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第一章
ノアルード⑩
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まずしなければならないのは、状況把握だ。
精霊たちが言った、見つけたとか適合とかいうのは、十中八九このプーニャの体のことだろう。
こうして精神を移す魔法はただでさえ難易度が高いうえ、親和性が重要だ。偶然にも、色合いが全く同じだったからか、オレはこのプーニャと親和性が高かったのだろう。
出力は元の姿の時よりも落ちるようだが、先ほど小さな池を作ったように、魔法は問題なく使えるようだ。これなら、この情けなくて弱々しい魔獣の姿でも、すぐに他の魔獣にやられることはないだろう。
はしゃいでいる精霊たちは放置して、現在地を魔法で探ると、近くにオレが閉じ込められている尖塔があることがわかった。元の場所からそれほど離れていないようだ。
……さて。これからどうするか。
苦しみからは逃れられたが、元の体が崩壊しかけているという問題は解決していない。まだ元の体とうっすら精神が繋がっているのを感じるが、依然として崩壊は進行中のようだ。
でも、オレの精神が抜けたことで、精霊たちがなりふり構わず体の修復に当たり始めたらしい。崩壊の進行がかなりゆるやかになっている。
しかし、ただでさえ苦しかったのに、痛みを度外視で皮膚を切り貼りするような修復をしているものだから、細胞が悲鳴をあげているのがわかる。精神を移していなかったら、ショック死していたかもしれない。
それでも、やっぱり修復はただの時間稼ぎにしかならない。ゆるやかにでも、体は崩壊していっているのだから。
……この感じ、たぶん、体が完全に消滅したら、プーニャに入っている精神も消えるんだろうな。まぁ、ずっとこのままプーニャとして生きていこうとは思えないけど。
それまでに体の崩壊を防ぐ方法を見つけられたらいいのだが、プーニャの体ではそれも難しいかもしれない。皇帝は魔法使いたちに探させていると言っていたけれど、彼も言っていたように、恐らく期待はできないだろう。
何より、他力本願のままのうのうと待っているわけにはいかない。この姿でもできることがないか探さないと……。
オレが考えに耽っているうちに、精霊たちははしゃぐのをようやく止めたようだ。しきりにオレに動くよう促し、進む方向を指示してくる。
精霊たちは多くを語らないが、こんなふうに行く方向や場所を示してくる時は、大抵何かいいものがある時だ。
……もしかして、何か当てがあるのか?
精霊たちが根拠もなく行動するわけがない。自分自身にはこれから行く場所の当てなどないのだから、大人しく彼らの指し示す方向へ向かうことにした。
ーーが、それからが大変だった。
プーニャの体は動きづらいことこの上ないし、魔法を使う感覚も違う。慣れるのにかなり時間がかかった。
それに、オレが弱そうに見えるのだろう、出会う動物や魔獣がことごとく襲ってくる。なんとか全て返り討ちにできたが、この体であるせいで、かなり苦戦した時もあった。
どこまで行くのか、いつ着くのか、何が目的なのかもわからないまま、ただ移動を繰り返した。
そして、プーニャの体にもだいぶ慣れ、二ヶ月ほどが過ぎた。帝都からかなり離れ、人里の規模はだんだんと小さくなり、この辺りにあるのは小さな村ばかりだ。
こんな田舎の方に、魔力暴走を防ぐ手がかりになるような何かがあるのだろうかと不思議に思っていると、目的の場所が近いのか、精霊たちが騒ぎ始めた。
一体何があるのだろうと、期待と緊張にゴクリと喉を鳴らす。すると次の瞬間、オレは空中に投げ出されていた。
……は!?
意味がわからなくて、対応が遅れた。青い空を呆然と見ていると、体が真っ逆さまに落ちていく。
慌てて風魔法を展開しようとすると、遠くに見える地面の方から、何かがすごい勢いでこちらへ向かってくるのがわかった。
……女の子!?
