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6話
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小鳥は「銀」と名付けられ、僕の部屋の籠で元気に過ごすようになった。
奇跡的に回復した銀を見て、城のメイドのミラさんやヘンリックさんも「ノア様の力は本当に素晴らしいですね」と喜んでくれた。
でも、一番驚いているのはヴァルター様自身だった。
夜の調律の時間、僕の肩に乗って囀る銀を見て、彼は信じられないものを見るような目をしていた。
「……信じられん。私の呪いの中で、これほど小さな命が輝いているなど」
「言ったでしょう? 僕がいれば大丈夫だって」
僕は得意げに笑って、ヴァルター様の右手をマッサージする。
最近、彼の呪紋は以前よりも落ち着いている時間が増えていた。僕がこまめに毒を吸い取っているおかげもあるけれど、何より彼自身が、少しずつ穏やかになっている気がする。
「……ノア。明日の午後は空けておけ」
「え? はい、もちろんです。何かお手伝いですか?」
「……いいから、空けておけ」
翌日。案内されたのは、城の離れにある古い温室だった。
そこは長年放置されていたのか、ガラスは曇り、中の植物もほとんど枯れ果てている。
「ここ……昔は綺麗だったんだろうな」
「……母が愛していた場所だ。私が呪いを受け継いで以来、管理を禁じていたのだが……。お前なら、ここをどうにかできるのではないかと思ってな」
ヴァルター様は、どこか気まずそうに視線を彷徨わせた。
彼の手には、新しい園芸用の道具と、たくさんの花の種が入った袋が握られていた。
「これ、僕にくれるんですか……?」
「……お前がいつも暇そうに本を読んでいるからだ。……それに、城の中に緑があった方が、お前の『浄化』の効率も上がるだろう」
そんなの、口実だってすぐに分かった。
彼は、僕が村で植物を育てるのが好きだったと言ったのを覚えていてくれたんだ。
誰にも触れられず、何も育てられなかった彼が、僕のために「育てる場所」を用意してくれた。
「ヴァルター様……! 僕、頑張ります! ここを世界一綺麗な温室にしますね!」
僕が飛び跳ねて喜ぶと、ヴァルター様はふいと顔を背けた。
でも、その口元が微かに緩んでいるのを、僕は見逃さなかった。
「……ふん。手伝いはせんぞ。……せいぜい、枯らさないようにするんだな」
そう言いながらも、彼は温室の重い扉を開けて、僕が中に入りやすいように支えてくれた。
埃っぽい温室の中に、ひとすじの光が差し込む。
枯れ果てた土の下で、新しい物語の種が、静かに芽吹こうとしていた。
奇跡的に回復した銀を見て、城のメイドのミラさんやヘンリックさんも「ノア様の力は本当に素晴らしいですね」と喜んでくれた。
でも、一番驚いているのはヴァルター様自身だった。
夜の調律の時間、僕の肩に乗って囀る銀を見て、彼は信じられないものを見るような目をしていた。
「……信じられん。私の呪いの中で、これほど小さな命が輝いているなど」
「言ったでしょう? 僕がいれば大丈夫だって」
僕は得意げに笑って、ヴァルター様の右手をマッサージする。
最近、彼の呪紋は以前よりも落ち着いている時間が増えていた。僕がこまめに毒を吸い取っているおかげもあるけれど、何より彼自身が、少しずつ穏やかになっている気がする。
「……ノア。明日の午後は空けておけ」
「え? はい、もちろんです。何かお手伝いですか?」
「……いいから、空けておけ」
翌日。案内されたのは、城の離れにある古い温室だった。
そこは長年放置されていたのか、ガラスは曇り、中の植物もほとんど枯れ果てている。
「ここ……昔は綺麗だったんだろうな」
「……母が愛していた場所だ。私が呪いを受け継いで以来、管理を禁じていたのだが……。お前なら、ここをどうにかできるのではないかと思ってな」
ヴァルター様は、どこか気まずそうに視線を彷徨わせた。
彼の手には、新しい園芸用の道具と、たくさんの花の種が入った袋が握られていた。
「これ、僕にくれるんですか……?」
「……お前がいつも暇そうに本を読んでいるからだ。……それに、城の中に緑があった方が、お前の『浄化』の効率も上がるだろう」
そんなの、口実だってすぐに分かった。
彼は、僕が村で植物を育てるのが好きだったと言ったのを覚えていてくれたんだ。
誰にも触れられず、何も育てられなかった彼が、僕のために「育てる場所」を用意してくれた。
「ヴァルター様……! 僕、頑張ります! ここを世界一綺麗な温室にしますね!」
僕が飛び跳ねて喜ぶと、ヴァルター様はふいと顔を背けた。
でも、その口元が微かに緩んでいるのを、僕は見逃さなかった。
「……ふん。手伝いはせんぞ。……せいぜい、枯らさないようにするんだな」
そう言いながらも、彼は温室の重い扉を開けて、僕が中に入りやすいように支えてくれた。
埃っぽい温室の中に、ひとすじの光が差し込む。
枯れ果てた土の下で、新しい物語の種が、静かに芽吹こうとしていた。
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