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第一章
解放
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死屍累々とは、まさにこういうことを言うのだろう。
わたしはばたばたと地面に倒れ伏している男たちを見渡しながら、ふう、と息を吐いた。あとから数人、様子を窺っていたと思われる男たちが現れたせいで、全部で三十人くらいは倒した気がする。さすがに人数が多かったけれど、クロの手助けもあったおかげで、なんとかなった。あと、あんまり強い人もいなかったし。
《キアラ。これ、檻の鍵じゃないか?》
「わっ、クロすごい!」
クロが、ハゲ男の服から鍵束を探り当てて、わたしに教えてくれた。
たぶん鉄格子くらいわたしが力を込めれば壊せると思うが、さすがに少し疲れたので、とてもありがたい。
わたしはその鍵束を使って、全ての檻を開けていった。
「みんな、もう大丈夫よ! クロが、首輪が爆発する機能を壊してくれたの。だから、もうお家へ帰れるわ!」
わたしがそう言っても、なぜかみんな、嬉しそうではなく戸惑ったような顔をしている。
「……どうしたの?」
「ここから出してくれたことは、ありがとう。あなた、小さいのにすごく強いのね」
「でも、信じられないわ。わたし、あいつらに逆らって首輪を爆発させられた人のことを見たことがあるのよ。あ、あんなふうにはなりたくない……!」
「そ、そうだよ。それに、クロって、そのプーニャだろう? プーニャにそんな能力、あるわけないじゃないか」
……うっ。
そう言われると、困ってしまう。わたしだって、どうしてクロにこんなことができるのか、さっぱりわからないのだ。説明なんてできるわけがない。
「あ、あの……!」
少し震えた声がした方へ視線を向けると、最初に檻から出されていた、治癒魔法を使える獣人族の女の子が、わたしを見つめていた。
「あの、つまり、もう無理矢理これを取っても大丈夫ということでしょうか?」
「う、うん。そう……よね? クロ」
女の子の問いかけに、わたしは頷く。そして一応確認するようにクロを見たが、クロはツンとそっぽを向いて、無言を貫いている。
「ええと……?」
「あ、気にしないで。クロはいつもこうなの。間違ってたら言ってくれるはずだから、大丈夫ってことなのよ」
「そ、そうなのですか……?」
クロは、出会った頃からこんな感じだ。質問に対して、肯定の時はほとんど無反応なのである。違う時は軽く叩いてくるなり何かしら反応して教えてくれるので、今回はきっと、「そうだよ」という意味なのだ。
「あのっ、それなら……この首輪、壊してもらえませんか?」
ザワッと、周囲から動揺の声があがった。みんなはまだ、そんなことをすれば爆発するのではないかと思っているようだ。
「わたしは、わたしを助けてくれたあなたの言うことを信じます。でも、自分では外せなくて……」
「ああ、そうよね!」
爆発しないなら簡単に外せると思っていたが、それはわたしの力がちょっと強めだからのようだ。この子は獣人族だけれど、あまり力が強くないらしい。
「じゃあ、壊すわね!」
バキッ!
