我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します！

59 (クリフトファー視点５)

　モリシャン侯爵邸で疲労困憊になった僕が帰宅した時は既に深夜になっていた。

　両親は僕の帰りを待っていてくれた。報告すると両親は僕に労いの言葉を掛けてくれた。そしてスカーレットの処遇に関しても了承してくれた。

　次の日、昨夜はほとんど寝れなかったが、朝早くからモリシャン侯爵家に出向いて我が公爵家の意向を正式に伝えた。

　ちなみにスカーレットは、暴れて手に負えないとのことで鎮静剤を打たれたそうな。まるで猛獣扱いだな...

　その後、取り急ぎアンリエットの家に向かった。

　事の経緯をアンリエットに伝え、迷惑を掛けたことを謝罪した。そしてもう心配要らないということも合わせて伝えた。

　アンリエットは静かに聞いて納得してくれた。一安心した僕は疲れた足を引き摺りながら帰宅した。

　帰宅したら今度は妹が煩く聞いて来る。勘弁して欲しい...取り敢えず少し寝かせてくれと言って、僕は意識を手放した。


◇◇◇


　少し寝たら頭がスッキリした。するとすかさず妹が飛んで来たので、アンリエットに説明したことをもう一度話した。

　それでやっと妹も納得してくれたみたいだった。その時、執事が急な来客を告げに来た。モリシャン侯爵だと言う。もうケリはついたはずなのに何事だろう?

「申し訳ありません!　ちょっと目を離した隙にスカーレットが消えました!　もしやこちらに来てはおりませんでしょうか?」

　モリシャン侯爵は挨拶もそこそこにいきなり本題に入った。

「いえ、来てはおりませんが...どこに向かったか心当たりはないんですか?」

「それが...もうアレがなにを考えているのか、親である私にも全く分かりませんので...」

　それは確かに無理もないな...少なくともスカーレットは普通の精神状態じゃないもんな...

「スカーレットがこちらに現れたらご連絡しますよ」

「申し訳ありません...よろしくお願い致します...」

　モリシャン侯爵は意気消沈した様子で帰って行った。なんだか昨日今日で随分と老け込んだように見える。お気の毒様...

　そんなことを思いながらふと不安になった。スカーレットはアンリエットの家を知っている。

　もしやと思ったら居ても立っても居られなくなった。僕は急いでアンリエットの家に向かった。


◇◇◇


「居ない?　どこに出掛けたんだ?」

　出迎えてくれたのはアランだ。

「それが行き先はおっしゃらなかったんですよ。ちょっと出てくるとだけで。セバスチャンさんと一緒に行ってしまいました」

　恐らく兄のロバートの所だろう。長年勤めているセバスチャンはともかく、雇い始めたばかりのアランには、まだロバートのことを内緒にしているのは頷ける。

　僕はロバートの住んでいるアパートへと向かった。