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4章 俺も初体験
27.駄々っ子
しおりを挟むイタリアンの店を出た後、無言で歩いて行く朱里の後を少し離れて付いて行く。
ガチギレっすか?
このまま無言が続くんなら適当に帰るぞ。
「おい朱里、俺タクシー呼ぶからここでバイバイな」
「……一緒に来て」
埒が開かないとスマホを取り出すと、その手を掴まれて止められた。
暗がりで良く見えないけど、怒ってるのか朱里の声は低いものだった。
なんか面倒になって来たな。
ほんの出来心で仕掛けた事だけど、まさかこんな風にされるんなら普通にキレてた方がマシだったわ。
てかセフレなんかいねぇよ。俺は金が発生しない限りセックスなんかしねぇ。
つかよ、朱里と再会してからずっと誘い断ってんだわ。店外も、延長も全部。更に出勤時間も減らしてオプションまで外してんのは誰の為だと思ってんだよ。
あー、考えたらムカついて来たわ。
恋人ってこんなもんなの?
だったら俺いらないわ。
「やだ。つかお前と別れるから」
「何言ってるの?」
「お前ムカつく。もう彼氏でも何でもねぇから、連絡先も消しとけよ」
「何でそうなるんだよっ」
俺は朱里の手を振り払って逆方向へ歩いて行こうとする。
すぐに朱里に腕を掴まれて止められた。
だったらさ~、こうなる前にちゃんとしてくんねぇかな?俺は気分で行動する人間なんだよ。俺を苛つかせる奴とかマジでいらねぇから。
「千くん!話し合おう!」
「触るんじゃねぇよ!」
掴まれた腕を振り払おうとした時、朱里に引き寄せられて不覚にも抱き締められた。すぐに抜け出そうともがくけど、その腕の中がなんか居心地良くて本気で抵抗する事が出来なかった。
「やだ!別れたくない!好きだよ千くん!好き好き好き!」
「なんだよそれっ駄々っ子かよ!」
「だって千くんが言ったんじゃないか!お前は好き好き言ってりゃいいって!」
「んなっ!揚げ足取りやがったな!?」
「お願いだよ、別れるなんて言わないで?俺、何でもするから……他の人とするなんて言わないでよ……」
「朱里……」
俺が抵抗するのをやめると、朱里は俺を深く抱き締めながら弱々しく言った。
そんな朱里が可愛いくて俺は自然と腕を回していた。
はぁ、俺も歳取ったって事かぁ?こんなにもあっさり心を許しちゃうなんてよ。
「千くん、寮の門限ってあるの?」
「ねぇよそんなの」
「それなら今日うちに泊まらない?俺は朝早く出ちゃうんだけど、それなら遅くまで一緒にいられるから」
「お前んち?え、行っていいのか?」
「千くんが嫌じゃなければ」
まさか朱里の家に誘われるとは!これはとうとう朱里もその気になったって事か?
そう言う事なら話は別だ。
別れるのも無しにしてやる。
「全然嫌じゃない♡時間が惜しいからタクろうぜ!」
「良かったっ」
俺が笑顔で言うと、朱里は安心したような声を出してその場に座り込んだ。
へへ♪今日は存分に楽しませてもらうからな♪
俺ははやる気持ちを抑えてスマホでタクシーを手配した。
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