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【番外編】それぞれの……
【番外編28】チート知識改革
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(三人称/ジラ視点)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここはエーペロス大陸ゲノコーラ地方のペドラー山脈にあるラクルス村。
村の中央で、ジラ少年がなにやら妙な生き物と話をしていた。
「石けん? なにそれ?」
ジラは目の前でもふもふ飛んでいる小さな生き物に尋ねた。
この萌黄色のまんまる生物は自らをカルディと名乗っていた。
100日ほど前、神様を名乗る頭がちょっと不幸そうな少年2人と、このラクルス村に迷い込んできたのだ。
2人の少年はどこかにいなくなってしまったが、どういうわけか、このカルディだけはこの村に住み着き、村長代理のジラに色々と助言してくれる。
「手足や食器を洗うためのものよ」
「水とは違うの?」
「全然違うわよ」
カルディも元神だという。
本当に神かどうかは怪しいが、確かに色々なことを知っている。
で、今度は『石けん』なるものを作れという。
「大体、この村不潔なのよ、よくゆうたんは我慢していたもんだわ」
彼女が『ゆうたん』と呼ぶのはパドのことらしい。
なぜパドが『ゆうたん』なのか。というか、そもそもどうしてこの毛玉がパドのことを知っているのか。
分からないことだらけだが、カルディがジラとこの村に知識をくれるのは、パドのためらしい。
曰く、『ゆうたんがいつか戻ってくる為に村を発展させるっていうなら手伝うわよ』だそうな。
「必要なのは油脂と水酸化ナトリウム……は難しいから、灰をつかって水酸化カリウムかな。油は動物からとるとして……」
などと、カルディはどんどん自分で考えている。
ハッキリ言って、ジラには何を言っているのか分からない。
分からないが、この毛玉のアドバイスが村に役立っていることも事実なのだ。
彼女の助言で作った、足踏み式の脱穀機は農作業の効率を格段に上げた。
「で、その石けんができるとなにかいいことがあるのか?」
「不潔じゃなくなるわ」
「?」
「もう少し言えば、病気が減る。この間も赤ちゃんが風邪にかかって大変だったでしょう? 石けんがあればかなりの病気が防げるわ。もちろん、完全にとは言わないけど」
なんだかよく分からないが、風邪や伝染病の予防になるらしい。
「それって、つまり、薬じゃないの?」
薬師のブシカが亡くなり、その弟子になっていたリラも旅立ってしまった。
そのせいで、先日も薬が手に入らなくて大変だった。
「薬とは違うわよ。うんもう、なんて言ったら良いのかしら……」
ともあれ、カルディがこういうからには作ってみる価値はあるだろう。
ジラはなんとなくそう納得して、カルディと2人、石けん作りを始めるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(三人称/ザバン視点)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エーペロス大陸南西、ダゴラスの渓谷。
そこに2人の少年と、1人のドワーフの姿があった。
「人族の小僧2人が何をしに来たのかと思ったが、確かにこれは面白いな」
ドワーフの名前はザバン。
職人気質の者が多いドワーフの中でも、特に彼は特殊な分野の研究に力を入れていた。
それ故に、他のドワーフ達からもやや孤立して、こんな渓谷の洞窟に1人住んでいるわけだが。
そこに訪ねてきたのが人族と思わしき2人の少年。
当初はとっとと追っ払おうとしたザバンだったが、そのうちの1人ルペースが描いたという設計図を見て気が変わった。
そこに描かれていたのは、火薬を使って小さな鉄の玉を飛ばす武器である。
ルペースはそれを『銃』と呼んでいた。
「一体、お前さん達はなにもんだ? 人族のガキが考えつくようなレベルの精密さじゃねーぞ、これは」
ザバンの問いに、ルペースは『ふん』と鼻を鳴らす。
「私の正体など、お前達には理解できん。そんなことよりも、作れるのか作れないのか、どっちだ?」
クソ生意気なガキだが、これだけのものを持ってきたのであればそうなるのもわからないではない。
「誰に聞いてやがる……と言いたいところだがな。何しろ全く未知のもんだ。さすがの俺でも確約はできんな」
ザバンは自分を火薬研究の第一人者だと自負している。
もともと、この世界の火薬は爆発させるものではなく、火が消えにくくなる程度の威力しかない。
ザバンは硝石の量や、それに混合させる物質を様々に研究し、火薬とはやり方次第で、爆発物となることを示した。
だが、その威力が大きすぎる故に、ドワーフの間でも彼の技術は忌避されていた。
もともとドワーフは口こそ悪いが好戦的ではなく、戦は好まないのだ。
ザバンにしたところで、戦争の事など意識せず、ただ職人として研究を楽しんでいるだけだ。いわば、たまたま、研究テーマの火薬が、武力に直結しやすかっただけにすぎない。
パド少年の前世でダイナマイトを作ったアルフレッド・ノーベルも、彼自身が大量に人が死ぬ戦争を望んだわけではないのと同じだ。
そんな自分の噂をどこで聞いたのか、ルペースとバスティーニというこの2人の少年は、火薬を使ったさらなる武器の設計図を持ち込んだというわけだ。
「ま、やってはみるさ。お前さん達も手伝いな。これだけの設計図を画けるっていうなら、多少は腕に覚えもあるんだろう」
この90日後、この世界に最初の『銃』が誕生することになる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カルディとジラによるラクルス村での文明改革。
ルペースとザバンによるダゴラス渓谷での武器改革。
まだ小さなものだが、この世に『神によるチート知識』がもたらされた。
それはやがて、この大陸全体の運命を大きく変えることになるのだが……
