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7話
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温室の再生。それは僕――ノアにとって、この城で初めて見つけた「自分の居場所」を整える作業だった。
翌朝から、僕は朝食を済ませるとすぐに温室へ向かった。
かつては美しいガラス張りだったであろう建物は、長年の放置で蔦が絡まり、床には埃が積もっている。けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。
「よし、まずは掃除からだね」
腕まくりをして、僕はバケツと雑巾を手に取った。
ヘンリックさんが手伝おうとしてくれたけれど、ここはヴァルター様が「僕のために」と言ってくれた場所だ。まずは自分の力でどこまでできるか試してみたかった。
曇ったガラスを一枚ずつ拭いていく。腕がだるくなり、息が切れる。でも、ガラスが透明感を取り戻し、外の白い雪景色がキラキラと透けて見えるようになると、疲れなんて吹き飛んでしまった。
「……何をしている。掃除など、下に任せればいいと言っただろう」
背後から響いた低い声に、僕は手を止めて振り返った。
そこには、いつもの完璧な軍服姿のヴァルター様が立っていた。手に持った書類の束からして、執務の合間に様子を見に来てくれたらしい。
「あ、ヴァルター様! 見てください、あそこのガラス。綺麗になったでしょう?」
「…………。拭き跡が残っているな」
ヴァルター様は呆れたように溜息をついた。けれど、その足は迷いなく埃っぽい温室の中へと進んでくる。
彼はデスクに向かっているときのような険しい表情を少しだけ解き、温室の隅で丸まっていた古い棚を指差した。
「それは重いだろう。……どかしておく」
「えっ、でも閣下のお洋服が汚れちゃいます!」
「構わん。これくらいの魔力操作、造作もない」
ヴァルター様が右手をかざすと、黒い魔力の波が棚を包み込み、ふわりと浮かせた。彼はそれを、僕が掃除しやすい場所へと軽々と移動させた。
呪いの力。誰にも触れられず、忌み嫌われてきたその力が、今は僕の掃除を手伝うために使われている。
「……閣下の力、やっぱりかっこいいですね」
「っ、……馬鹿なことを。壊すためだけの力だと言っただろう」
ヴァルター様はふいと顔を背けたけれど、その耳が赤くなっているのを僕は見逃さなかった。
彼はそのまま帰るかと思いきや、なぜか近くの椅子に腰を下ろし、持ってきた書類を読み始めた。
「閣下? お仕事、ここでやるんですか?」
「……お前の掃除があまりにも危なっかしいからだ。監視しているだけだ。……気にするな」
気にするなと言われても、すぐ隣で公爵様が仕事をしているのだ。気になるに決まっている。
けれど、土の匂いと、微かに漂う彼の香りの混じった温室は、これまでどこにいても感じられなかった「家」のような安心感に満ちていた。
翌朝から、僕は朝食を済ませるとすぐに温室へ向かった。
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「よし、まずは掃除からだね」
腕まくりをして、僕はバケツと雑巾を手に取った。
ヘンリックさんが手伝おうとしてくれたけれど、ここはヴァルター様が「僕のために」と言ってくれた場所だ。まずは自分の力でどこまでできるか試してみたかった。
曇ったガラスを一枚ずつ拭いていく。腕がだるくなり、息が切れる。でも、ガラスが透明感を取り戻し、外の白い雪景色がキラキラと透けて見えるようになると、疲れなんて吹き飛んでしまった。
「……何をしている。掃除など、下に任せればいいと言っただろう」
背後から響いた低い声に、僕は手を止めて振り返った。
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「あ、ヴァルター様! 見てください、あそこのガラス。綺麗になったでしょう?」
「…………。拭き跡が残っているな」
ヴァルター様は呆れたように溜息をついた。けれど、その足は迷いなく埃っぽい温室の中へと進んでくる。
彼はデスクに向かっているときのような険しい表情を少しだけ解き、温室の隅で丸まっていた古い棚を指差した。
「それは重いだろう。……どかしておく」
「えっ、でも閣下のお洋服が汚れちゃいます!」
「構わん。これくらいの魔力操作、造作もない」
ヴァルター様が右手をかざすと、黒い魔力の波が棚を包み込み、ふわりと浮かせた。彼はそれを、僕が掃除しやすい場所へと軽々と移動させた。
呪いの力。誰にも触れられず、忌み嫌われてきたその力が、今は僕の掃除を手伝うために使われている。
「……閣下の力、やっぱりかっこいいですね」
「っ、……馬鹿なことを。壊すためだけの力だと言っただろう」
ヴァルター様はふいと顔を背けたけれど、その耳が赤くなっているのを僕は見逃さなかった。
彼はそのまま帰るかと思いきや、なぜか近くの椅子に腰を下ろし、持ってきた書類を読み始めた。
「閣下? お仕事、ここでやるんですか?」
「……お前の掃除があまりにも危なっかしいからだ。監視しているだけだ。……気にするな」
気にするなと言われても、すぐ隣で公爵様が仕事をしているのだ。気になるに決まっている。
けれど、土の匂いと、微かに漂う彼の香りの混じった温室は、これまでどこにいても感じられなかった「家」のような安心感に満ちていた。
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