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第一章
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よく見れば、牢屋の中にいる人たちは全員、先ほどわたしがつけられたのと同じ首輪をしている。
わたしが現れたことに気づいたらしい、檻の中にいる男の人と、一瞬目が合った。
しかし、その人はすぐに視線を地面に落とした。全てを諦めてしまったような彼の無表情に、胸が痛くなる。
《……どうやらあいつらは、奴隷商人だったみたいだな》
頭の中で聞こえてきたクロの声に、ハッと我に返る。クロは、わたしの足元で顔をしかめながら、周囲にいる人たちを見ていた。
「クロ、どうしてあの人たちは、ここに捕まってるのかしら?」
《わからないけど、この状態は間違いなく違法だから、まともな理由なんてないと思うぞ。帝国は奴隷制度を禁止しているから、属国となった時点でこのフェルドナも帝国法に従うべきなのに、きっと裏ではこうして以前の奴隷制度がずっと存在していたんだろうな》
クロの弁に、わたしはぎょっとしてクロを見つめた。
……聞いたのはわたしだけど、クロってば、プーニャなのに賢すぎない!?
母から教わったことがある。
ここフェルドナという国は、何十年も前に帝国へ戦争をけしかけ、敗戦して属国となったのだと。
だから、この国は厳密に言うともう国ではなく、フェルドナという帝国の領地なのだ。それをさらにいくつかに分けて、それぞれの地に小領主が置かれているのだとか。その一人が、あのブーゴン男というわけである。
「じゃあ、この人たちが奴隷にされているのはおかしいってことよね?」
《当然そうなるな》
「むうう……!」
……なんてやつらなの。わたしだけじゃなくて、こんなにたくさんの人たちを捕まえて、無理矢理奴隷にしているなんて!
「クロ。わたし、あいつらのこと許せないわ。それに、ここの人たちを逃がしてあげたい!」
《……気持ちはわかるけど、すでに首輪をつけられてる。無理に壊して爆発したら、みんなはキアラみたいに無事ではいられないぞ》
「うっ、ええっと、じゃあ鍵を見つけて……」
《あの首輪、たぶん鍵で開けるわけじゃないと思う。魔道具だから、解除には専用の魔法を使うんじゃないかな》
「ええっ!?」
……そんなの、どうやって外せばいいの!?
《とりあえずここを出て、後で然るべき場所へ報告するのが妥当な対応だと思うけど》
「でも、それだと逃げられちゃうかもしれないわ!」
クロの提案に、わたしは首を振る。
先ほど髭男が言っていたが、首輪を管理している、ボスと呼ばれている人が他にいるらしい。きっと何人もの仲間がまだ残っているのだろう。
わたしがここを出れば、悪いやつらは当然そのことにすぐ気づくはずだ。わたしが誰かに助けを求めることはきっと想像できるだろうし、騎士や兵士が来る前に、この人たちを連れて逃げようとするに違いない。
そもそも、わたしはここがどこなのか、全くわからないのだ。どこへ報告に行けばいいのかもわからないのだから、助けを呼ぶまで、もしかしたらかなり時間がかかってしまうかもしれない。
どうしたらいいのだろうと頭を悩ませていると、後ろの通路から、どよどよと大勢の人の気配がし始めた。
耳をすませると、かすかに「ガキを探せ!」という荒々しい言葉が聞こえてくる。
《まずいな。俺たちが逃げたのがバレたみたいだ》
「ど、どうしよう!?」
キョロキョロと周囲を見回すも、ここには隠れられそうな場所などない。また、この場所は袋小路になっているので、逃げようもなかった。
そして、まもなく男たちがこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。
わたしが現れたことに気づいたらしい、檻の中にいる男の人と、一瞬目が合った。
しかし、その人はすぐに視線を地面に落とした。全てを諦めてしまったような彼の無表情に、胸が痛くなる。
《……どうやらあいつらは、奴隷商人だったみたいだな》
頭の中で聞こえてきたクロの声に、ハッと我に返る。クロは、わたしの足元で顔をしかめながら、周囲にいる人たちを見ていた。
「クロ、どうしてあの人たちは、ここに捕まってるのかしら?」
《わからないけど、この状態は間違いなく違法だから、まともな理由なんてないと思うぞ。帝国は奴隷制度を禁止しているから、属国となった時点でこのフェルドナも帝国法に従うべきなのに、きっと裏ではこうして以前の奴隷制度がずっと存在していたんだろうな》
クロの弁に、わたしはぎょっとしてクロを見つめた。
……聞いたのはわたしだけど、クロってば、プーニャなのに賢すぎない!?
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ここフェルドナという国は、何十年も前に帝国へ戦争をけしかけ、敗戦して属国となったのだと。
だから、この国は厳密に言うともう国ではなく、フェルドナという帝国の領地なのだ。それをさらにいくつかに分けて、それぞれの地に小領主が置かれているのだとか。その一人が、あのブーゴン男というわけである。
「じゃあ、この人たちが奴隷にされているのはおかしいってことよね?」
《当然そうなるな》
「むうう……!」
……なんてやつらなの。わたしだけじゃなくて、こんなにたくさんの人たちを捕まえて、無理矢理奴隷にしているなんて!
「クロ。わたし、あいつらのこと許せないわ。それに、ここの人たちを逃がしてあげたい!」
《……気持ちはわかるけど、すでに首輪をつけられてる。無理に壊して爆発したら、みんなはキアラみたいに無事ではいられないぞ》
「うっ、ええっと、じゃあ鍵を見つけて……」
《あの首輪、たぶん鍵で開けるわけじゃないと思う。魔道具だから、解除には専用の魔法を使うんじゃないかな》
「ええっ!?」
……そんなの、どうやって外せばいいの!?
《とりあえずここを出て、後で然るべき場所へ報告するのが妥当な対応だと思うけど》
「でも、それだと逃げられちゃうかもしれないわ!」
クロの提案に、わたしは首を振る。
先ほど髭男が言っていたが、首輪を管理している、ボスと呼ばれている人が他にいるらしい。きっと何人もの仲間がまだ残っているのだろう。
わたしがここを出れば、悪いやつらは当然そのことにすぐ気づくはずだ。わたしが誰かに助けを求めることはきっと想像できるだろうし、騎士や兵士が来る前に、この人たちを連れて逃げようとするに違いない。
そもそも、わたしはここがどこなのか、全くわからないのだ。どこへ報告に行けばいいのかもわからないのだから、助けを呼ぶまで、もしかしたらかなり時間がかかってしまうかもしれない。
どうしたらいいのだろうと頭を悩ませていると、後ろの通路から、どよどよと大勢の人の気配がし始めた。
耳をすませると、かすかに「ガキを探せ!」という荒々しい言葉が聞こえてくる。
《まずいな。俺たちが逃げたのがバレたみたいだ》
「ど、どうしよう!?」
キョロキョロと周囲を見回すも、ここには隠れられそうな場所などない。また、この場所は袋小路になっているので、逃げようもなかった。
そして、まもなく男たちがこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。
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