……それはまだ、先の話である。
(三人称/ジラ視点)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここはエーペロス大陸ゲノコーラ地方のペドラー山脈にあるラクルス村。
村の中央で、ジラ少年がなにやら妙な生き物と話をしていた。
「石けん? なにそれ?」
ジラは目の前でもふもふ飛んでいる小さな生き物に尋ねた。
この萌黄色のまんまる生物は自らをカルディと名乗っていた。
100日ほど前、神様を名乗る頭がちょっと不幸そうな少年2人と、このラクルス村に迷い込んできたのだ。
2人の少年はどこかにいなくなってしまったが、どういうわけか、このカルディだけはこの村に住み着き、村長代理のジラに色々と助言してくれる。
「手足や食器を洗うためのものよ」
「水とは違うの?」
「全然違うわよ」
カルディも元神だという。
本当に神かどうかは怪しいが、確かに色々なことを知っている。
で、今度は『石けん』なるものを作れという。
「大体、この村不潔なのよ、よくゆうたんは我慢していたもんだわ」
彼女が『ゆうたん』と呼ぶのはパドのことらしい。
なぜパドが『ゆうたん』なのか。というか、そもそもどうしてこの毛玉がパドのことを知っているのか。
分からないことだらけだが、カルディがジラとこの村に知識をくれるのは、パドのためらしい。
曰く、『ゆうたんがいつか戻ってくる為に村を発展させるっていうなら手伝うわよ』だそうな。
「必要なのは油脂と水酸化ナトリウム……は難しいから、灰をつかって水酸化カリウムかな。油は動物からとるとして……」
などと、カルディはどんどん自分で考えている。
ハッキリ言って、ジラには何を言っているのか分からない。
分からないが、この毛玉のアドバイスが村に役立っていることも事実なのだ。
彼女の助言で作った、足踏み式の脱穀機は農作業の効率を格段に上げた。
「で、その石けんができるとなにかいいことがあるのか?」
「不潔じゃなくなるわ」
「?」
「もう少し言えば、病気が減る。この間も赤ちゃんが風邪にかかって大変だったでしょう? 石けんがあればかなりの病気が防げるわ。もちろん、完全にとは言わないけど」
なんだかよく分からないが、風邪や伝染病の予防になるらしい。
「それって、つまり、薬じゃないの?」
薬師のブシカが亡くなり、その弟子になっていたリラも旅立ってしまった。
そのせいで、先日も薬が手に入らなくて大変だった。
「薬とは違うわよ。うんもう、なんて言ったら良いのかしら……」
ともあれ、カルディがこういうからには作ってみる価値はあるだろう。
ジラはなんとなくそう納得して、カルディと2人、石けん作りを始めるのだった。
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(三人称/ザバン視点)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エーペロス大陸南西、ダゴラスの渓谷。
そこに2人の少年と、1人のドワーフの姿があった。
「人族の小僧2人が何をしに来たのかと思ったが、確かにこれは面白いな」
ドワーフの名前はザバン。
職人気質の者が多いドワーフの中でも、特に彼は特殊な分野の研究に力を入れていた。
それ故に、他のドワーフ達からもやや孤立して、こんな渓谷の洞窟に1人住んでいるわけだが。
そこに訪ねてきたのが人族と思わしき2人の少年。
当初はとっとと追っ払おうとしたザバンだったが、そのうちの1人ルペースが描いたという設計図を見て気が変わった。
そこに描かれていたのは、火薬を使って小さな鉄の玉を飛ばす武器である。
ルペースはそれを『銃』と呼んでいた。
「一体、お前さん達はなにもんだ? 人族のガキが考えつくようなレベルの精密さじゃねーぞ、これは」
ザバンの問いに、ルペースは『ふん』と鼻を鳴らす。
「私の正体など、お前達には理解できん。そんなことよりも、作れるのか作れないのか、どっちだ?」
クソ生意気なガキだが、これだけのものを持ってきたのであればそうなるのもわからないではない。
「誰に聞いてやがる……と言いたいところだがな。何しろ全く未知のもんだ。さすがの俺でも確約はできんな」
ザバンは自分を火薬研究の第一人者だと自負している。
もともと、この世界の火薬は爆発させるものではなく、火が消えにくくなる程度の威力しかない。
ザバンは硝石の量や、それに混合させる物質を様々に研究し、火薬とはやり方次第で、爆発物となることを示した。
だが、その威力が大きすぎる故に、ドワーフの間でも彼の技術は忌避されていた。
もともとドワーフは口こそ悪いが好戦的ではなく、戦は好まないのだ。
ザバンにしたところで、戦争の事など意識せず、ただ職人として研究を楽しんでいるだけだ。いわば、たまたま、研究テーマの火薬が、武力に直結しやすかっただけにすぎない。
パド少年の前世でダイナマイトを作ったアルフレッド・ノーベルも、彼自身が大量に人が死ぬ戦争を望んだわけではないのと同じだ。
そんな自分の噂をどこで聞いたのか、ルペースとバスティーニというこの2人の少年は、火薬を使ったさらなる武器の設計図を持ち込んだというわけだ。
「ま、やってはみるさ。お前さん達も手伝いな。これだけの設計図を画けるっていうなら、多少は腕に覚えもあるんだろう」
この90日後、この世界に最初の『銃』が誕生することになる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カルディとジラによるラクルス村での文明改革。
ルペースとザバンによるダゴラス渓谷での武器改革。
まだ小さなものだが、この世に『神によるチート知識』がもたらされた。
それはやがて、この大陸全体の運命を大きく変えることになるのだが……
……それはまだ、先の話である。
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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