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番外編 二人で小旅行
6.※朱里side
しおりを挟むどんどん聞かされる千くんの本音に、俺の心にあった突っ掛かりが少しずつ解けていく気がした。
「千くん千くん、もう一個言ってもいい?」
「そんなに溜め込んでやがったのか。いーよー♪言ってみな」
「文句って言うか、お願いなんだけど、今の仕事をいつかは辞めて欲しいんだ。初めは応援しようって思ってたけど、やっぱり千くんを独占したいって言うか……他の人とは嘘でもデートとかして欲しくないんだ」
言っちゃったー!
絶対怒られる!
俺は怖くなって体操座りをして叱られるのを待った。
だけど、千くんはニヤニヤ笑いながら俺にピトッとくっ付いて来た。
「やっと言いやがったな?俺はお前が言うまで続けてやるつもりでいたんだ。俺は意地が悪いからな。お前にヤキモチ妬かれるのが好きなんだ」
「それって考えてくれてるって事!?」
「当たり前だ。言っただろ?結構貯金あるって。倹約家だし、無駄遣いとかもしねぇしな。すぐってすぐには店長がうるせぇから無理だけどな」
「それ!それも言いたかったんだよ!俺と千くんて金銭感覚違うな~って」
「そりゃ違う人間だから違うだろ。ん?」
「えっとー、普通の人は会って間もない人に何十万もするネックレス買わないよ?それに、現金を持っててって渡さないし、スマホも安くないんだから大事にすると思う!」
「言ってくれるね?人が大人しく聞いてりゃよ」
「ひぃ!ごめんね!」
「今言ったの全部朱里の為な!明らかにお前のが稼ぎないし、俺年上だし。俺は朱里には惜しみなく使うぜ。だって好きな奴を喜ばせたいと思うのは普通だろ?んー、次に自分に使うかな?その他には一切出さん!つまり俺は朱里以外にはケチってこったぁ」
「嬉しい……ありがとう千くん!もっと早く聞いていれば良かったぁ」
「不満は解消されたか?次からは苦情は受け付けねぇぞ~」
「嘘!?ちょっと待って!まだあるからっ」
「はは、冗談だよ。これからもちゃんと聞いてやるから♡」
慌てる俺にチュッと音を立ててキスをして、湯船から出て行く千くん。
ああやっぱり千くんには敵わないなぁ。
俺も湯船から出て千くんの後を追った。
正直言ってまだまだ言いたい事はあるんだ。だけど、今すぐに伝えなくても良い気がして来たんだ。
とにかく今は千くんとの時間を大切にしよう。
千くんも言ってたけど、俺はかなり千くんから愛されてるらしい。
ずっと失わないようにって焦って自分の事しか考えてなかったけど、千くんという人間はめちゃくちゃな人に見えて実はしっかりしてるんだ。
気分屋ではあるけど、理由が無ければ怒らないし、理不尽だなと思う事はあるけど、千くんの楽しそうな笑顔を見ればそれでもいいかと思えてしまう。
どうやら今回の俺の悩みは、俺が溜め込み過ぎていたせいで大きな悩みになっちゃったらしい。
これからは思ったら言うようにしてみよう。そうすればどんな形であれ必ず返って来るからな。
千くん大好きだよ。
俺の方こそ付き合ってくれてありがとう。
君が俺の傍で笑ってくれる事が何よりの幸せです。
✳︎✳︎✳︎おまけ1完✳︎✳︎✳︎
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