「きゃあっ!」
「う、うわあっ!」
わたしが首輪を壊すと周囲から怯えるような声があがったが、当然爆発などは起こらなかった。クロが大丈夫だと言ったのだから平気なのに、みんな心配しすぎである。
「……!」
獣人族の女の子が、首輪がなくなった自身の首元を、信じられないという表情で確認するように触った。そしてわたしの方に目を向けると、くしゃりと顔を歪ませた。
「あ、ありがとうございます。本当に、ありがとう……っ」
女の子の目から、ポロッと涙がこぼれた。次々と流れてきて止まらない涙を、ボロボロの服の袖で彼女が拭う。
「た、頼む。俺のも壊してくれ!」
「わ、わたしのも……!」
女の子の首輪を壊しても無事だったのを見て、みんな安心したらしい。誰も自分で壊せる人はいなかったようで、全員ぶんの首輪をわたしが壊してあげることになった。
わたしはばたばたと地面に倒れ伏している男たちを見渡しながら、ふう、と息を吐いた。あとから数人、様子を窺っていたと思われる男たちが現れたせいで、全部で三十人くらいは倒した気がする。さすがに人数が多かったけれど、クロの手助けもあったおかげで、なんとかなった。あと、あんまり強い人もいなかったし。
《キアラ。これ、檻の鍵じゃないか?》
「わっ、クロすごい!」
クロが、ハゲ男の服から鍵束を探り当てて、わたしに教えてくれた。
たぶん鉄格子くらいわたしが力を込めれば壊せると思うが、さすがに少し疲れたので、とてもありがたい。
わたしはその鍵束を使って、全ての檻を開けていった。
「みんな、もう大丈夫よ! クロが、首輪が爆発する機能を壊してくれたの。だから、もうお家へ帰れるわ!」
わたしがそう言っても、なぜかみんな、嬉しそうではなく戸惑ったような顔をしている。
「……どうしたの?」
「ここから出してくれたことは、ありがとう。あなた、小さいのにすごく強いのね」
「でも、信じられないわ。わたし、あいつらに逆らって首輪を爆発させられた人のことを見たことがあるのよ。あ、あんなふうにはなりたくない……!」
「そ、そうだよ。それに、クロって、そのプーニャだろう? プーニャにそんな能力、あるわけないじゃないか」
……うっ。
そう言われると、困ってしまう。わたしだって、どうしてクロにこんなことができるのか、さっぱりわからないのだ。説明なんてできるわけがない。
「あ、あの……!」
少し震えた声がした方へ視線を向けると、最初に檻から出されていた、治癒魔法を使える獣人族の女の子が、わたしを見つめていた。
「あの、つまり、もう無理矢理これを取っても大丈夫ということでしょうか?」
「う、うん。そう……よね? クロ」
女の子の問いかけに、わたしは頷く。そして一応確認するようにクロを見たが、クロはツンとそっぽを向いて、無言を貫いている。
「ええと……?」
「あ、気にしないで。クロはいつもこうなの。間違ってたら言ってくれるはずだから、大丈夫ってことなのよ」
「そ、そうなのですか……?」
クロは、出会った頃からこんな感じだ。質問に対して、肯定の時はほとんど無反応なのである。違う時は軽く叩いてくるなり何かしら反応して教えてくれるので、今回はきっと、「そうだよ」という意味なのだ。
「あのっ、それなら……この首輪、壊してもらえませんか?」
ザワッと、周囲から動揺の声があがった。みんなはまだ、そんなことをすれば爆発するのではないかと思っているようだ。
「わたしは、わたしを助けてくれたあなたの言うことを信じます。でも、自分では外せなくて……」
「ああ、そうよね!」
爆発しないなら簡単に外せると思っていたが、それはわたしの力がちょっと強めだからのようだ。この子は獣人族だけれど、あまり力が強くないらしい。
「じゃあ、壊すわね!」
バキッ!
「きゃあっ!」
「う、うわあっ!」
わたしが首輪を壊すと周囲から怯えるような声があがったが、当然爆発などは起こらなかった。クロが大丈夫だと言ったのだから平気なのに、みんな心配しすぎである。
「……!」
獣人族の女の子が、首輪がなくなった自身の首元を、信じられないという表情で確認するように触った。そしてわたしの方に目を向けると、くしゃりと顔を歪ませた。
「あ、ありがとうございます。本当に、ありがとう……っ」
女の子の目から、ポロッと涙がこぼれた。次々と流れてきて止まらない涙を、ボロボロの服の袖で彼女が拭う。
「た、頼む。俺のも壊してくれ!」
「わ、わたしのも……!」
女の子の首輪を壊しても無事だったのを見て、みんな安心したらしい。誰も自分で壊せる人はいなかったようで、全員ぶんの首輪をわたしが壊してあげることになった。
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