半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子

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第一章

緊急会議 前編

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 十年前。
 皇太后とディオルグの従兄妹姫ルイーダによる陰謀により、ディオルグとサーシャはすれ違い、離れることになった。
 
 悲しくて苦しくて、ディオルグがもう永遠に起き上がることはできないかもしれないと思った時、やっと二人は再会し、誤解を解くことができた。

 そして少しの時間だけだったが、サーシャが眠りにつくまでの間、ディオルグは彼女がこの十年どんなふうに暮らしていたのか、話を聞くことができた。

 サーシャは遠い辺境の地へ連れて行かれ、用意された家で一人、働きながらキアラを産み育てていたという。しかし、領主に目をつけられてしまってからは、住んでいた家を追い出され、仕事もクビになり、貧しく苦しい生活を送っていたそうだ。

 聞いているだけで殺したくなってくるその小領主は、後で確実に死んだ方がマシな目に遭わせると彼は心に決めた。

 サーシャやキアラが受けた心痛を思えば、百回殺しても足りない。
 
 ……一瞬の苦痛で終わらせてなどやるものか。

 ディオルグはサーシャを抱きしめて、穏やかな声で労りながら、頭の中ではその男の処遇についてあれこれ考えを巡らせていた。
 
 そしてその元凶である出来事により、ディオルグ自身も、つがいを失った悲しみから命の危機にまで陥った。その上、娘が産まれていたことも知らず、これまでの成長を見守る機会を永遠に奪われてしまったのだ。
 
 ……あんなに愛らしい娘の存在を、今まで知らずにいたとは、悔やんでも悔やみ切れん!
 
 心から愛するつがい、サーシャにそっくりな顔立ちと、自分に良く似た色合いと雰囲気を持つ幼子。ひと目見て、ディオルグは自分の娘であると確信した。
 
 サーシャ以外に自分の心を揺さぶる存在ができるなど考えたこともなかったというのに、あの子だけは別だった。
 あれほど可愛い子供など、世界中のどこを探しても他にいないに違いない。
 
 この十年、何よりも大切な二人を守ってあげられなかった。だからこそ、これからは身を賭して大切にしていかなくてはならない。
 
 そのためにまずやるべきことは、真っ先に二人に害をなしそうな皇太后と従兄妹への対処だ。二人とも立場のある人物であるため面倒なことになりそうではあるが、二人の行いが処罰に値する行動であったことは明白だ。
 
 知らなかったとはいえ、皇帝のつがいに手を出すなど、到底許されることではない。
 
 ディオルグは、深夜に行われる側近たちを集めた緊急会議で、十年前の真実を伝えることにした。
 会議を行う第一義は、眠っていた期間の様々な報告をできるだけ早く受けるためだが、その際に彼女たちの処遇も共に検討しようと考えていたのだ。
 
「みんな、心配をかけて済まなかった。私がいない間、よく帝国を守ってくれた。優秀で忠誠心の高い側近たちを持って、私は本当に幸せ者だ」
 
 ディオルグは、自分の目覚めを知って急遽集まってくれた六人の側近たちを見回し、まずは労いの言葉をかけた。
 誰も彼も、元々心から信頼していた側近たちとはいえ、十年もの間、主の快復を信じて支え続けてくれたのだ。いくら感謝しても足りないほどよくやってくれたと思っている。
 
「陛下。本当に、よくぞお戻りになられました……!」
「我ら一同、陛下のご快復とつがい様とのご結婚を、心よりお祝い申し上げます!」
 
 全員が揃って主に敬礼をすると、ディオルグは笑顔で頷いた。
 
「みんな、ありがとう」
 
 そうして再会を喜び合うと、すぐさま会議が始められた。
 
 一年以上眠っていたせいで記憶と現在の情報のすり合わせに若干苦労しつつ、ディオルグは様々な報告を受けていく。その中で、まだ知り得なかった自身の母親の現状に、彼は驚愕を隠せなかった。
 
「……母上が、半年前に亡くなっているだと……!?」
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