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3章
どんな耳してんだ!
しおりを挟む俺は桃山の面倒くささは良く知ってる。
だから下手に刺激しないで、何も聞かなかった事にして帰ろうと思っていた。
食後のデザートを勧められたけど、それを断って店を出ようと持ち掛ける。
桃山は特にしつこく話を続ける訳でもなく伝票を持ってスッと立ち上がった。
そして当たり前かのように支払いを済ませる。
「湊くん来てくれてありがとうね~♪お友達くんもまた来てね♪」
「ご馳走様♪また来るね~」
「ご馳走さん」
店を出る時、またしても扉を開けて俺を先に出そうと「どうぞ」と手を出した。
エレベーターの中で桃山が払ってくれた自分の分の金を渡す為に財布を出そうとすると、桃山が俺の前にスッと手の平を向けて出してニッコリ笑った。
「俺が連れてったんだし、貴哉は出さなくていーよ♪」
「いや、払う。お前後から請求しそうだし」
「しないって~」
「体で払えとか言いそう」
「あー、それ良いね♪」
「ほら!さっさと受け取れ!」
桃山がニヤッと笑った。
俺はゾッとして、すぐに千円札を出して渡す。桃山はそれを受け取って、そのままポケットにしまった。
「別にいいのに~」
「そう言う問題じゃねぇ」
「なぁこの後どうする?貴哉行きたいとこある?」
「ねぇよ。帰る」
「え?俺んちに来い?わーい♡」
「どんな耳してんだ!」
「こんな耳~♪」
つい桃山のボケに突っ込んじまった!
楽しそうに髪を耳に掛けてピアスだらけの耳を見せて来る桃山。
早い内にこいつと離れねぇと流されちまいそうだ。
エレベーターを降りて俺は早歩きで裏路地から表通りに出ようとする。
もちろん桃山も付いて来る。
このまま家に向かったらマジで付いて来そうだから適当に歩いてどっかで撒くか。
俺は初めに桃山がいたゲーセンに入って空いているアーケードゲーム機に座る。格闘ゲームで、楓達と良くやった事のあるゲームだ。
そして俺の横に立ってる桃山にニヤリと笑って言ってやる。
「なぁ対戦しようぜ?」
「やるー♪」
俺が誘うと嬉しそうに反対側に回って行った。
よし、ゲームをするフリをして隙を見て逃げよう。適当に相手して桃山を熱くさせて集中してる所を狙おう。
俺はそんな事を考えながら金を入れて桃山とゲームで対戦を始めた。
「なぁ貴哉~」
「何だよ?」
「遊んでくれてありがと」
「…………」
いきなりの礼に俺は考える。
桃山の奴、俺の考えが分かって気を引こうとしてんのか?だとしたら普通に返しといた方がいいか。迷ってると桃山が更に話し出した。
その間にゲームも始まり、桃山は対戦しながら普通に話していた。
「俺さ、今まで誰かと付き合って別れてもすぐに切り替え出来て普通にしてられたんだわ。そいつの事すぐどうでも良くなれたし、次に行くのも簡単だったんだ」
「…………」
桃山はゲームも上手かった。話しながら俺の攻撃を交わしながら器用に反撃して来て、俺のHPはジリジリ減って行った。
「でも今回はいつもと違った。一緒にいた時の事をたまに思い出すよ。思い出したからって泣いたり笑ったりする訳でもねぇんだけどよ」
「……あっ」
俺の渾身の必殺技が外れて、その時の桃山の反撃で俺は負けた。
「はは、貴哉弱っ♪」
「クソ!もう一回だ!」
俺は悔しくなって、桃山に言うと「はいはい」と言ってもう一戦やってくれる事になった。
てかさっきから茜の事言ってんのか?
それって未練タラタラじゃねぇか。
だったら普通に寄り戻せば良くね?茜だってまだ桃山の事好きだろ。
ゲーム開始と共に桃山は話の続きを言い始めた。
「だからさー、何か楽しい事して忘れたいなぁって思ったら貴哉が浮かんだんだ。これって恋だろ?」
「ちげぇだろ。暇そうなのが俺ぐれぇしか思い付かなかっただけだろ」
「まぁ貴哉は暇だろうとは思ったけどよ。でも一番会いたかったのはお前だよ」
「…………」
ヤバい。桃山ってばゲーム上手過ぎん?
攻撃しようとするとすぐに投げ技仕掛けられて床に叩きつけられるし、必殺技出そうとすると足払いされて地面に叩きつけられるし、逃げようとすると飛び道具使われてやっぱり地面に叩きつけられる。
そんでもって一切声色を変えずに話すんだ。
筐体越しだから顔が見えねぇけど、今どんな顔してんだろ。
俺はボーッとしながらそんな事を考えてると、いつの間にかゲームは終わっていて、気付くと桃山が隣に立っていた。
その顔はいつもと同じで、笑顔だった。
「あ、俺負けたのか」
「もう一戦するかー?」
「いや、もういいや」
俺は立ち上がって桃山を見る。背が高いから少し見上げる感じになった。
俺が見てると桃山はヘラ~っと笑って服を引っ張って来た。
「ならさ、今度はあっちやろ♪俺、音ゲーのが得意だから」
「…………」
楽しそうな桃山は、得意だと言うゲーム機まで俺を引っ張った。
さっきまで逃げる気満々だった俺は、桃山が言ってた事が頭から離れなくてモヤモヤしていた。
ゲームで対戦している時に桃山が言った事は本心なのか?
だとしたら俺はどう答えたらいい。
いつものようにスルーしようと思ったけど、何だろう、この胸のモヤモヤは。
俺は桃山の笑顔を見れば見るほど胸が苦しくなって、帰ろうとしてたのも忘れていた。
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