、なぜか魔力効率が最も高まるという幾何学的な同心円状に植え替えられていた。
「……アイアン。お前の言う最適化は、俺の美意識という名のユーザーインターフェースを完全に無視しているな。この立方体の木は、森の風景から浮きすぎているぞ」
「……不評、ですか? 効率ログに基づいた配置なのですが……。申し訳ありません、お母様」
アイアンは大きな金属の肩を落とし、地響きを立ててその場に丸くなった。
三メートルの巨体が小さくなろうとする姿は、どこか捨てられた子犬のような哀愁を漂わせている。
「ははは! リィエル、そう責めてやるな。アイアンなりにお前を助けようとしたんだ。……よし、アイアン。次は俺が庭師の極意を教えてやろう。この森に馴染む『自然な曲線』というやつをな」
ガイアスが腕をまくり、アイアンの巨大な膝を景気よく叩いた。
彼は王都の騎士団長でありながら、かつては領地の庭園管理にも興味を持っていたらしい。ガイアスは早速、手近な倒木を拾い上げ、地面に理想的な庭の設計図を描き始めた。
「いいか、アイアン。計算通りの直線は美しいが、この森では少しの『揺らぎ』が重要なんだ。……シロ、お前もそこを掘りすぎないで、アイアンの足元を案内してやれ」
「きゅうっ! お兄ちゃんについてきて!」
シロは自称兄貴分として、アイアンの巨大な足元を器用に走り回り、植え替えが必要な場所を示していく。
アイアンはガイアスの指導を受けながら、繊細な魔力の指先を動かし、先ほどまでの無機質な庭を少しずつ柔らかい表情へと作り替えていった。
「……やれやれ。俺の庭が、騎士とゴーレムの共同開発拠点になるとは。……ルミ、お前も遊んでいないで、土の水分量をモニターしてやれ」
「ぷる、ぷるるん!」
ルミはアイアンの肩に乗って、センサーの代わりに光を明滅させ、作業の進捗をリィエルに伝えてくる。
リィエルはテラスの椅子に腰を下ろし、賑やかになった庭を眺めながら、不格好に整えられた立方体の木を一つだけ、記念に残しておくことに決めた。
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