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3章 次の嫁はお前に決めた
16.イメチェンなんてレベルじゃねぇ
しおりを挟む日曜日、朱里との約束の時間は14時。朱里はもっと早くに会いたがったけど、俺の都合でこの時間になった。
そして用事を済ませて待ち合わせ場所の駅に行くと、一際目を引く色男の朱里がいた。さすがに今日は私服だった。大きめのカットソーに黒のジーンズ。うん、普通の若者って感じだな。
俺は白Tに黒のカーディガンを羽織ってバケットハットを被っていた。それを見た朱里が顔を覗き込んで来たけど、どうやら気付いたみてぇだな。
「ルナくん!もしかして髪切ったぁ!?」
「おう♪イメチェン♪」
「わぁ~、帽子取って見せて~?」
そう、俺は午前中美容室へ行って三年間同じどっかの王宮の貴族のような髪型とはおさらばして来たんだ。
昨日突発で思い付いたから担当の美容師に無理を言ってカットだけでもお願いしたから、昼前ならって事でこの時間になったんだ。
俺は笑顔の朱里に言われてバケットハットを取って見せてやる。帽子を被ってた理由はなんとなくだ。いや、少し気恥ずかしかったんだ。
「バッサリいったね!前のも良かったけど、こっちの方が好きだな♪」
「そうか?似合わねぇとか言ったらぶん殴ろうかと思ったぜ」
俺は肩まであった髪を大分短く切った。前下がりだったのが無くなって軽くなり顔も前より出るようになった。顔には自信があったけど、女顔なのが嫌で隠すような髪型が多かったんだけど、ここまで短くしたのは初めてだ。
髪色は変わらずピンク色のままだ。
ニューヘアーをお披露目した後、再び帽子を被ろうとすると、朱里が不思議そうな顔して聞いて来た。
「ルナくんならどんな髪型でも似合いそうだよね。どうして帽子を被るの?」
「あ?俺が大物だからだよ。本当はサングラスも掛けたいぐらいだぜ」
「あ~、ルナくん目立つもんね~」
「お前は地味だよな。なんつーか、もっとお洒落とかしねぇの?」
「ル、ルナくんみたいにって事?」
「おう、俺を真似るのは上級者だけどな。髪は仕事とかあるだろうから別にそのままでもいいけどよ、せっかく男前なんだからもう少しお洒落すりゃいいのに」
「あのっルナくんから見て俺ってかっこいいって事?」
いきなり食い付いて来やがったな。
てか毎日鏡見てねぇのかよ。朱里はかっこいい部類に入るだろ。それも上物。ま、俺程じゃねぇけどな。
「お前自覚ねぇのかよ?かなりレベル高いと思うぜ?だから俺が店通さねぇで会ってるんだし」
「実はね、コンタクトにしたんだ」
「あ、そうなんだ。イメチェン成功じゃん」
「ルナくんが言ったからコンタクトにしてみたんだ。そしたら仕事も上手くいくようになってね……」
ん?俺そんな事言ったか?
てか俺と会った時にはもうメガネなんかしてなかったよな?
「ちょっと待て。それ俺じゃねぇだろ。テメェ誰と間違えてんだよ」
「間違えてないって!初めて会った時だよ~」
「あ、店で会った時か」
初回の1時間だっけか。メガネかけてたのか。それでも思い出せねぇな。てか1時間のデートとかお茶して少し話したぐらいじゃん?
たまにそういう暇つぶしみてぇな事するのいるけどよ、それでもこんなけかっこよかったら覚えてそうだけどな。
それに朱里は普通に話せるし、性格も明るい方だと思う。
「なぁそん時の写真とかねぇの?それ見たらお前の事思い出すかもじゃん」
「写真……あ、免許証ならルナくんと会う前のやつだからあの時と近いかも!」
「それ見せてみろ」
写メとかねぇのかよ。まぁ免許証のがリアルだし分かりやすいか。
朱里は肩から下げてた鞄から使い古した財布を取り出して中から免許証を出して見せて来た。
花森朱里。名前は本当か。そしてその免許証に写っていた人物に驚いた。
「はぁ!?これお前かよ!?」
「えへへ、当時周りからも同じ反応されたよ」
こりゃ誰でも驚くだろ。
免許証に写っていたのは正に別人かってぐらいの男で、デカいメガネは度が強いのか、レンズの向こうの目はかなり小さかった。そして髪もボサボサで伸ばしっぱなしな感じ。眉毛とかもゲジゲジのように太くて、清潔感の無い感じの男だった。
えー、これが朱里かよ!詐欺じゃん!これなら童貞ってのも頷けるわ!
俺は免許証と本人を何度も見比べて見たけど、やっぱり別人だった。
いや待てよ?この免許証の男には何となく見覚えがあるぞ?
ハッキリとは思い出せないけど、こんな冴えない男いたかも?
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