とんでもない高さを、魔法も使わずに跳躍してきたその子は、オレを抱き抱えると、そのまま重力に従って落下していった。そしてすさまじい轟音と共に、なんとその身ひとつで着地を成功させたのである。
信じられない身体能力を見せた彼女は、赤い髪に金色の目をしていた。それは、帝国の皇帝と全く同じ色合いだった。
……偶然か? とても人間族とは思えない能力だけど……角もないし、こんな辺境に皇帝の血縁がいるはずがないよな。
どうやら精霊たちはオレをこの子と引き合わせたかったらしい。わけがわからなかったが、とりあえず様子を見ようと、彼女……キアラについていくことにした。
◇◇◇◇◇
精霊①「ただのプーニャじゃあの子の興味を引けないかもしれない!」
精霊②「よし! 空から落としてみよう!」
精霊③「そうしようそうしよう!」
そんな感じで落とされました。
次回でノアルードの回想は終わりです。
もう少々お付き合いくださいませ。
精霊たちが言った、見つけたとか適合とかいうのは、十中八九このプーニャの体のことだろう。
こうして精神を移す魔法はただでさえ難易度が高いうえ、親和性が重要だ。偶然にも、色合いが全く同じだったからか、オレはこのプーニャと親和性が高かったのだろう。
出力は元の姿の時よりも落ちるようだが、先ほど小さな池を作ったように、魔法は問題なく使えるようだ。これなら、この情けなくて弱々しい魔獣の姿でも、すぐに他の魔獣にやられることはないだろう。
はしゃいでいる精霊たちは放置して、現在地を魔法で探ると、近くにオレが閉じ込められている尖塔があることがわかった。元の場所からそれほど離れていないようだ。
……さて。これからどうするか。
苦しみからは逃れられたが、元の体が崩壊しかけているという問題は解決していない。まだ元の体とうっすら精神が繋がっているのを感じるが、依然として崩壊は進行中のようだ。
でも、オレの精神が抜けたことで、精霊たちがなりふり構わず体の修復に当たり始めたらしい。崩壊の進行がかなりゆるやかになっている。
しかし、ただでさえ苦しかったのに、痛みを度外視で皮膚を切り貼りするような修復をしているものだから、細胞が悲鳴をあげているのがわかる。精神を移していなかったら、ショック死していたかもしれない。
それでも、やっぱり修復はただの時間稼ぎにしかならない。ゆるやかにでも、体は崩壊していっているのだから。
……この感じ、たぶん、体が完全に消滅したら、プーニャに入っている精神も消えるんだろうな。まぁ、ずっとこのままプーニャとして生きていこうとは思えないけど。
それまでに体の崩壊を防ぐ方法を見つけられたらいいのだが、プーニャの体ではそれも難しいかもしれない。皇帝は魔法使いたちに探させていると言っていたけれど、彼も言っていたように、恐らく期待はできないだろう。
何より、他力本願のままのうのうと待っているわけにはいかない。この姿でもできることがないか探さないと……。
オレが考えに耽っているうちに、精霊たちははしゃぐのをようやく止めたようだ。しきりにオレに動くよう促し、進む方向を指示してくる。
精霊たちは多くを語らないが、こんなふうに行く方向や場所を示してくる時は、大抵何かいいものがある時だ。
……もしかして、何か当てがあるのか?
精霊たちが根拠もなく行動するわけがない。自分自身にはこれから行く場所の当てなどないのだから、大人しく彼らの指し示す方向へ向かうことにした。
ーーが、それからが大変だった。
プーニャの体は動きづらいことこの上ないし、魔法を使う感覚も違う。慣れるのにかなり時間がかかった。
それに、オレが弱そうに見えるのだろう、出会う動物や魔獣がことごとく襲ってくる。なんとか全て返り討ちにできたが、この体であるせいで、かなり苦戦した時もあった。
どこまで行くのか、いつ着くのか、何が目的なのかもわからないまま、ただ移動を繰り返した。
そして、プーニャの体にもだいぶ慣れ、二ヶ月ほどが過ぎた。帝都からかなり離れ、人里の規模はだんだんと小さくなり、この辺りにあるのは小さな村ばかりだ。
こんな田舎の方に、魔力暴走を防ぐ手がかりになるような何かがあるのだろうかと不思議に思っていると、目的の場所が近いのか、精霊たちが騒ぎ始めた。
一体何があるのだろうと、期待と緊張にゴクリと喉を鳴らす。すると次の瞬間、オレは空中に投げ出されていた。
……は!?
意味がわからなくて、対応が遅れた。青い空を呆然と見ていると、体が真っ逆さまに落ちていく。
慌てて風魔法を展開しようとすると、遠くに見える地面の方から、何かがすごい勢いでこちらへ向かってくるのがわかった。
……女の子!?
とんでもない高さを、魔法も使わずに跳躍してきたその子は、オレを抱き抱えると、そのまま重力に従って落下していった。そしてすさまじい轟音と共に、なんとその身ひとつで着地を成功させたのである。
信じられない身体能力を見せた彼女は、赤い髪に金色の目をしていた。それは、帝国の皇帝と全く同じ色合いだった。
……偶然か? とても人間族とは思えない能力だけど……角もないし、こんな辺境に皇帝の血縁がいるはずがないよな。
どうやら精霊たちはオレをこの子と引き合わせたかったらしい。わけがわからなかったが、とりあえず様子を見ようと、彼女……キアラについていくことにした。
◇◇◇◇◇
精霊①「ただのプーニャじゃあの子の興味を引けないかもしれない!」
精霊②「よし! 空から落としてみよう!」
精霊③「そうしようそうしよう!」
そんな感じで落とされました。
次回でノアルードの回想は終わりです。
もう少々お付き合いくださいませ。
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