【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

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4章

※ 俺も前田のようになれたらと思うよ

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 ※茜side

 今日の昼休みは天気が良かったから一人で中庭のベンチで食べていた。こうして晴れて陽が当たればポカポカして気持ち良い。
 それにしてももう少しで冬休みか~。
 俺は秋山と過ごす日々を楽しみにワクワクしていた。

 俺が長期休暇を友達と過ごせるなんて、信じられないな。夏休みもなかなか楽しかったけど、あの時は湊と付き合っていたから湊を優先してしまったからな。秋山とも遊んだけど、ほぼゲームばかりだったから、今回はどこかへ遊びに行ったりゲーム以外の事をやりたいな。
 
 湊とはあれから話してない。
 学校ですれ違ってもお互い目すら合わせない関係になっていた。少し寂しい気もするけど仕方ない事だ。俺が悪いんだからな。
 そう悲観に浸っていても面白くないから、俺はなるべく考えないようにしていた。
 

「二之宮♪」

「!」


 弁当箱を片付けて教室へ戻ろうかと考えていたら、誰かに後ろから両肩をポンっと叩かれてビックリしてしまった。
 振り向くと、ニコニコ笑顔の前田がいた。
 前田とは同じクラスで今は生徒会長をやっている優秀な男だ。性格も明るくて誰がどう見ても文句の言いようのない素晴らしい男。俺も文化祭の準備辺りから話すようになったけど、あの時は本当に世話になった。


「前田か。驚かせるなよ~」

「あはは♪驚いた?教室へ戻る途中で二之宮を見掛けたからさ~。一人なのか?」


 俺が軽く笑って言うと、前田は隣に座って楽しそうに話し出した。
 こうして誰とでも自然に話せる前田が羨ましく思う。いつでも良し悪しがハッキリしていて良く湊は怒られていたけど、いつも前田が正しかった。そうやって怒る姿を見せても周りに嫌われない事が凄いなと思う。
 

「ああ。天気が良いから外で食べたくなったんだ」

「それなら誘ってくれればいいのに♪俺も外で食べるの好きだから」

「前田は忙しいだろ。いつも教室にもいないしな。俺なんかの相手してる暇なんかないんじゃないのか?」

「なんかって言うなよ~。忙しいのは確かだけど、二之宮とお昼を過ごす時間ぐらい作れるさ♪」

「前田は本当に凄いな。俺も前田のようになれたらと思うよ」

「な、何言ってるんだよ~!二之宮だって……」


 俺が褒めると、照れたように笑っていた。そして俯いて黙り込んだ。
 前田は話してる途中でたまにこうして黙る事があるんだ。俺が何か気に障ることを言ったりしてしまったのかと思ったりもするけど、しばらくするとまたニッコリ笑って話し出すんだ。
 噂でだけど、前田は二重人格だと聞いた事がある。もしかしてこの事かなと思っている。


「前田?大丈夫か?」

「はっ!二之宮!そろそろ次の授業が始まるな!一緒に戻ろう!」


 そろそろ心配になり、俺が声を掛けるとスイッチが入ったように再び喋り出した。
 何か嫌な事をしてしまったのならハッキリ言って欲しいけど、そうじゃないなら気まずくなるのは嫌だから俺も聞けずにいる。

 俺は前田の言う事を聞いて立ち上がり、教室へ向かおうと歩き出す。


「午後の授業は自習だったな。二学期も終わるなって感じがす、る……?」

「そうだな。明後日には終業式だからな……って二之宮?」


 中庭から見える廊下が騒がしかったんだ。誰かが何かを抱えて急いでいて、その後から数人の先生達が駆け寄って来て……
 あれ、今抱えられてたのって人か?

 俺が黙ってそれを見てると前田も気付いたようで不思議そうに見ていた。


「何かあったのかな?先生達があんなに慌ててるなんて珍しいな」

「さっき人を抱えてるみたいだったな」

「誰かが倒れたとか?でも先生達が対処してるし問題ないだろ。もうすぐ鐘が鳴るからそろそろ行こう」

「ああ……」


 何だろ。凄く気になるな……
 だけど、前田の言う通り自習と言えど授業に遅れるのは良くないからな。俺は前田の後を付いて玄関で靴を履き替えてると、階段を降りて来る先生と生徒が見えた。
 その光景に俺はすぐに反応していた。生徒は右足を庇うように歩いて、右側から柴田先生が支えるように歩いていた。そしてその生徒は秋山だったんだ。


「秋山!何があった!?」

「あっ二之宮!」

 
 俺が声を出して駆け寄ると、声に気付いた秋山が泣きそうな顔をして見上げて来た。そんな秋山の顔に俺は胸が張り裂ける思いだった。
 秋山に何かあったのは確かで、足を負傷していて柴田先生が付き添っている。もしかしたらさっきの騒ぎと関係があるのでは?
 

「茜ぇ!紘夢が目を開けねぇんだ!」

「どういう事だ!?」

「ちょっと、秋山くん!ダメだってば!二人ももう授業が始まるから行きなさい」


 自分から離れて俺に縋り付いて来る秋山を叱るように言う柴田先生は、俺と前田にも教室へ行くように促した。
 以前の俺なら大人しく言う事を聞いていただろう。だけど、秋山だと言う事で俺の心は揺らいでいた。学校での授業は大切だ。だけど、今の俺にとって秋山は、柴田先生を振り払ってでも抱き締めて話を聞きたくなる程大切な存在なんだ。
 

「二之宮、行こう。鐘が鳴ってる」


 前田に肩をポンとされて秋山から離されそうになる。そうだな、前田からしたら鐘が鳴る前に席に着いていないと気が済まないだろう。
 俺は前田にも怒られる覚悟で弱っている秋山を抱き締めた。


「前田っ先に行っていてくれ。俺は……秋山の側にいたいっ」

「うわーん!茜ぇ~!」

「に、二之宮くんっ」

「…………」


 俺は後ろ髪を引かれる思いで泣き出す秋山を摩りながら前田に自分の気持ちを伝えた。
 そうだ。俺にとって秋山は何よりも大切な友達なんだ。辛そうにしているのを放っておくなんて出来ない。
 俺の行動に優柔不断な柴田先生は困っていて、前田は何を思ったのか黙り込んでいた。

 叱られてもいい。罰を受けてもいい。
 秋山の力になれるなら何でも良かった。

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