【完結】取り柄はズル賢い事だけです

pino

文字の大きさ
23 / 38
4章 俺も初体験

22.女子高生なおっさん

しおりを挟む

 俺と朱里が正式に付き合ってから一週間が経ったぐらい。俺は朱里との関係に特に不満もなく、朱里からも前と変わらずの対応で日々を過ごしていた。
 ただ思うのは付き合うって何だ?って事。
 俺は性格上「付き合おう」って言って関係を進めるのはした事が無かった。ましてや「付き合って」と相手から言われるのなんてもっての外。何でお前の言う事聞かなきゃならねぇのって感じでそういうのは全部スルーして来たんだ。
 飯行ったり、ホテルで体の関係を持ったりとそういうのは数え切れないぐらいあったけど、恋人と言う存在がいた事がない俺にとっては実は初めての経験でもあった。

 恋人になったはいいけど、何すりゃいいんだ?毎日電話やメッセージとかはしてるけど、それっていつもと変わらねぇけど?
 でも朱里も何も言って来ないしこれでオーケーなのか?あんなにハッキリさせたがってた癖にいつも通りの日常に戻るとかそんなの有り?

 生憎俺にはそれを相談する相手がいない。
 前だったら伊吹や店長に話してたけど、事務所に通わなくなった今、話す機会が無くなった。
 今日、貯めてた給料を取りに行くんだけど、すげぇ久しぶりに来る気がするな。伊吹と話し合った以来だ。

 平日の事務所はとても静かだ。待機中のキャストはいるけど、土日などの休日に比べて予約も少なく、昼間なんてのはほとんど動きが無い日が多いからだ。売れっ子になればそんなの関係なく忙しいんだけど、大抵のキャストはここでひたすら待機をしてるだけだ。


「ういーす」


 俺が事務所のドアを開けると、店長が一人そこにいた。他のスタッフは出払ってるか休憩行ってるかか。まぁ平日らしい空気感だった。


「ルナ~。お疲れ様♪お給料は用意してあるよ」

「サンキュ♪そんじゃまたな~」

「もう行っちゃうの?たまにはゆっくりして行けばいいのに~」

「貴重なオフをこんなとこで過ごしたくねぇの」

「そんな事言って~。散々入り浸ってた癖に~♪」


 否定は出来なかった。伊吹と一悶着ある前までは毎日のようにここに居座ってたからな。事務所は第二の家みてぇなもんだった。
 

「この後用があるんだわ。それと次の土曜の出勤キャンセルしといてー?」

「まだ予約入ってないからいいけど、最近延長も受けないしどうしたのルナ」

「別にー?ただ延長の申し出が無いだけだし、仕事はちゃんとやってるから問題ねぇだろ」


 店長が不審に思うのも無理は無い。こうした急な休みを出したり、出勤時間を減らしたりしてるからだ。それと追加料金が取れるオプションも全部外した。店長や周りから見たらやる気ないのかと思われても仕方ねぇだろうな。


「問題は無いけど、ルナに何かあったんじゃないかって心配してるんだ。キャストのメンタル管理も俺達の仕事だからね」

「何かあったって知ってる癖に良く言うぜ」

「あはは~!さすがにルナでも伊吹の一見では堪えたか~」

「あははじゃねぇよ。ったく失礼な奴だなアンタは」


 お気楽思考の店長は明るく笑って言うけど、俺以外にもそうやってアドバイスしてんじゃねぇだろうな?マジで煽ってるだけだからな?


「店長には言っておくけど、今の俺はそれほど伊吹の事を気にしてない。伊吹が辞めるなら俺も辞めるって思ってたけど今んとこそんな気も起きねぇしな」

「おや?それは意外だね。伊吹は俺の嫁だって言ってたのにどんな心境の変化?」

「俺は自分以外に靡く男に興味ねぇんだよ。それと次の嫁見付けたからな」

「えー!それ詳しく聞きたーい♪」

「お前は女子かよ」


 伊吹関連の話には食い付かないのに、俺の次の嫁って話には食い付くとかこのおっさんは女子高生かよって思った。
 まぁいい、夜朱里と会う約束してんだけどそれまでは暇だから自慢話でもしてやるか。

 俺は茶を出せとジェスチャーでアピールしながら空いてる椅子に座って店長と久しぶりの会話を楽しんだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...