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第一章
やっつける!
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あれは四歳の時だった。落ちたことにびっくりして身を固くしていたら、火も衝撃も、全然平気だった。わたしって結構頑丈なんだなと、初めて知った瞬間である。
料理をしていたら暖炉から娘が落ちてきたので、母は相当驚いたらしい。しかも、服に火がついた状態で、暖炉から出てきたのだ。
いつの間に屋根に登ったのかと母に怒られ、泣かれながら、二度と屋根で遊ばないときつく約束させられた苦い記憶が蘇る。
「ハハハッ……やっぱりとんでもねぇ嬢ちゃんだ! どうだ? 俺と一緒に、この国を……」
バキィッ!!
なんだかよくわからないけれど隙だらけになっていた髭男の顎に、わたしの拳がクリーンヒットした。
ぐるんと髭男が白目をむいて、ドォンと倒れた衝撃で床を揺らした。興奮からか高揚からかわからないが、完全に油断していたところを攻撃できたようで、髭男は回避も防御もできず、一撃で床に沈んだのだった。
わたしは、ようやく髭男を一泡吹かせることに成功し、にんまりと笑みを浮かべた。
「あなたなんかと一緒に何かするなんて、絶対にお断りよ!」
気絶している髭男にそう言ってやると、少しだけ気持ちがスッキリしたのだった。
そして残った男たちにくるりと向き直ると、わたしはキランと目を光らせた。
「あ、兄貴!」
「兄貴がやられた!」
「おい、これマズくないか!?」
「ヒィッ! く、来るなぁ!!」
わたしはそうわめく彼らめがけて、ダッと駆け出した。
ドガッ! バキッ! ドゴン! ドッカーン!!
「ぎゃああああ!」
「ブベッ!」
「ガハッ!」
「ぐっふぉおお!」
髭男以外は、誰もわたしの攻撃に対応できる人はいなかったようで、わたしはあっという間にその場にいた男たちを全員倒すことに成功した。
「ふう、やったわ。完全勝利ね!」
死屍累々となった部屋の物陰から、クロがひょこっと姿を現した。
《……さすがだな、キアラ》
「あっ、クロ! さっきは助かったわ。ありがとう!」
後ろから攻撃された時、クロが念話で教えてくれたので、ちゃんと防御することができた。あの時油断したまま殴られていたら、またしばらく気絶してしまっていたかもしれない。
《いや。むしろ、あれくらいしかできなくてごめん》
「何を言ってるの? すっごく助かったわ。やっぱり、クロは最高よ!」
なぜか少し申し訳なさそうなクロをひょいっと抱き上げ、しっかりと目を合わせてそう言うと、クロはやっと少し表情を緩めた。
《それより、早くここを出よう。これだけの施設だし、きっと他にも仲間がいるはずだ》
「そうね。よーし、脱出するわよ!」
わたしは、意気揚々と部屋を出た。
しかし、すぐにその足を止める。
部屋の外は、無機質な雰囲気の石造りの廊下が左右に向かって続いていた。どうやら、すぐに出口というわけにはいかないようだ。
……というか、そもそも、ここはどこなのかしら?
あんな、武器や拘束具だらけの部屋なんて普通ではないし、ここはひょっとして、あの悪いやつらのアジトなのだろうか。
母を人質に取ってわたしを攫おうとしたり、わたしを奴隷にしようとしたりしたのだから、あいつらがめちゃくちゃ悪いやつらなのは間違いない。
……あんなやつらを捕まえて取り締まるのも、領主の仕事のはずよね? まったく、あのブーゴン男ったら、本当に役に立たないんだから!
「クロ、どっちが出口かわかる?」
《ごめん、わからない。俺はキアラのポケットに身を潜めて、ここまで来たから》
「えっ、わたしのポケットに入ってたの!?」
……確かにこのポケットは大きいし、クロは小さいから入るだろうけど、まさかそこまでしてついてきてくれるなんて。
「危険なのに、わたしを助けようとしてついてきてくれたのね。ありがとうクロ!」
《……いいから、早く行こう》
クロはそっけない態度でツンと顔を背けたが、きっと照れ隠しに違いない。
わたしはそんなクロに、思わずふふっと笑みがこぼれた。
「じゃあとりあえず、こっちに行ってみようかな?」
どちらが出口かはわからないので、とにかく進んでみるしかない。
わたしはクロと一緒に、左へ向かって走った。
そしていくつか角を曲がると、開けた場所に出た。
「えっ……なにこれ……?」
わたしは想像もしていなかった状況に、一瞬にして固まってしまった。
辿り着いた場所は行き止まりになっていたのだが、わたしが驚いたのは、それが理由ではない。
そこが、まるで悪人を閉じ込める、牢屋のようだったからだ。
鉄格子がはめられたたくさんの部屋の奥に、ボロボロの服を着た人たちが何人もいた。
そのほとんどが痩せ細った体に虚ろな目をしていて、うずくまるように地面に腰を下ろしている。
「……ここって、もしかして、捕まえた奴隷たちを閉じ込めておく場所なの?」
料理をしていたら暖炉から娘が落ちてきたので、母は相当驚いたらしい。しかも、服に火がついた状態で、暖炉から出てきたのだ。
いつの間に屋根に登ったのかと母に怒られ、泣かれながら、二度と屋根で遊ばないときつく約束させられた苦い記憶が蘇る。
「ハハハッ……やっぱりとんでもねぇ嬢ちゃんだ! どうだ? 俺と一緒に、この国を……」
バキィッ!!
