【完結】取り柄はズル賢い事だけです

pino

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3章 次の嫁はお前に決めた

18.俺と言う男

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 朱里との買い物デートはかなり楽しい物になった。俺行きつけのファッション系のショップに連れ回し、朱里に着せ替え人形のようにいろんな服を試着させて楽しんだ。
 顔とスタイルが良いので大抵の服は似合っちまうな。黒髪だからどうしても重くなりがちだからアクセサリーも取り入れてお洒落させてみた。
 だけど、朱里には俺みたいにゴツいのは選ばなかった。なんとなくシンプルな方が似合う気がしたからだ。良い服やアクセサリーがあってもゴチャゴチャした物でいっぱいにしたらせっかくの綺麗な顔立ちが台無しになるからな。


「ネックレス初めて付けた!ねぇ変じゃない!?俺が付けててもおかしくない!?」


 試着した服をそのまま買って着せてすっかりお洒落なイケメンになった朱里が、俺の好きなキラキラ輝くジュエリーショップの鏡の前でチャームに付いた小さなダイヤが輝くネックレスを首に引っ下げて不安そうに聞いて来た。そんな騒ぐ客は朱里ぐらいだと思ったらおかしくて笑えた。
 でも、そんな朱里が可愛いくて俺は肩を掴んで耳元で言ってやった。


「すげぇ似合ってるよ。今のお前どんな女よりも綺麗だ」

「ル、ルナくん♡」

「よし、今日の買い物はそこまでな?飯行こうぜ飯~」


 歩き疲れたしそろそろ座りたい。俺がそう言うと、朱里は青ざめた顔をして固まっていた。
 俺はどうしたんだと思ってると、どうやらネックレスの値段を見て悩んでるらしい。そりゃそうか。今朱里が試着してるネックレスはうん十万もするからな。これまでの服も万単位だったからサラリーマンの朱里にはこの出費はキツいんだろ。

 
「ごめん、ルナくんがせっかく選んでくれたんだけど、これはまた今度に……」

「プレゼントしてやるからそのまま付けてろ。夕飯も奢ってやる」

「えっ!ルナくんが!?」

「うるせぇ。ここでそれ以上騒ぐんじゃねぇ」

「うっ……」


 朱里を黙らせて店員のお姉さんに言ってカードで会計を済ませる。ただの気まぐれだ。別に貢ぐとかじゃねぇ。ただあのネックレスがとても朱里に似合ってて、外して欲しくないと思ったからだ。
 
 俺が空の箱と紙袋を持って呆然と立ち尽くす朱里のとこに戻ると、ハッとして俺に泣きついて来た。


「ルナくん!やっぱり無理だよ!こんな大金すぐに返せないよ!」

「テメェ人の言う事聞けねぇのか。騒ぐんじゃねぇよ」


 後ろでお姉さんのクスクス笑う声が聞こえて来てイラッとしたから朱里を睨んで手を引いてさっさと店を出る。
 ガキでもあるまいギャーギャー騒ぎやがって恥ずかしい奴だなぁ。
 
 店を出た後、しばらく歩いてから朱里の手を離して横に並んで改めて買ったばかりのネックレスを見る。


「やっぱり良いじゃん♪お前にはこんぐらいシンプルなやつのが似合う」

「ルナくん……」


 すっかり怖気付いたのか、大人しくなったけど相変わらず不安そうな表情のままの朱里。
 普通の女とかならこういう時喜んで「ありがとう♡」だろうが。って、朱里は男だったな。あ、もしかして自分がプレゼントしたい側だったとか?
 んなの知るか。それなら俺より稼いでみろってんだ。


「お前俺の事が好きだって言ってたよな?」

「うん。好きだよ」

「だったら文句言うんじゃねぇよ。お前が俺をどんな男だと思ってたのか知らねぇけど、これが俺だ。俺は誰の言う事も聞かねぇし、俺の言う事聞かない奴はいらねぇ。俺といたいなら黙って従って側にいろ。それが出来ないなら二度と俺の前に現れんな」

「…………」


 落ち込んだまますっかり黙ってしまう朱里に、俺は後悔は無かった。
 だって本当の事だからだ。
 
 俺はずっとこのまま自分を変える気はさらさらねぇ。周りからどう思われようが嫌われようが構わねぇ。
 だって俺には失うもんも守るもんもねぇからな。
 好きに生きる。それが俺だ。

 だから客はちょうど良かった。
 金だけの繋がりで出来た関係は、時間が経てばそれまでだし、どんな俺を曝け出そうが問題ねぇ。

 今の朱里は半々だ。元々客だったけど、今は店を通してないし、むしろ俺のが金出してるぐらいだ。だからここらで線引きをするのも悪くない。

 本当の俺を知って朱里が離れていくのならそれはそれで構わない。

 だけどさ、現実を突き付けられた朱里のこの顔を見たら胸がズキズキしやがるのは何でだよ。
 俺の傍若無人振りを見たら大抵の奴は引いていくもんだけど、もし朱里も引いてったらと思うと俺は嫌だなと思った。

 矛盾してる自分の考えのもどかしさが余計に苛ついた。


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