【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

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7章

※ そんな冷たい事言わないでよ

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 ※空side

 夜、一人で兄貴と住んでるマンションに帰ると、明かりが点いている事に気付いてまさかと思って急いで部屋に入ると、兄貴がリビングのテーブルに座ってパソコンをいじっていた。
 俺に気付いて「おかえり」と声を掛けてくれた。


「ただいま……兄貴、店は?」

「今日はもう店仕舞いしたよ。明日から正月休みなんだよ」

「そうなんだ。お疲れ様」

「空もお疲れ様」


 兄貴はニコッと笑ってコーヒーを淹れてくれようとしていた。俺は母さんと住む事を兄貴に話さなくちゃいけない。きっと怒られるだろうな。
 俺が今まともな生活が送れてるのは兄貴のお陰なんだ。なのに、それを裏切るような事を言い出したら……俺とも縁を切ると言い出すかも知れないな。
 それは嫌だけど、母さんの事は心配だから……


「座りなよ。はいコーヒー」

「ありがとう。あのさ兄貴」

「何?」


 ずっと笑顔の兄貴。凄く言い出しにくかった。
 何て言ったら兄貴は気を悪くしないだろう。
 いや、母さんの所に戻るって時点で何を言っても無駄だ。

 兄貴は育児放棄をした母さんの事を憎んで縁を切って自立したんだ。光児さんがいてくれた事もあったけど、兄貴はほとんど一人で頑張っていたよ。俺の事まで気に掛けて助けてくれたんだ。


「空」

「兄貴……」


 なかなか続きを言い出さない俺に怒ったりせずに、笑顔のまま兄貴は座っていた隣の椅子に置いてあったバッグから何かを取り出してテーブルに出した。
 通帳と印鑑?俺は何をし出すんだと不思議に思いながら見ていた。


「これは空の通帳だよ。父さんから受け取ってた空の分の養育費は高校の入学の時に使ったけど、残りは全てここに入っているよ」

「えっ!嘘……?」


 俺は兄貴が言う事に驚きながらも通帳の名前を見てみる。確かに名義は「早川空」ってなっていた。ペラペラと表紙を捲って中を見てみると、ズラッと数字が並び、どれも入金ばかりされていた。しかも最後の方は結構な額が貯まっていた。


「これからはこれは空が好きに使ってよ。空が高校を卒業するまでは毎月振り込まれるから貯金し続けてもいいかもね」

「何で急に?」

「空はあの人の所へ行きたいんだろ?それなら必要になるだろ」

「兄貴……分かってたのか?」

「お前の事なら何でも分かるよ」

「じゃあ、俺が母さんの所に戻る事を許してくれるの?」

「仕方ないよね。空がそうしたいなら。その代わりこれからは俺はお前の世話からは手を引くよ。いいね?」

「え……」

「当然だよね?俺があの人の事嫌ってるの知ってるだろ。そんな人を選ぶのなら俺はもう何もしない」

「そんな冷たい事言わないでよ。俺達はこれからも兄弟じゃん」

「冷たい事?そうかな?ちゃんと勉強が出来て食べ物も食べられるようにして来た俺を捨てて行く方が冷たいと思うけど」

「っ……」


 何も言い返せずに、ただ目の前に置かれた自分名義の通帳を眺めて俺はどうしたらいいのか分からずにいた。
 兄貴の言う通りだよな。今まで心配してくれて何もかも世話をしてくれてた兄貴を裏切るような事をしようとしてるんだ。そう言われてもしょうがない。
 でもさ、兄貴からそんな風に言われたら俺、凄く嫌だよ。まるで関わりのない他人になるみたいな言い方、嫌だよ。


「兄貴、俺どうしたら……」

「空が決めな。安心して?今回は止めたりしないから」

「兄貴は?俺が母さんの所へ戻ったら兄貴とはもう会えないの?そんなの嫌だっ」

「…………」

「俺は母さんが心配だから実家に戻る気でいるよ。でも、それのせいで兄貴と縁を切るなんて出来ない!」

「空……」

「俺にとって兄貴も母さんも大事な人なんだよっ兄貴、頼むからもう冷たい事言わないでくれよっ母さんとも、ちゃんと話し合おうよ……多分、まだお互い言えてない事あるからっ……兄貴も、母さんも、俺も!言いたい事言い合おうよ!」

「はぁ?そんな必要ないだろ。俺はパス。絶対にあの人とは関わらないから」

「兄貴!」


 兄貴はパソコンを閉じてコーヒーが入ったマグカップを流しに運んでいた。話を終わらせる気だ。このままじゃ兄貴と終わっちゃう!

 
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