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番外編 二人で小旅行
1.※朱里side
しおりを挟む今日から明日にかけて待ちに待った千くんとの小旅行だ!
結構ギリギリで決めた今回の小旅行だけど、無事に宿も取れて行き先も千くんの希望で静かで落ち着ける場所になった。と言う事で俺は仕事の合間に調べに調べ上げて、完璧に千くんを満足させられる計画を練った。
旅行先は車でそう遠くない場所で、都会過ぎず田舎すぎないような落ち着いた街だった。そこにはいくつか観光名所があり、俺と千くんはそこを周って見て行った。
今は遊歩道のある森林の中を歩いている。そこにあった竹林で千くんは足を止めて上を見上げていた。
なるほど、こういうのがデートって言うのか!なんか千くん喜んでるし!
恥ずかしながら22年間生きて来て恋人と言うものに縁の無かった俺にとって初めての事だらけで、困惑したけど旅行が趣味の職場の同期にオススメの旅行先を教えてもらう事が出来た。
千くんはとても難しい人だ。見た目通り他人に厳しい性格で、いつも「ふんっ」って言って威張ってるイメージ。だけど、綺麗な見た目通り心は繊細でとても綺麗なんだ。
口は悪いけど、たまに甘えてくる所とかとても可愛いくて大好きなんだ。
俺が千くんに一目惚れして偶然再会して今こうして恋人同士になれたんだけど、本当に奇跡だと思うよ。
俺が好きになる人っていつも高嶺の花タイプばかりだったから実らずに終わってたんだけど、今回の千くんもそうなるものだと思っていたんだ。
だけど一度好きになったらなかなか辞められずに勝手に千くんの事を妄想する日々が続いた。
そして偶然再会した時、これは運命だと思ったね!こんなチャンスは二度と来ない!だから俺は過去に無いぐらいに頑張ったよ!
初めて会った時と再会した時の千くんはまだ「ルナくん」だったね。どちらもとても冷たくて俺になんか興味無いって感じ。だけど再会した時の方が相手してもらえてる感触はあったんだ。
それは俺の見た目が変わっていたのが大きかったと思う。きっかけは千くんだったんだけど、メガネをコンタクトレンズに変えて、髪も短く切ったんだ。当時ルナくんだった千くんに言われて、勇気を出して顔を曝け出したら世界観が変わったよ。周りからの評価も変わり、俺の毎日は忙しくなった。
そんな変身を遂げた俺だったから初めて会った時の事は忘れてしまっていたみたい。無理も無いよ。だって、「ルナくん」は光り輝くデートクラブの超人気キャストだったんだから。
俺みたいな冴えない人間なんて覚えてられないぐらいの人と擬似デートを繰り返してると思うんだ。おまけに俺がやっとの思いでルナくんを指名した時間はたったの1時間だけ。それも初回割引期間を使ってだ。俺にとっては大きな時間になったけど、ルナくんにとってはたかが1時間だったろうね。
でもその1時間が俺を変えて、更に千くんを忘れさせないものになったんだ。
また会いたい。もっとルナくんの事を知りたい。
そう思ってコツコツお金を貯めたけど、新入社員だった俺には今を生きるのが精一杯だったんだ。
だったら目一杯貯めて、ルナくんの時間をいっぱい買おう!そう思ってずっと妄想でのルナくんに元気を貰いながらやり繰りしていた。
まだ足りない。まだ足りない。もうそろそろかと思う頃になると、俺は先の事を考えた。
デート出来たとしてもルナくんの印象に残らないと次に繋げない。何としてでも連絡先は手に入れたいぞ。それならば次の分まで貯めようか?ああ、飲み会行かなきゃ良かった。この前の結婚式もスーツを新調なんてしないで古いので行けば良かった。なんて後悔もしつつ、ルナくんに会う為にせっせと働いた。
そんなルナくんこと、千くんは今こうして俺の隣でサラサラと揺れ動く神秘的な竹林を見上げている。葉っぱと葉っぱが擦れる音がまた風流を感じさせた。
千くんのその姿がとても美しくてこっそり見惚れる俺。
今最高に幸せです!
「朱里」
「何ー?」
竹林を見上げたまま千くんが俺の名前を呼んだ。
俺は喜んで千くんの隣に付いて顔を覗き込むと、無言で手を差し出された。
あ、手が繋ぎたいのか!
俺が千くんの手をギュッと握ると、顔をこちらに向けてニコッと笑った。
う、美し過ぎる!
「なんかいいな、こういうのも」
「そうだね♪千くんと来れて幸せ~」
「俺もだ。また連れて来てくれよ」
「うん♪また来ようね♪」
こういう落ち着いた場所でなら千くんも落ち着いていられるのか。
いつもの千くんだったら、「何もねぇ場所だなつまんねぇ」とか「こんな所に連れて来やがって、俺をジジイ扱いしてんのか」とか機嫌を損ねるかと思ったりもしたけど、とりあえず良かった♪
また一個千くんの事を知れた気がして嬉しかった。
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