【完結】取り柄はズル賢い事だけです

pino

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番外編 二人で小旅行

3.※朱里side

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 夕飯の時間になると部屋に豪華な食事がどんどん運ばれて来て、瞬く間にテーブルの上がご馳走でいっぱいになった。
 さすが良い旅館♪お刺身もお肉も野菜も美味しそう♪


「美味そうだな♪朱里、早く食べよう♪」

「そうだね♪あ、千くんお酒飲む?ビール、ワイン、日本酒、カクテルなんかも頼めるって~」

「マジ?せっかくだから飲もうかな?あー、ジジイ共が先に風呂入りたがる理由はこれかよ~」

「あはは、まぁまぁ俺達はゆっくり行こうよ」


 千くんの為に日本酒を頼んだ。ちなみに千くんが好きなお酒は日本酒とワイン。何でも飲めるし、お酒にはかなり強いんだ。どんなに飲んでも酔った事がないと言う。
 反対に俺は苦手~。付き合いで飲んだりはするけど、ビール三杯が限界かな。
 だからね、お酒に強い千くんはかっこいいなって思うよ。

 俺が注いであげると機嫌良さそうにクイっと飲み干した。


「美味い♪朱里に注いでもらう酒は格別だな♪」

「そう言ってもらえると嬉しい♪」

「なぁ、お前今回いくら払ったんだ?何で何も言って来ないの?」

「えっ!言わない方がかっこよくない!?」


 逆にそれ聞くの!?たまにはかっこつけさせて下さいよ!


「あ?もしかして全額負担するつもりだったのかよ。お前生活大丈夫なの?」

「千くんの為の貯金を崩しました……でも大丈夫だよ!千くんは気にしないで楽しんで♪」

「ふーん。まぁいいや。金額教えてくんねぇなら勝手に出すぞ~」


 な、何を言ってるんだ?
 楽しく食事をしていたと思ったら千くんは手を伸ばして自分のブランド物のバックから封筒を取り出して俺に渡して来た。
 ま、まさか現金!?


「これぐらいあれば足りるか?旅行とかした事ないから分からないんだ」

「い、いいってば!俺が千くんとしたくて計画したんだからっ!これは閉まっておいて?」

「何言ってんだよ。俺も朱里と旅行するの楽しみにしてたんだぞ。それなら俺も出すのが普段じゃね?てか黙って受け取れよな~!」


 最後の方はイライラしてる感じだったから、俺は怒らせないように封筒を受け取る事にした。ちょっと待ってよ?中身見てないけど、結構入ってない?全部千円札とかじゃないよね?
 こ、これはどうしたらいいの!?


「千くん~、こんなに受け取れないよ~」

「キャハ♪それ全部ただの紙っ切れだから♪」

「え!?嘘!?」


 楽しそうに笑う千くんに言われて慌てて封筒の中身を確認すると、しっかり一万円札がいました!
 からかわれた事よりもその一万円札の数にショックを受けたよ!だって10枚はあったから……


「千くん!貰い過ぎ!こんなに掛かってないから!」

「そうなの?それならそれ朱里が持っててよ。次ん時に使おう」

「お、俺が持ってるの?」

「うん。だってまた連れて来てくれるんだろ?他のとこ行った時でもいいし、それなら俺が持ってようが朱里が持ってようが一緒じゃん。肉美味!朱里!肉食ってみ!」

「千くん……分かったよ。あはは、本当だ♪お肉柔らかいね~」


 前から感じていた事だった。気にしないようにしていたけど、仕事柄俺と千くんの金銭感覚は違うんだ。
 今千くんがポンっと取り出して渡して来たこのお金は、俺からしたらかなりの大金だ。だけど、千くんからしたら平気な顔して俺に預けられるぐらいの金額なんだ。
 
 それは千くんがこれぐらいなら簡単に稼げてしまうからだと思う。
 今俺が首から下げてるこのネックレスも、千くんからのプレゼントだけど、何十万もする高級品だ。俺は毎日無くさないように、汚さないようにと気を遣いながら大事にしているよ。
 千くんは俺にお洒落をして欲しいからって買ってくれたけど、俺にはとても重いんだよ。

 毎日歩き回ってお客様に頭を下げたり、機嫌を取ったり、残業で残った時は長時間パソコンに向かったりと、コツコツ仕事をしても1ヶ月じゃ到底稼げない額だ。

 だから、千くんには今の仕事を辞めて欲しいけど言えないんだ。俺の今の力じゃ千くんの力にはなれないから……


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