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4章 俺も初体験
26.煽ってみるか
しおりを挟む朱里とイタリアンを食べながらぼんやり伊吹の事を考えていた。泣き顔可愛かったなぁ。今頃土曜の男に慰めてもらってんのかなぁ。
未練とかじゃねぇけど、伊吹の落ち込みようにただ普通に驚いただけだ。
「千くーん、聞いてるー?」
「ん?何?」
「土曜日どうなったって聞いたの~」
どうやら俺に話し掛けてたらしい。
朱里が少し拗ねたようにピザを皿に置いて上目遣いで見て来た。
「休めたよ」
「本当!?やったぁ♪それじゃあ決まりだね♪」
朱里は嬉しそうに食べかけのピザを食べ始めた。
俺と朱里は泊まりでどこかへ遊びに行こうとしていた。昨日の夜電話をしていて、本当にいきなりふと思い付いたプランだった。
「どこに行くー?レンタカー手配しよっか。あ、泊まる所も予約しなきゃ~。もう予約いっぱいかなぁ?」
「別にシーズン中でもないし取れるだろ。最悪ビジホかラブホでもいいし」
「どうせならちゃんとした宿とかがいい!俺探してみる!」
「…………」
「あれ?どうしたの?千くん元気ない?」
元気がない訳じゃない。
ただボーッと朱里を見てたらそう思われたようだ。
いやさ、伊吹が土曜の男に慰められてるのかって考えたら想像しちまった訳よ。あの伊吹がだぜ?そもそもノンケだろあいつ。男と出来るのかよってな。
土曜の男を見た事がねぇからどんな感じのセックスするのか知らねぇけど、伊吹はどんな顔すんのかなって思う訳。
「千くん……」
「ハッ!何だ?また何か聞いてたか?」
再び我に帰ると、朱里が寂しそうな顔をしてた。
いけね。朱里といるのに他の男のエロい姿想像するとか何やってんだ俺。
ヤリたくてもヤレないモテないブサ男じゃあるまい……
あれ?俺最後にしたのっていつだ?間違い無く客となんだけど、大分前じゃね?確実に朱里と再会する前だからもう何週間も前じゃねぇか。
「今日の千くん変だよ。伊吹さんの事が心配?」
「心配っつーか、なぁ朱里ってさ」
「何ー?」
「俺としたいと思わねぇの?」
「したいって?何を?」
「セックスだよ」
「えっ!?いきなりどうしたの!?」
朱里は顔を赤くしながら慌て出した。いきなり下の話を出されて童貞らしい反応だな。
付き合い出してから一週間近く経つけど、最後にホテル行ってから一度もそういう話題を出して来ねぇんだ。
あの時は俺とヤリたいような事言ってたけど、本当はそうでもないとか?
「伊吹の心配よりも今頃土曜の男とヤッてんのかなって想像したらムラっとしたんだよ。そう言えばお前から誘われないなぁって」
「待って待って!いろいろ話がごちゃごちゃし過ぎてて頭がパニック!」
「そんじゃこれだけ答えて。俺とヤリたい?」
「……うん」
「よし!さっさと食ってホテル行くぞ!」
朱里の答えを聞いて俺はヤル気満々♪
それなら話しは早ぇ♪しばらくしてねぇからちゃんとほぐさなきゃだけど、朱里のがバカデカい訳じゃねぇし問題ないだろ。
パスタを食べながらスマホでラブホの予約をしようとしてると、朱里が言いにくそうに話し出した。
「あのさ、千くん?したいのは山々なんだけど、明日も仕事だし、あまり遅くなるのはちょっと……」
「はぁ?今更何言ってんだよ。もう俺はその気になってんだ。萎えるような事言うんじゃねぇよ」
「本当にごめん!明日は朝イチから大事な会議があるんだよ~!絶対に遅刻出来なくて」
こいつ、仕事を理由にすりゃ俺が大人しくなるとでも思ってんのか?
事あるごとに仕事が忙しいってのを出して来やがって。
そんな朱里に苛っとしたから俺も苛っとさせるような事を言ってやろうと思った。
「そっか~、朱里仕事頑張ってるもんな~。うんいいよ♪朱里はご飯食べたら真っ直ぐ帰りな?」
「え?千くんが優しい!?」
「朱里の事大事に想ってるから応援してんの♪安心して?俺、セフレかなりの数いっからすぐに誰かしら見つかるから♪」
「へ……?」
「多分電話したらすぐに迎えに来てくれるから」
「千くん!それはダメだよ!」
「どうして?朱里は仕事で忙しいんだろ?俺、朱里の邪魔したくないからさ。でもほら、性欲は仕方ないじゃん?朱里には迷惑掛けないように処理するから♪」
俺が仕事でしかしない営業スマイルでスラスラとムカつくような事を言って退けると、朱里の表情はみるみる暗くなっていった。
お、泣くのか?
ハッ!伊吹もだけど、男が簡単に泣いてんじゃねぇよ。
泣くぐらいなら初めから人の言う事聞きやがれってんだ。
「千くん、出よう」
「は?でもまだ途中じゃん」
「食欲無くなった」
朱里は怒ってるのか、スッと立ち上がって鞄と伝票を持ってさっさとレジへ歩いて行った。
これは予想外だったな。怒ったとしても可愛いく怒ると思ってたぜ。
普段大人しい奴がキレると怖いって言うけど、朱里はそう言うタイプかぁ?
俺はこの後朱里がどうするのか様子を見る事にした。
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