【完結】取り柄はズル賢い事だけです

pino

文字の大きさ
17 / 38
3章 次の嫁はお前に決めた

16.イメチェンなんてレベルじゃねぇ

しおりを挟む

 日曜日、朱里との約束の時間は14時。朱里はもっと早くに会いたがったけど、俺の都合でこの時間になった。
 そして用事を済ませて待ち合わせ場所の駅に行くと、一際目を引く色男の朱里がいた。さすがに今日は私服だった。大きめのカットソーに黒のジーンズ。うん、普通の若者って感じだな。
 俺は白Tに黒のカーディガンを羽織ってバケットハットを被っていた。それを見た朱里が顔を覗き込んで来たけど、どうやら気付いたみてぇだな。

 
「ルナくん!もしかして髪切ったぁ!?」

「おう♪イメチェン♪」

「わぁ~、帽子取って見せて~?」


 そう、俺は午前中美容室へ行って三年間同じどっかの王宮の貴族のような髪型とはおさらばして来たんだ。
 昨日突発で思い付いたから担当の美容師に無理を言ってカットだけでもお願いしたから、昼前ならって事でこの時間になったんだ。
 
 俺は笑顔の朱里に言われてバケットハットを取って見せてやる。帽子を被ってた理由はなんとなくだ。いや、少し気恥ずかしかったんだ。


「バッサリいったね!前のも良かったけど、こっちの方が好きだな♪」

「そうか?似合わねぇとか言ったらぶん殴ろうかと思ったぜ」


 俺は肩まであった髪を大分短く切った。前下がりだったのが無くなって軽くなり顔も前より出るようになった。顔には自信があったけど、女顔なのが嫌で隠すような髪型が多かったんだけど、ここまで短くしたのは初めてだ。
 髪色は変わらずピンク色のままだ。

 ニューヘアーをお披露目した後、再び帽子を被ろうとすると、朱里が不思議そうな顔して聞いて来た。


「ルナくんならどんな髪型でも似合いそうだよね。どうして帽子を被るの?」

「あ?俺が大物だからだよ。本当はサングラスも掛けたいぐらいだぜ」

「あ~、ルナくん目立つもんね~」

「お前は地味だよな。なんつーか、もっとお洒落とかしねぇの?」

「ル、ルナくんみたいにって事?」

「おう、俺を真似るのは上級者だけどな。髪は仕事とかあるだろうから別にそのままでもいいけどよ、せっかく男前なんだからもう少しお洒落すりゃいいのに」

「あのっルナくんから見て俺ってかっこいいって事?」


 いきなり食い付いて来やがったな。
 てか毎日鏡見てねぇのかよ。朱里はかっこいい部類に入るだろ。それも上物。ま、俺程じゃねぇけどな。


「お前自覚ねぇのかよ?かなりレベル高いと思うぜ?だから俺が店通さねぇで会ってるんだし」

「実はね、コンタクトにしたんだ」

「あ、そうなんだ。イメチェン成功じゃん」

「ルナくんが言ったからコンタクトにしてみたんだ。そしたら仕事も上手くいくようになってね……」


 ん?俺そんな事言ったか?
 てか俺と会った時にはもうメガネなんかしてなかったよな?


「ちょっと待て。それ俺じゃねぇだろ。テメェ誰と間違えてんだよ」

「間違えてないって!初めて会った時だよ~」

「あ、店で会った時か」


 初回の1時間だっけか。メガネかけてたのか。それでも思い出せねぇな。てか1時間のデートとかお茶して少し話したぐらいじゃん?
 たまにそういう暇つぶしみてぇな事するのいるけどよ、それでもこんなけかっこよかったら覚えてそうだけどな。
 それに朱里は普通に話せるし、性格も明るい方だと思う。
 

「なぁそん時の写真とかねぇの?それ見たらお前の事思い出すかもじゃん」

「写真……あ、免許証ならルナくんと会う前のやつだからあの時と近いかも!」

「それ見せてみろ」


 写メとかねぇのかよ。まぁ免許証のがリアルだし分かりやすいか。
 朱里は肩から下げてた鞄から使い古した財布を取り出して中から免許証を出して見せて来た。

 花森朱里。名前は本当か。そしてその免許証に写っていた人物に驚いた。


「はぁ!?これお前かよ!?」

「えへへ、当時周りからも同じ反応されたよ」


 こりゃ誰でも驚くだろ。

 免許証に写っていたのは正に別人かってぐらいの男で、デカいメガネは度が強いのか、レンズの向こうの目はかなり小さかった。そして髪もボサボサで伸ばしっぱなしな感じ。眉毛とかもゲジゲジのように太くて、清潔感の無い感じの男だった。
 えー、これが朱里かよ!詐欺じゃん!これなら童貞ってのも頷けるわ!

 俺は免許証と本人を何度も見比べて見たけど、やっぱり別人だった。
 いや待てよ?この免許証の男には何となく見覚えがあるぞ?
 ハッキリとは思い出せないけど、こんな冴えない男いたかも?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...