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1章 金の無い客
6.似てるんだお前は
しおりを挟むホテルに着くなり朱里はデカいベッドにドサっと倒れ込みそのまま動かなくなった。
おいおいマジかよ。せっかくここまで来れたってのに本気で寝る気か?
俺は朱里のスーツの上着を脱がせながら起こそうと頑張る。
「スーツがシワになるぞ」
「…………」
「お前風呂も入ってねぇだろ」
「…………」
「……はぁ」
スヤスヤと眠る朱里を見て何だか起こす気が失せた。
とりあえずスーツはハンガーに掛けてやろうと着ていた服を全て脱がせてパンイチにしてやる。
うわ、意外と良い体してんな。背は俺より少し高いぐらいなのに、良い感じに筋肉付いてて肌も綺麗だ。あ、そっか俺の一個下でまだ若いんだっけ。
って事は22?大学卒業して今年就職した口か?だから金無いって豪語してんのかな。そもそも俺達はいつ会ってんだろ。それ聞いときゃ良かったな。
気持ち良さそうに眠る朱里の横に寝転がっていろいろ考える。
まぁ朱里の言う事を全部信じてる訳じゃないけどな。元客だって言うなら尚更だ。
ただ俺は今は一緒にいたいだけだ。
伊吹に何となく似ている朱里と。
「はぁ、飲み直すか~!」
俺は元々伊吹んちに行こうとしていて買っていた酒をホテルの冷蔵庫に入れて、テレビを付けてドリンクのオーダーする画面を表示させる。
ポチポチとリモコンを操作しながらアルコールのメニューを見てると、ベッドにいた酔っ払いが動いた。
「んん……寒い……」
「おー、起きたか?」
そりゃ冷房付いた部屋で真っ裸で寝てりゃ寒いわな。俺は面白くてクスクス笑いながら声を掛けると、顔だけこちらを向けた朱里と目が合った。
酔いでも冷めたのかパッチリ開いてガン見してるけど、記憶飛んだとか言い出しそうだな。
「あれっ!?ルナくん!?俺寝てた!?ってここどこ!?」
「記憶飛ばすとこまでそっくりかよ。ぐっすり寝てたぜ?もう朝の9時だけど?」
「ええー!?9時!?遅刻だぁ!!」
このホテルに着いたのは夜中の1時とかだ。それから1時間も経ってねぇよ。俺の嘘に朱里は慌てて飛び起きてベッドから落ちそうになっていた。
どこまで面白ぇんだこの人間。
「うわぁ!危ない!ってここどこ!?俺のスマホは!?」
「ラブホ♡安心しろよ。まだ1時だから」
「1時!?いやいや、何でラブホテルなんかにいるの!終電は!?」
「んなのもうねぇよ。お前が泥酔しちまったから仕方なく俺が面倒みてやったんだ。ありがたく思え」
「あ、そう言えば飲めないテキーラを一気したような……ご、ごめんね!ルナくんに迷惑掛けちゃったね……」
薄っすらと思い出したのか青ざめた顔して謝って来た。お人好しめ。
こういう奴見るともっと虐めたくなるよな。
俺はリモコンをガラスのテーブルに置いてベッドに近付いて申し訳なさそうにしてる朱里の顔を撫でてやる。
「迷惑掛けた分、俺の言う事聞けよ?いいな?」
「な、何を聞けばいいの?」
「なーに、怖い事はねぇよ。俺に抱かれろ。そしたらここのホテル代も帰りのタクシー代も出してやる」
「え!?今なんて!?」
「あ?お前金ねぇんだろ?素直に喜べよ」
元々俺が無理矢理連れ込んだんだから、それぐらいは払うつもりだった。後で訴えられても困るしな。
普段俺は客には抱かれる方が多いんだけど、本当はタチだ。こういう好青年っぽい男をめちゃくちゃに犯してやるのが好きなんだ。だけど、俺が誰かとホテルに行くのは金を払ってくれる奴だけだ。そう言う奴は大抵挿れたがるからそういう機会はあまり無い。
本当は伊吹と出来たらいいんだけどな。
「ごめんっ」
「は?何その謝罪?」
まさかの「ごめん」に、軽くイラッとした。俺からの誘いを断るってーの?散々俺に会いたかったとか想い続けてたとか言ってた癖に本番は嫌ですとか舐めてんの?
「いや、ルナくんとそういうのをするのは俺が抱かれるんじゃなくて、抱くのをイメージしてたと言うか……」
「ん?」
「ああごめんなさいっ!一人でする時に俺に挿れられてるルナくんを想像してました!勝手な事をしてごめんなさい!!」
「……はぁ?オナニーのおかずにしてただぁ?」
謝罪の理由が予想外な事だったから、拍子抜けした。パンイチで正座して謝る姿が面白くて俺は声を出して笑っちまった。
「あはは!朱里って天然かよ?良いじゃん♪なぁ、想像の俺ってどんなんだった?聞かせろよ」
「あれ、笑ってる?怒ってないの!?」
「テメェ俺の質問に答えろや」
「ひぃぃ!やっぱり怒ってる!てか何で俺裸なの!?もしかしてもう犯された後!?」
ああもう、こいつは……
何だろうな。調子狂うんだよ。でもよ、嫌じゃねぇんだよな。
わざとかって思うけど、そういう反応とかも伊吹に似てて嫌いになれねぇんだ。
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