なんだかよくわからないけれど隙だらけになっていた髭男の顎に、わたしの拳がクリーンヒットした。
ぐるんと髭男が白目をむいて、ドォンと倒れた衝撃で床を揺らした。興奮からか高揚からかわからないが、完全に油断していたところを攻撃できたようで、髭男は回避も防御もできず、一撃で床に沈んだのだった。
わたしは、ようやく髭男を一泡吹かせることに成功し、にんまりと笑みを浮かべた。
「あなたなんかと一緒に何かするなんて、絶対にお断りよ!」
気絶している髭男にそう言ってやると、少しだけ気持ちがスッキリしたのだった。
そして残った男たちにくるりと向き直ると、わたしはキランと目を光らせた。
「あ、兄貴!」
「兄貴がやられた!」
「おい、これマズくないか!?」
「ヒィッ! く、来るなぁ!!」
わたしはそうわめく彼らめがけて、ダッと駆け出した。
ドガッ! バキッ! ドゴン! ドッカーン!!
「ぎゃああああ!」
「ブベッ!」
「ガハッ!」
「ぐっふぉおお!」
髭男以外は、誰もわたしの攻撃に対応できる人はいなかったようで、わたしはあっという間にその場にいた男たちを全員倒すことに成功した。
「ふう、やったわ。完全勝利ね!」
死屍累々となった部屋の物陰から、クロがひょこっと姿を現した。
《……さすがだな、キアラ》
「あっ、クロ! さっきは助かったわ。ありがとう!」
後ろから攻撃された時、クロが念話で教えてくれたので、ちゃんと防御することができた。あの時油断したまま殴られていたら、またしばらく気絶してしまっていたかもしれない。
《いや。むしろ、あれくらいしかできなくてごめん》
「何を言ってるの? すっごく助かったわ。やっぱり、クロは最高よ!」
なぜか少し申し訳なさそうなクロをひょいっと抱き上げ、しっかりと目を合わせてそう言うと、クロはやっと少し表情を緩めた。
《それより、早くここを出よう。これだけの施設だし、きっと他にも仲間がいるはずだ》
「そうね。よーし、脱出するわよ!」
わたしは、意気揚々と部屋を出た。
しかし、すぐにその足を止める。
部屋の外は、無機質な雰囲気の石造りの廊下が左右に向かって続いていた。どうやら、すぐに出口というわけにはいかないようだ。
……というか、そもそも、ここはどこなのかしら?
あんな、武器や拘束具だらけの部屋なんて普通ではないし、ここはひょっとして、あの悪いやつらのアジトなのだろうか。
母を人質に取ってわたしを攫おうとしたり、わたしを奴隷にしようとしたりしたのだから、あいつらがめちゃくちゃ悪いやつらなのは間違いない。
……あんなやつらを捕まえて取り締まるのも、領主の仕事のはずよね? まったく、あのブーゴン男ったら、本当に役に立たないんだから!
「クロ、どっちが出口かわかる?」
《ごめん、わからない。俺はキアラのポケットに身を潜めて、ここまで来たから》
「えっ、わたしのポケットに入ってたの!?」
……確かにこのポケットは大きいし、クロは小さいから入るだろうけど、まさかそこまでしてついてきてくれるなんて。
「危険なのに、わたしを助けようとしてついてきてくれたのね。ありがとうクロ!」
《……いいから、早く行こう》
クロはそっけない態度でツンと顔を背けたが、きっと照れ隠しに違いない。
わたしはそんなクロに、思わずふふっと笑みがこぼれた。
「じゃあとりあえず、こっちに行ってみようかな?」
どちらが出口かはわからないので、とにかく進んでみるしかない。
わたしはクロと一緒に、左へ向かって走った。
そしていくつか角を曲がると、開けた場所に出た。
「えっ……なにこれ……?」
わたしは想像もしていなかった状況に、一瞬にして固まってしまった。
辿り着いた場所は行き止まりになっていたのだが、わたしが驚いたのは、それが理由ではない。
そこが、まるで悪人を閉じ込める、牢屋のようだったからだ。
鉄格子がはめられたたくさんの部屋の奥に、ボロボロの服を着た人たちが何人もいた。
そのほとんどが痩せ細った体に虚ろな目をしていて、うずくまるように地面に腰を下ろしている。
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